2010年 09月 23日
北アルプス槍ヶ岳を北鎌尾根から(前編) ~ 2010年9月8日~12日
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山域山名   北アルプス・槍ヶ岳(3,180m)北鎌尾根
山行期間   2010年9月8日(水)~12日(日)
山行形態   一般登山(バリエーションルート)

地形図    槍ヶ岳・穂高岳
天候      9日~11日晴れ 12日雨のち曇り
参加者    3名(L:和○さん、八○さん、トラ山)

行程      8日・9日 白石19:45=福島20:55=新井PA=沢渡7:57-8:30=上高地・バスターミナル8:54-9:06~
         明神9:54~徳沢園10:39-10:47~横尾山荘11:39-12:15~一ノ俣12:59-13:05~槍沢ロッヂ13:38小屋泊

         10日 槍沢ロッヂ6:03~ババ平6:39~槍沢大曲り7:08-7:13~水俣乗越8:13-8:18~北鎌沢出合10:19-10:25~
         北鎌沢右俣出合10:41-11:07~北鎌のコル付近稜線13:15-13:26~天狗の腰掛15:04~テン場15:29

         11日 テン場6:22~独標稜線8:39-8:48~北鎌平13:55-14:03~槍ヶ岳15:34-15:51~
         槍ヶ岳山荘手前の分岐16:23~殺生ヒュッテ16:42小屋泊

         12日 殺生ヒュッテ6:16~槍沢大曲り7:30-7:36~ババ平7:52~槍沢ロッヂ8:10~一ノ俣8:36~
         横尾山荘9:14-9:30~徳沢園10:17-10:27~明神11:07~上高地・バスターミナル11:54-12:00=
         沢渡12:35-14:30=福島19:45=白石20:55   ※コースタイムはすべて和○さんの記録による

行動時間   9日 4時間32分 10日 9時間26分 11日 10時間20分 12日 5時間38分
移動距離   9日約14.0km 10日約7.0km 11日約3.0km 12日約18.5km 計42.5km
累積標高差 9日約+500m-180 10日約+1,600m-700m 11日約+600m-480m 12日約+190m-1,530m

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=思いつきから実行まで=
昨年秋に、今回のパーティーの1人である八○さんに「来年は北鎌尾根を登る」とメールを送った。その時にどういう考えで北鎌尾根に行こうと思い立ったのか詳しくは思い出せないが「ステップアップのため」ともメールに書いていたそうだ。もともと自分は山登りを始めた当初から既成のルートに飽き足らない傾向があり、それが単独によるスノーシューでの雪山歩きや沢登りを好むことになっていた。そういう意味では、槍ヶ岳へのバリエーションルートの北鎌尾根は挑戦しがいのある魅力的なルートに見えたし「憧れ」のルートと感じたのだと思う。八○さんと2人パーティーで考えていた北鎌尾根も、今年になって2人が加わり4人になるかと思われたが、結局和○さんをリーダーとした3人パーティーに落ち着いた。山行時期は8月下旬から9月中旬と考えていたが、ほとんど毎週のように山へ沢へと出かけているうちにたちまち夏になってしまい。急いで3人のスケジュールを検討し調整した結果、9月9日~12日に落ち着いたのは7月に入ってからだった。





北鎌尾根にアプローチするにはいくつかのルートがある。湯俣から忠実に尾根を詰める湯俣ルート、大天井岳を経由し貧乏沢を北鎌沢出合に下る貧乏沢ルート、上高地から水俣乗越を経て北鎌沢出合に下る水俣乗越ルートなどがある。また以前は北鎌尾根上のどこかでビバークしながら槍ヶ岳に迫るのが一般的だったようだが、近年は尾根上でのビバークをせずにザイルも持たず装備を軽量化してスピードを上げ、1日で駆け抜けるスタイルのパーティーも多くなっているようだ。北鎌尾根はコース取りによってはクライミングの要素もあるとはいえ、あくまでもバリエーションルートであり、十分登山靴で歩けるルートとされている。しかし、踏み跡が定かでなかったり、あっても間違った踏み跡だったりとルートファインディングが難しいとされている。北鎌尾根はバリエーションルートとはいえ多くの山好きの「人気」のルートで、ネットで「北鎌尾根」を検索するとかなりの山行記録を見ることができるので、3人であちこちの記録を調べてみた。また、山と渓谷社のDVDで「アドバンス山岳ガイド 槍ヶ岳・北鎌尾根」というものがあり、これは映像で見ることによりイメージ作りに役立った。しかし、山行記録はやはり本人の主観が入るので表現が様々であり、右とか左との表現も同じ箇所を差しているのかはたまた違う箇所なのかハッキリしないなど、多くの記録を見ることにより参考にはなったが、それでルートが明確になるわけではなく、かえって疑問も多く生じたのであった。

当初は大天井ヒュッテを早朝立ち、貧乏沢を天井沢に下り、北鎌沢出合から北鎌のコルに登り上げて稜線を槍ヶ岳までノンビバークで一気に歩ききるプランを考えていた。そのためには軽量化が必須であり、装備は最小限とするのでザイルも持たないつもりでいた。しかし、槍ヶ岳もまともに登ったことのない我々のこと、想定できない事態により時間切れでビバークとなる可能性も否めず、難所で進退窮まった場合にはザイルが必要になるかもしれないという不安もあった。結局我々は中高年パーティーでもあるし、安全策をとって尾根上でビバークをすることにした。ザイルも安全確保のため積極的に使うこととし、8.1mmの50mを持っていくことにした。装備はビバークの分とザイルで重くなるが、じっくり安全に北鎌尾根を歩くこととしよう。

ところで「槍ヶ岳もまともに登ったことのない我々」と表現したが正確ではない。私は北アルプスどころか、今まで登った山は東北(青森は無し)と北海道(黒岳と斜里岳のみ)に限られる。和○さんは半世紀に迫る登山経験があるが、北アルプスはかなり前に穂高に登ったのみだという。しかし八○さんは20年ほど前の5月に北鎌尾根に登ったことを「思い出した」という。何でもその当時所属していた山岳会の北鎌尾根パーティーに入れられて、連れられるままに北鎌尾根を歩いたのだという。そのためか印象があまり無く、今回の北鎌尾根の話が出てからもしばらくは自分が歩いたことすら思い出さなかったという。普通は一生の思い出になりそうな北鎌尾根を憶えていないとは何とも信じがたいことだが、本人の淡泊で記録を残さない性格を知っている私からみれば、さもありなんという感じでもある。したがって今回の計画で八○さんの経験が参考になることが全くなかったのは残念だった。彼にとっては北鎌尾根も数ある尾根道のひとつにしか過ぎないのだろうか。まあそんな無頓着で飄々とした八○さんは、ある意味凄い人?なのかもしれない。

=9月8日から9日まで=
9日未明に出発するという手もあったが、今回は余裕を持たせるため前日の9月8日夜に出発することにした。今回は私の車で行くので、仕事を終えてから急いで最後の準備をして八○宅~和○宅と回る。予定より小一時間ほど遅れの8:55に福島を出発すると福島西ICから高速に乗った。東北道~磐越道~北陸道~上信越道とひた走り、新井PAで仮眠を取ることとした。翌9日朝5時に起床し再び上信越道~長野道と松本ICに向けて走る。途中朝食を取るなどしてから高速を降て県道158号を走り、我が家から500km以上を走り沢渡(さわんど)に予定より1時間早く到着(7:57)した。上高地は平成8年から通年マイカー規制が行われているので、沢渡からはタクシーかバスで上高地に向かうことになる。どこでもいいと一番手前の駐車場に入れ4日間置きたいと告げると、屋内の駐車スペースに案内された。1日500円なので2千円を前払いする。

バスよりタクシーが便利で乗り合わせれば安くなると聞き、ちょうど神奈川からの2人連れとこちらの計5人でタクシーに乗り合わせることにした。バスは1,200円だが、タクシーは4千円÷5人で1人800円とお得。私にとっては十数年ぶりの上高地だが、やはり観光地らしく平日でも賑わっている。身支度を整えバスターミナルを9:06にスタートする。河童橋からの穂高は上の方が雲の中でよく見えない。梓川沿いの道は勾配もほとんど無く平坦な道で、大勢の観光客に混じり我々のような登山者も歩いていく。今日は槍沢ロッヂまでなので気楽でもある。明神を過ぎ徳沢園と歩を進めると観光客よりも登山者の割合が増えてくる。無料の公衆トイレは徳沢園にはあるが、横尾山荘ではチップ制のトイレとなる。横尾山荘の少し先まで許可車は通行できるようだが、そこから先は道も狭くなり登山道らしくなってくる。大水で押し流された岩があったり沢が氾濫したような跡があり、先日の大雨の影響がそこかしこに残っている。

                    河童橋からの梓川と穂高岳
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                    結構立派な横尾山荘
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槍沢ロッヂには予定より2時間近く早い13:38に到着。小屋の外では既に到着した登山者が三々五々休憩したりと自分の時間を過ごしている。手続をして料金の1人1万円を支払う。1泊2食では9千円だが、我々は翌日の昼食弁当も頼んでいるのでこの値段となる。2階の指定された宿泊スペースを確認すると、2段になった下段の廊下側が我々のスペースで幅50センチ程度のミニマムサイズ。肩幅が広い私がこれで寝られるのかと心配になるが、混雑する営業小屋では普通のサイズなのだろう。実は私は営業小屋に泊まるのはこれが初めて(避難小屋でさえ昨年6月が初泊まり)なのですべてが目新しい。ザックは廊下に並べ、登山靴は廊下の壁にある靴棚に置く。槍沢ロッヂの売りは風呂があるということ。15時からの入浴タイムを待ってさっそく入る。山の中で風呂に入れるのは贅沢に感じる。汗を流しさっぱりしてから外でビール(ロング缶750円)を飲む。なんとも美味い!この小屋には自由に使えるネット接続されたノートパソコンがあったので、明日の天気の確認と自分のブログへの書き込みを行う。夕食は5時からで山小屋ゆえ簡素なものだが、腹が空いていて3杯お代わりをする。後はもうすることもなくなり、午後7時には寝床に入る。窮屈さが気になったがいつしか寝てしまった。しかし度々目が覚めてしまい、隣で寝息を立てている八○さんが恨めしい。その向こうに寝ている和○さんはいつどんな状況でもすぐ寝ることができ、途中で目が覚めることはほとんどないという。まさに山の達人である。

                    ロッヂの近くから槍ヶ岳の穂先が見えた(画像中央部に小さく見える)
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=9月10日=
午前4時には目が覚めて洗ったものを取りに行ったりザックの整理をしたり。早立ちの人達はまだ暗いうちに出発していく。午前5時になると照明がつき他の宿泊者も起きてくる。出発できるばかりに準備をしておいて午前5時半に朝食だ。朝もしっかりご飯を詰め込む。昼食の弁当を受け取ると槍沢ロッヂを6:03に出発した。今日も天気が良く快晴で気分がいい。しかし、今日はいよいよ北鎌尾根に踏み込むのだと思うと、いつもの山行より緊張している自分がいた。登山道は緩やかな登りが続くが、意識的にゆっくりと歩を進める。テン場になっているババ平には数張りのテントがあり、単独の若い外人女性がテントの外に出ていたので挨拶をして通り過ぎる。登り始めて1時間ほどで槍沢大曲りに到着。ここで槍ヶ岳への登山道と別れて水俣乗越(みなまたのっこし)へ一気に登る細くて急な道に入る。上高地を発ってから初めての本格的な登りだが、東北の山にありがちな登山道とも獣道ともつかないような道に慣れている我々は、これでも快適だと話しながら登る。槍沢大曲りで一息ついている時に追いついてきた若い男女4人のパーティーも、我々の後を追うように登ってきている。徐々に追いつかれるのはさすが若者というか年齢差か、はたまたザックの重量の差なのか。

                    槍沢ロッヂを出発
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                    ババ平より東鎌尾根を望む
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                    大沢曲り
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今回はビバークを前提とした装備とした。共同装備はバーナー・コッヘルが八○さん、無線・GPSが和○さん、ザイルは私とした。ビバークにはツェルトと使うことにしたが、私の大きめのツェルトに私と八○さん、和○さんの小さいツェルトには和○さんが入ることにした。八○さんと私はシュラフは持たないことにしてシュラフカバーでしのぐ計画。重ね着すれば何とかなるだろう。和○さんは軽量シュラフを新調した。ところで北鎌尾根には水場が無い。ビバークし時間をかけて登るということはそれだけ飲料水も必要となる。各人2リットル程度を個人装備とし、調理用その他として北鎌沢でさらに4リットル程度を補充し八○さんと私で担ぐこととしている。ザイルも入れる私は60リットルのザックにしたが、自分の飲料水も含めると16kgほどになる。飲料水を補充したときはさらに2kgが加わる。

                    水俣乗越から天上沢を見下ろす
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水俣乗越への途中で後続のパーティーに先行してもらう。大曲りから1時間で水俣乗越に到着したら先行パーティーも休憩中だった。山ガール2人とともに画像に収まる。乗越から北側を見ると北鎌尾根が見えた。あれだあそこを登るのだ。いよいよ本番だ。東鎌尾根を槍ヶ岳へ向かう若者パーティーと別れ、乗越から天井沢へと下降を始める。踏み跡はあるがかなりの急斜面で滑りやすい。草でも木でも掴めるものは利用して落ちないよう注意して下る。徐々にジグザグな踏み跡がハッキリしてきた。すぐ左には涸れ沢があるが、今日はこちらの踏み跡を歩いた方がよさそうだ。やがて右からの沢を合わせるとそこには雪渓が残っていた。7月頃下った記録にはアイゼンを使用したとあったがなるほどである。下降するにしたがって北鎌尾根の独標(どっぴょう)が大きく見えてくる。さらに下ると槍が見えた。槍先が鋭く天を突いている。なんと遠くて高いのだろう。あんなところにはたして我々は登れるのだろうかと不安にさえ思う。次第に傾斜も緩くなり、何本もの枝沢を合わせた天井沢は幅が大きくなり、川原のゴーロ歩きとなってきた。水流は現れたと思ったら地面に潜りまた現れる。それにしても天気が良くて見上げる空は真っ青だ。その分暑くてかなわない。北鎌沢でしっかり水を補充しなければと思う。左手の北鎌尾根から茶色の岩の多い沢が合わせていたが北鎌沢はここではない。北鎌尾根を見ればあれが北鎌のコルだということは見当がつくので、そのコルに一直線に登る沢と思えばいい。しかしガスがかかっていたりすれば初めての我々には判断が難しくなるだろう。気づかないで通り過ぎてしまうかもしれないが、そんな時のために和○さんがGPSにルートを入れているので安心だ。しばらくゴーロ歩きをして北鎌沢の出合と思われる場所に到着。見上げれば北鎌尾根へと沢筋が続いている。ここが北鎌沢で間違いない。

                    乗越からの斜面には雪渓が残る
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                    快晴の青空をバックに槍ヶ岳
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                    槍ヶ岳を背に天上沢を下る
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                    北鎌沢出合
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                    北鎌沢をコルへと登り始める
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さっそく北鎌沢に取り付いて登り始める。水量は少ないものの沢登りなのだが、足下はいつもの沢靴ではなく登山靴だ。なので濡れた岩は特に慎重に登る。今回は和○さんと私はガレ場での安定感を優先して登山靴としたが、八○さんは岩場でのフリクションも考えアプローチシューズを履いている。他の方はノンビバークの場合、スピード優先で軽量なアプローチシューズが主流になってきているようだ。ほどなく二俣になり左俣は水流もあり太いが右俣は涸沢で細い。しかしここは右俣へと進むのが正解。いろいろな記録ではここが最後の水の補給場所とされているので、我々も目一杯水を補充し昼食休憩とした。槍沢ロッヂの押し寿司のような弁当をパクつく。左俣の水は数日前の雨のせいか豊富で澄んでいたが、黄色く濁っていたとの記録もある。さらにズッシリと重くなったザックを背負い右俣を登る。するとどうだ右俣にも細いながら水流が現れたではないか。結局右俣の水流はかなり上の方まで、潜ったり現れたりを繰り返しながら続いていたのだった。しかしこの水流はいつもあるわけではないのだろう。やはり左俣で補給するのが確実だ。北鎌沢にはさほどの難所はなく、シュリンゲやお助け紐を出すこともなく登っていける。振り返ると高度感抜群で、向かいに見える稜線は喜作新道の表銀座縦走路だ。

                    二俣は右俣へと進むのが正解
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                    右俣を詰める
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                    振り返り見る表銀座縦走路の稜線
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北鎌沢は間違った支沢に入り込んで大変な苦労をした例や滑落死亡事故さえも起こっている。各種の記録を見ると、二俣が現れたらとにかく右に進めという記録が多い。しかし、我々沢登りをやっている者からすると、本流を外さずに登っていけば間違えようがないのではと思う。かえって右に進めという情報で無理にでも右の支沢に入ってしまう場合もあるのではないだろうか。途中1箇所だけ右の支沢入口の石に赤で×印があったのは、そういった情報で右に入ることのないように誰かがマーキングしたのではなかろうか。どんどん登っていき源頭部に近づくと二俣があり、ここは登りやすそうな左へと進んだ。やがて沢筋は草付きの中に入っていく。踏み跡があったので追いかけて登っていくが、見上げて尾根を確認するとどうも北鎌のコルへはもう少し右の草付きを登るのが正解のようだ。しかしこのまま登ってもコルの数十メートル先に出られそうなのでかまわず登る。13:15に北鎌尾根に到達。槍沢ロッヂを出てから約7時間が経っていた。

                    急斜面の草付きを登る
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                    やっと尾根に出た
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休憩していると小さな虫がわんわんと顔の周りを飛び五月蠅くてかなわない。汗の臭いに反応しているのだろう。カメラで撮った画像には写るし、耳の穴や口の中にも飛び込んでくるしで参った。トンボの姿が見えないので小さな虫のやりたい放題というわけだ。北鎌尾根でもこのあたりはまだ樹木があり、しっかりとした踏み跡があるのでそれを辿る。ところで北鎌尾根上にいくつもある小ピークは下から順にP1・P2と数えるらしいのだが、地図に示されているわけでもなく記録によっては番号がずれていたりと今ひとつ不明確なので、私の記録では使わないことにした。出だしは尾根を踏んで歩いたが、このまま尾根通しでは歩けないようで踏み跡はピークを左側(天上沢側)から巻くようにトラバースし、次は右側(千丈沢側)へと続く。踏み跡も今ひとつ明瞭でなくなってきた。尾根が岩稜となってきたのでハーネスを装着してヘルメットを被る。前方のピークをどうやって越えようかと考える。試しに左のザレ場を登ってみるがちょっと悪い。ハイマツの根を掴みながら直登することにして、ザイルを付けて私がトップで登る。もちろんノーザイルでもいけるが、今回は安全確保と実戦練習も兼ねて積極的にザイルを使うことにしている。ザイルを出せばその分時間はかかるのだが、我ら中高年パーティーは安全第一である。安全地点まで登ったらセルフビレイを取り、後続の確保の準備をして合図を送り登ってもらう。

                    天上沢側を巻く
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                    振り返ると細尾根が見える
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                    左手に見えた水俣乗越
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                    ここが天狗の腰掛
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前方に見える独標にガスがかかり始めてきた
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細尾根を辿ると前方に見える独標にはガスがかかり圧迫感さえ感じる。今日の目標としていた天狗の腰掛に到着。ここでツェルトを張ってもいいのだが、予報によると明日に向かって風が強くなるという。ここでは風当たりが良すぎるので、進みながらビバークサイトを探すことにする。天狗の腰掛から100m以上下った独標手前のコルにちょっとした平場があり、和○さんがここでビバークしようという。平らな部分は2m四方ほどしかなく、前後は急斜面の尾根で左右はすっぱりと切れ落ちている。ツェルト1張りがやっとに見えたので和○さんに異を唱えると、大丈夫だというやいなや石で地面を均し始めた。こうなればこちらも腹を決めてやるしかないと3人での整地作業。ギリギリ2つのツェルトを張ることができた。なんとも背筋がゾクゾクするような標高2,700mの寝所。寝ぼけておしっこに起きるのだけは絶対にすまいと心に誓う。夕食はお湯だけで作れるカレーとスープ。もう後はやることがないので午後6時過ぎにはツェルトに入ったが、さすがに2人はちょっと窮屈。見えなければ頭の数十センチ先が崖ということは意識しないですむのがありがたい。風がありツェルトがばたつく音が耳障りでしばらくは眠れない。しかしいつしかそれも子守歌となった。

                    独標手前のコルに見つけたテン場
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                    ぎりぎりツェルト2張り
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                    すぐ前はすっぱり切れ落ちている
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                    日の入りとともに就寝タイム
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後編に続く…

by torasan-819 | 2010-09-23 01:39 | | Comments(4)
Commented by pot at 2010-09-25 11:40 x
縦走ルートから北鎌尾根を見た時はノコギリ歯のようでしたけど、実際も足場悪そう。北鎌尾根ってビバーグしないと抜けられなかったのですね。ルートファインディングも必要だしバリエーションルートになるわけですね。後篇まってまーすー



Commented by utinopetika2 at 2010-09-25 22:06
地図を片手に、正座して拝読しています。「北鎌尾根を登る」それを実現するには、大変な想いがあった事でしょう。また常日頃のトレーニングと予備知識、今までの経験が成功に導いたのだと思います。実に素晴らしいです。それにしても、18キロにもなるザックを背負い、さぞ大変な登攀かと思いきや、同行した皆様の後ろ姿は、まだまだ余裕の表情に見えます。トラさんはいつもと変わらないようにみえます。後半は執筆中でしょうか。すこしばかり興奮して打っていました。ところで来年はジャンでしょうか。それとも剣でしょうか。
Commented by torasan-819 at 2010-09-26 05:49
potさん
いえいえビバーク無しで抜けられます。
後続の2パーティーはビバーク無しでしたし。
北鎌尾根は通れるところを通るのでパーティーによりルートはまちまちです。
ルートファインディング能力は必要ですね。
Commented by torasan-819 at 2010-09-26 06:03
utinopetika2さん
なして正座して?(笑)
北鎌尾根を登ると言い出したものの不安感と期待感が半々でした。
でも80代の方でも北鎌尾根を歩く人はいるようですよ。
体力があれば北鎌尾根は歩けます。
昨年から飯豊と朝日を歩いて体力的な部分は経験を重ねていました。
来年はどこにしますかね。
北バットもいいなと思っています。


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