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2010年 12月 23日
読書 「大いなる山大いなる谷」
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これも入院中に読んだ本。1992年初版の本だが、題名に引かれて古本で手に入れた。著者の志水哲也氏の17歳から25歳までの山旅の記録である。事前知識も何の先入観もなく読み始めた本ではあったがたちまち引き込まれていった。氏はその山旅のほとんどを単独で行っている。16歳の時旅の途中の屋久島で山に魅せられ、その夏には南アルプス全山縦走(24日間)をしている。その時に見た北アルプスの山々を歩いてみたいという思いが翌年の北アルプス全山縦走(42日間)となり、この本はそこから始まっていて以下の山旅が載っている。
1983年7~8月 北アルプス全山縦走(42日間)
1986年、1987年 黒部川の主な沢25本をトレース
1989年6~9月 ヨーロッパアルプス ドリュ・ボナッティ岩稜(単独)など
1989年12~1月 冬季南アルプス全山縦走(20日間)
1991年2~3月 冬季知床半島全山縦走
1991年5月 日高山脈全山縦走
縦走あり、沢登りあり、クライミングありと幅広い形態の山旅だが、氏にとってはただ行きたいところ歩きたいところ登りたいところを目指した結果なのだろう。私にとって圧巻と感じたのは黒部の沢25本を、2年かけて地元に数ヶ月ずつ住みながら遡行したことだ。熟達者がパーティーを組んで挑んでも困難な沢が多いなか、氏はそのほとんどを単独で遡行している。しかも沢での経験もまだ浅い20~21歳の頃にだ。氏は優れた記録者でもあるようで、この本には克明にその過程や遡行図が記載されている。それにしても人は集中すれば短期間でこれほど進化し実行できるのだということに目を見張らされる。それは氏は希有な素質を持っていたからなのかもしれないが、少なくとも文面から読み取れる彼の印象は、長身ではあるものの決して身体能力に飛び抜けて優れているわけではないようだ。人と違っていた事といえば、氏の心が誰よりも強く山へと向かっていたことであろう。この本にあるのは山旅の記録ではあるが、1人の人間の優れた青春記録であると感じた。何か切なく心苦しくなるほど純粋に何かに突き動かされるように山へのめり込んでいったことが伝わってくる。そんな時期は人生の中でもまさに氏がこれらの山旅を行った時期しかないであろう。これもまた「輝く青春の日々」のひとつの有り様ではないだろうか。若者らしいひたむきさ、戸惑い、葛藤など、自分にとって今となっては遠き青い日々に思いをはせることが出来た一書であった。さて氏の青春記録とも言うべき本を読み終え、この後氏はどのような事をなし現在はなにをしているのかと気になった。検索してみるとすぐわかったが、氏は現在写真家と山岳ガイドとして活動している。写真集も見かけた事がある。氏のHPがあるのだが、なんと以前見た事がありお気に入りに入れていたが名前までは覚えていなかった。さらに最近発売されたヤマケイのDVDアドバンス山岳ガイド黒部川上ノ廊下が欲しいと思っていたのだが、そのDVDで沢を案内しているのは志水哲也氏その人なのだとやっと気付いた。ん~お粗末(笑)

by torasan-819 | 2010-12-23 10:31 | | Comments(0)


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