2014年 03月 12日
五色温泉から家形山ピストンの試み ~ 2014年3月9日
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好天の3月9日、五色温泉からのクラシックルートを辿ることにした。吾妻山はたおやかな稜線が続いていることもあり、古くから多くのスキーツアールートが開かれていた。そのルートの発着点のひとつとなるのが五色温泉である。そのあたりのことは、2年前にこのルートにトライした時や2011年に夏道を歩いた時の記録にも書いているので割愛する。その時は高湯温泉から五色温泉に繋げたのだが、何とか踏破したもののルートミスなどで内容的には散々であった。原因はもちろん自分の未熟さだが、ルートが不明確で効率的なラインで歩けなかったということにも大きな要因があった。そのためリトライの機会をうかがっていたのだが、和泉さんがこの土日に高湯温泉から五色温泉を慶応吾妻小屋泊で辿るので、それに合わせて歩いてみることにした。ただし、自分は日曜日だけなので、五色温泉から家形山をピストンする計画とした。往復することにより、ルート確認がより確実なものになると考えたからだ。
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 山域山名   吾妻連峰 家形山(1,877m)
 山行期間   2014年3月9日(日)
 山行形態   山スキー
 天候      晴れ
 参加者    単独
 行程      五色温泉6:13~コル6:56~四郎右ェ門沢7:57~東海大緑樹山荘9:07~家形山避難小屋10:24~家形山11:12-11:21~
          家形山避難小屋11:26~東海大緑樹山荘11:43~休憩12:07-12:24~四郎右ェ門沢12:43~コル13:25~五色温泉13:35
 行動時間   7時間22分
 移動距離   15.5km (GPS計測)
 累積標高差 ±1,417m (GPS計測)
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                         五色温泉宗川旅館を見ながらゲレンデ跡を登る
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                         切り開きになっているのは夏道沿い
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                         古いツアー標識(現在青木小屋は無い)
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                         コルより左手に1077mピークを見る
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                         遠く家形山が見えてきた
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五色温泉の手前にある駐車スペースは除雪中だった。除雪車に合図して車を止めさせてもらう。今日は夏道沿いではなく、平成10年に閉鎖された五色温泉スキー場のゲレンデ跡から登る。ちなみにこのスキー場は、明治44年に日本初の民間スキー場としてオープンしたという歴史がある。日本列島には寒気が入っているので3月にしては気温が低く、乾いた雪を軽くラッセルで登っていく。ゲレンデ跡上部から右手の尾根に上がり、1077mピークのコルに向かってほぼ水平にトラバースする。コルを越えて高倉山の支尾根南側をトラバースするが、あまり高度を下げないように注意する。復路で往路のトレースを利用する場合の登りを極力減らすために、往路の時からラインを考えて歩く必要があるからだ。それでも地形によりある程度のアップダウンは避けられないが、より効率的なラインというものは存在する。それを考え探しながら歩くのもまた面白い。

                         雪面が眩しい
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                         四郎右ェ門沢を渡る
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                         四郎右ェ門沢右岸より高倉山を見る
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                         ルートの目印だろうか
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                         かなり古いツアー看板
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やたらに天気が良く雪面の照り返しが眩しいほどで、林間の木陰に入るとホッとするほどだ。地形図ではそれほど複雑という印象はないが、実際は地形図に表れない細かい起伏や雪のうねりがある。そのため、これから進む先を見通しながら歩かないと無用なアップダウンをしてしまうことにもなる。それでも沢の横断があったりするので、なかなか思い描いたように歩くことはできない。高倉山が右手に大きくなってくると、左手の四郎右ェ門沢を渡り右岸斜面を登り返す。尾根に乗ると、家形山が近く見えるようになってきた。復路を意識してほぼ水平に近いラインで歩いていくと、ダケカンバの幹に黄色のテープが巻いてあり、ルートを示しているように思える。この後も所々で黄色いテープ巻きを見かけた。和泉さんによると、福島登高会で30年ほど前にルートの目印にと付けたのは、黄色い板であるという。とすればこのテープは誰が巻いたのだろうか。このテープの他にも、所々に古いツアー標識を見つけることができる。これらは「ニッポンビール」の社名からも50年以上前のものと思われ、自分とほぼ同じ年齢ということになる。その昔は標識を目印にスキーツアーをしていたのであろう。今は残っている標識も少なくなり、とてもあてにして歩くわけにはいかないが、ホーロー引きの標識はノスタルジックな雰囲気満点である。目にする者がいようといなかろうと、この山中でこれからも何十年とルートを示し続けるのだろう。

                         東海大緑樹山荘(旧青木小屋を基に昭和37年に再建)
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                         今年のTWV(東海大学ワンダーフォーゲル部)の赤布
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左に沢筋(蟹ヶ沢右俣の支沢)が見えてきたので沢に降りないで回り込もうとしたが、どんどんルートから外れていくようだ。結局沢に降りて登り返すことにした。ここは変に回り込まないで突っ切るのが正解らしい。その後も沢を渡りトラバースし、明るい林間を歩いていく。スタートからずっと1人でラッセルを続けているが、深くても15センチくらいで雪もまだそれほど重くなっていないので助かる。東海大緑樹山荘には予定より30分ほど遅れて到着。すっかり雪に埋まっていて屋根が一部見えているだけだ。ここは東海大の山小屋なので、一般登山者の利用はできない。東海大緑樹山荘からはしばらく急登が続く。ルートには東海大学のワンダーフォーゲル部の赤布がべた打ちされていた。急登を登り切って樹林を抜け、もう一頑張りと思っていたところ上の方から声が聞こえた。標高1460m辺りで笛を吹くと笛で返ってくる。間もなく和泉さんパーティー3人が滑り降りてきた。今朝は少し早めに出発し、家形山に登ってから降りてきたという。自分の目論見では、家形山避難小屋の辺りでスライドできればと考えていたのだが、これでは追いつくのは無理だろう。

                         雪に埋もれた家形山避難小屋
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                         ガンチャン落としのシュプール
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                         少しモナカ状の斜面                         
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                         山頂より見下ろす
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                         一気に滑り降りた
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しばらくは緩やかな登りが続く。和泉パーティーのトレースがあるので、ひとりラッセルも少し楽になった。家形山避難小屋には予定より1時間近く遅い10:24に到着。ここも屋根と入口の一部が見えているだけだ。休まず家形山に向かう。ガンチャン落としの斜面には和泉パーティーのシュプールが刻まれている。和泉パーティーは山頂の少し下から滑ったようだ。それにしても和泉パーティーの○井さんは今シーズンから山スキーを始めたばかりなのに、もうこんな急斜面を降りてくるのだから驚く。見上げると家形山の山頂直下までオープンバーンが続いている。なんともそそられる斜面ではないか。しかも今日は、斜面の雪もしっかり安定している。以前この斜面を見た時に滑ってみたいとは思ったが、自分が現実に滑ることが出来るとは思わなかった。また、見るからに雪崩れそうな斜面だと思った。しかし、それから数年後の今、絶好のチャンスだと思っている自分がいる。単独だが是非とも滑ってみたい。山は逃げないがチャンスは逃げる。しかし焦ることはない、冷静に判断しよう。ジグを切って山頂に登ると、ドロップポイントから東斜面を見下ろした。滑り出しこそ急だが、全体の斜度は40度未満だろう。雪もチェックしたが大丈夫と判断。意を決してドロップ。ウインドパックの雪が軽くクラストした斜面に、大きなターンを描いていく。雪面と空気を切る音だけが聞こえる。余りの気持ちよさに途中で止まろうという気にもならず、あっという間に五色沼のコルより下まで降りてしまった。斜面を見上げてひとり余韻に浸る。
※家形山の東斜面は過去に雪崩事故が発生しています。滑ろうとする方はくれぐれも注意してください。

                         30年ほど前のルート表示板
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                         すっぽり埋もれた緑樹山荘
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                         蟹ヶ沢右俣を渡ったところにある「沼-五」の案内板(沼尻-五色)
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                         林間のトラバース
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                         五色温泉に到着
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さて、休まずに下山開始だ。ガンチャン落としを滑り家形山避難小屋を通過。トレースを追って飛ばす。この辺りの赤布は慶応吾妻山荘管理人の大柿さんが付けたものらしく、トレースがなくても目印になる。その他にも福島登高会で付けた黄色プレートが、ある程度見つけられる。2年前はこれらの目印を見落とし、ルートミスをしてしまった。緑樹山荘を過ぎると滑る場面はほとんど無くなり、歩きメインとなる。雪は少し重くなってきたが、スキーが回しにくくなるほどではない。和泉パーティーは自分の往路のトレースを辿っているところもあり、そうでないところもある。下り目線で見ると、往路より効率的なラインが見えてくる場合があるのだ。そんなときは迷わずラインを変更する。途中で昼食休憩としたが、今日スタートしてから初めてのまともな休憩だ。陽の当たる林間で、ひとり静かに休むのもおつなものである。暖かい日だまりでは春を感じずにはいられない。その後も和泉パーティーのトレースと重なったり離れたり、蟹ヶ沢右俣の支沢以外は概ね自分のトレースを辿る。標高1000m近くまで下がると滑りが重くなってきたのでワックスを塗る。1077mピークのコルへは微妙に登りなのだが、シールを貼らずに何とかなるレベルだ。コルから○井さんに電話をすると五色温泉に着いたばかりという。10分で行くと伝えてスキーを走らせる。往路と同じく五色スキー場跡を滑ると、和泉パーティーの待つ五色温泉に到着。今日のルートを振り返ると、滑りはせいぜい2割で、ほとんどは歩きという感じであった。しかし、変化のある自然の山中を歩き通す充実感はたっぷりだ。由緒ある五色温泉で汗を流し、さっぱりすると帰路についた。

今回は2年前のリトライという位置づけだが、五色温泉からのピストンとしてルート確認の確実性をよりアップさせた。天候にも助けられ、その目的はほぼ達成できたといえる。それにしても2年前のあの苦闘は本当に同じルートでのことだったのかと思うほど、今回はスムーズに踏破できたといえる。さて、近年においてこのルートを歩くパーティーは、ワンシーズン中に片手の指ほどもいないだろうし、それでさえ先細りだろう。しかし、このルートは、このまま歴史と記録に埋没させてしまうには、あまりにもったいないように思える。ルートの目印がもう少しあって、歩く人がもう少しいれば、次世代にも繋がっていくような気がするのだが…

※和泉パーティーの記録はこちら

                         GPSトラック ( 往路:赤 復路:青 )
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by torasan-819 | 2014-03-12 02:28 | 山スキー | Comments(6)
Commented by yossy1904 at 2014-03-12 22:04
クラッシックルート、いいですね!
仙台からも近いので、GPSトラックを参考にぜひ行ってみたいと思います(来シーズンかな・・)。
Commented by torasan-819 at 2014-03-12 22:48
yossy1904さん
そうですね是非歩いてもらいたいですね。
ただし歩き8割…いや9割かな(笑)
味のあるいいコースです。
Commented by ULT at 2014-03-13 07:53 x
単独で1000mの標高をラッセルで登り、雪崩れの巣窟といわれるガンチャン落しを滑って帰還するとは!
過去に悲惨な遭難事案も聞いています。
自分には想像出来ない冒険ですね。
Commented by torasan-819 at 2014-03-13 18:18
ULTさん
この程度のことは「冒険」とは言いません(キッパリ)。
本当の冒険をしている方に申し訳ないですし。
「無謀」?ん~それもちょっと(笑)
この日の家形山東斜面は、今この時に滑らなければいつ滑るの?…今でしょ!!!!
と言うくらいのコンディション(自分にはそう思えた)でした。
ガンチャン落としも家形山東斜面も滑っている方がいますが、条件やタイミング次第ですね。
それはどこの斜面でも同じことです。
この日の主眼はクラシックルートの再確認、それが目的でした。
今度一緒に歩いてみませんか?
Commented by madokau at 2014-03-13 23:37 x
マルイです。
あの斜面を下れたのは貴重だったのですねー
残念。もっと美しいシュプールを描けるようになってから滑りたかったです。
途中にクレーターをたくさん作ってしまいました。

今週末のお天気はどうでしょうか。せめて雪ならよいのですが。
Commented by torasan-819 at 2014-03-14 00:43
マルイさん
そうですよ、山スキー初シーズンでガンチャン落としを滑った方は貴女くらいのものです(たぶん)。
美しいシュプール?そんなもの腹の足しにはなりません(笑)
山スキーは無事登って下ってなんぼですから。
とはいえワタクシももっとこう美しいシュプールが…(^◇^;)
今週末の日曜日の天気はちょっと微妙ですが、ワタクシの気持ちは既に決行ですよ。


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