2015年 06月 15日
吾妻山は噴火警戒レベル2による火口周辺規制(半径500m)により、最短ルートである浄土平からは一切経山へ登ることが出来ない。解除がいつになるのか、今のところは誰にも分からない。そんな訳で、現在一切経山に登ろうとすると、不動沢登山口から登らなければならない。一般には登山口~賽河原~慶応吾妻山荘分岐~五色沼~一切経山と辿るのだが、地形図を見ると賽河原からの分岐道がある。不動沢を渡渉しラクダ尾根から山頂へと至る道で、シモフリ新道という。磐梯吾妻スカイラインが開通する以前、高湯温泉から一切経山に登る場合、最短ルートであるシモフリ新道はそれなりに登られていたらしい。しかし、磐梯吾妻スカイラインが開通して以来、あえてシモフリ新道を歩く人は数少なくなり、いつしか廃道状態になっていたという。しかし、今でも赤布を付け、草刈を一部ではあるがしている方がいて、何とか歩けるらしい。そんなシモフリ新道からの一切経山を和◯さんが歩くというので、お伴させてもらうことにした。 山域山名 吾妻連峰 一切経山(1,949.1m) 山行期間 2015年6月11日(木) 山行形態 無雪期一般登山 天候 晴れ 参加者 3人(L:和◯・深◯・トラ山) 行程 不動沢登山口9:03~賽河原9:24~不動沢徒渉点10:00~1523m標高点尾根10:19~駱駝山11:42~水場12:25~ 休憩12:42-13:18~一切経山13:40-13:55~大岩14:40~慶応吾妻山荘分岐15:17~賽河原16:08~不動沢登山口16:39 行動時間 7時間36分 移動距離 11.6km (GPS計測) 累積標高差 ±1,030m (GPS計測) つばくろ谷駐車場 不動沢登山口 アカモノ 賽河原 枝で塞がれたシモフリ新道入口 登山口は磐梯吾妻スカイラインのつばくろ谷駐車場のすぐ手前にある。登山口には登山届の用紙が備えられていて、その場で記入することができる。登山口には登山者2名がいて、聞くと一切経山に登るのだという。お先にと声をかけて歩きだす。和◯さん達は既に出発しているので急ぎ足で追いかける。この道は積雪期に何度も歩いているのだが、雪の無いときに歩くのは初めてなので新鮮に感じる。樹林の中の登山道を登ること21分で賽河原の表示板に到着。その少し手前左手にシモフリ新道の分岐があるが、見逃してしまいそうなほど目立たない。入口には枝が積んであるが、明確な意図を持った者以外は入るなとの意味であろう。 赤布が目印 ミツバオウレン マルバシモツケ ここの方が賽河原のようだ イワカガミ ヤブが濃い 不動沢左俣 ショウジョウバカマ シモフリ新道に入ると、最小限だが刈り払いがされている。笹ヤブが濃いところもあるが、所々に赤布もあるので道を辿ることが出来る。シモフリ新道に入って10数分で、溶岩台地のような開けた場所に出る。雰囲気的にはここの方が賽河原という感じがする。ここには岩場を好むイワカガミがたくさん咲いている。赤布に導かれ再び樹林へと入っていくと、刈り払いはされていない様子。ここから先、有志による手入れは赤布のみとなる。道を見失ってルートを逸れてしまうと、元に戻るのは難しいと思うほどヤブは深い。分かりにくい赤布と踏み跡を頼りに慎重に歩いていく。やがて斜面を下るようになり不動沢が見えてくる。下降点を探すとロープが下げてあった。下りた沢は不動沢の右俣で、渡るとすぐ左俣が現れる。対岸に和◯さん達がいて追いつき合流し、ここから先は3人での行動となる。(和◯さんの記録) 踏み跡はかなり薄い ツマトリソウ 尾根の砂礫地に出る 駱駝山と一切経山 シモフリ山と吾妻小富士 イワカガミが多い 不動沢を渡渉してから先は、さらに道が怪しくなってくる。地形図には1523m標高点の小ピークへと道が記されているが、斜面にあるのはかすかな踏み跡程度だ。所々に赤布があるが、見失わないよう注意したい。なお、今回のリーダーの和◯さんは、約50年前からシモフリ新道を歩いている。登っていくと樹林を抜けて視界が開ける。1523m標高点の下はザレ場のようになっていて、熊のものらしき足跡があった。面白い形の駱駝山へと続く尾根が見え、いつもの吾妻山とはまた違った新鮮な眺めである。シモフリ新道の痕跡を辿れたのもこの辺りまでで、ここから先は踏み跡もなくなる。地形を見ながら歩いてゆくことになるが、ある程度は赤布とペンキマークも付けられている。部分的に樹林の中に入るところもあり、的確なルートファインディングが必要だ。駱駝山へと近づいてゆくと、火山性の地質で植生のない裸地が多くなる。 斜面は滑りやすい 駱駝尾根を見下ろす 駱駝山のピークへ 左から巻く 鞍部から駱駝山を振り返る 尾根を辿る 吾妻小富士のビューポイント 雪渓を登る 左手に吾妻小富士を見ながらザレ場の急斜面を登り、駱駝山のピークを左から回り込んで鞍部でひと休みとした。この先は尾根を辿ってゆくが、吾妻とは思えないような眺めが楽しめる。ただし、岩はかなり脆く砂礫は滑りやすいので注意したい。歩いているうちに他の足跡があるのに気付いた。こんなところを歩くのは自分たちだけではないようだ。1700m辺りから左へトラバースし、雪渓の残る沢筋を登る。冷たい水を飲み生き返るような気分がする。和◯さんによると、ここでは夏でも少しだが水が出ているという。この辺りとしては貴重な水場だ。一切経山への最後の登りだが、ここにきて新人の深◯さんの両足が攣り、芍薬甘草湯を飲んだがなかなか回復しない。休みながらゆっくりと、だましだまし登ってもらうしかない。 一切経山の山頂に到着 五色沼は別名魔女の瞳 オオカメノキ ムラサキヤシオツツジ サラサドウダン マイヅルソウ ヤマツツジ ウラジロヨウラク ゴゼンタチバナ 高湯ゲート 少し時間はかかったが、なんとか一切経山の山頂に到着。浄土平から登れないということもあり他に登山者はいない。和◯さんは放射線量を測定する(この日は12カ所で測定)。今日は最新のデータを取るという目的もあったのだ。そのうち誰か五色沼の方向から登ってきたが、見ると今朝登山口にいた2人だった。魔女の瞳とも呼ばれている五色沼を眺めてから下山にかかる。下りでもまた深◯さんの足が攣り始めたが、先頭でマイペースで歩いてもらうとやがて収まってきた。登山道を辿り途中で花を見ながら下る。登山口に戻ったのは16:34だったので、高湯ゲートの閉まる17時には十分間に合うことができた。 今日の山行は、新人の深◯さんの地図読みトレーニングのためでもあった。自分は今回初めてシモフリ新道を歩いたのだが、これまでの吾妻山のイメージとは異なる景色を見ることができ楽しかった。ただし、今回のルートに初心者だけでの入山は避けたい。少なくとも地図読みとルートファインディングが出来ることが必要である。また、熊の足跡と糞を何ヵ所かで見た。特に不動沢周辺は熊のテリトリーなので注意が必要である。それらに配慮すれば、今回のルートは吾妻山の新しい一面を見ることのできる、魅力的なルートであるといえる。 GPSトラック ( 登り:赤 下り:青 )
by torasan-819
| 2015-06-15 07:03
| 山
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Comments(14)
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tabi-syashin at 2015-06-20 09:17
ラクダ辺りはですねえ、(不確かですが)3、40年ほど?前に、、、硫化水素ガスの噴出があって、大きな規制があったんですよ。スカイラインの道路横(つばくろ谷だったかな?)に「立ち止まるな!」の看板を立ててからは このルートは利用されなくなったのですよ。トラさんのブログ読者が知りたいとすれば?吾妻小舎の管理人Tさんは昔からの経過なども話してくれますよ。もっとも吾妻山の会、福島登高会の古参会員なら知ってますよね、僕も当時のことをうっすら覚えているくらいですから。。。
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torasan-819 at 2015-06-20 22:29
tabi-syashinさん
そうですね駱駝山の下あたりの狐地獄と言われる一帯は、今も火山性ガスに注意が必要なようです。本文にも記しましたが、今回のリーダーは50年前!からシモフリ新道を歩いていた最古参会員です。でも10年後にここを歩く人はいるのだろうかと、ちょっと気になりました。そういう意味でも記録を残す必要性はあるかなと思っています。
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fck_mototyan at 2015-06-22 12:58
私は別な日に姥湯温泉から登りました。規制入っているので一切経山の山頂には誰もいなかったです。なんだか罪悪感を感じるほど、、、
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torasan-819 at 2015-06-23 12:27
fck_mototyanさん
面白いルートから登りましたね。以前はお気軽登山の方が多数登っていた一切経山も、今は閑散としてますね。今度一緒に吾妻縦走でもいかが?
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SONE
at 2015-07-08 19:45
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torasan-819 at 2015-07-08 23:39
SONEさん
こんばんは。磐梯吾妻スカイラインが開通する以前は、シモフリ新道が一切経山への最短ルートだったので、よく歩かれていたらしいのです。 ここに限らず時の流れとともに道も移り変わるのですね。そんなことを思いながら歩くのも感慨深いものです。 シモフリ新道を是非一度歩かれてはいかがでしょうか。
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bono2
at 2016-04-08 21:29
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シモフリ新道の情報、ありがとうございました。
この冬、ずっと気になってた尾根です。今度、少しでもいいので、足を踏み入れてみたいです。 (ちょー遅コメントで失礼かなと思いましたが、お礼が言いたくて、書き込ませていただきました。本当にありがとうございました。)
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torasan-819 at 2016-04-09 11:18
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Hide6
at 2016-04-24 09:58
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初めまして。たまにこちらの記録を興味深く有り難く拝見させてもらっています。
bono2さんのシモフリ新道レコを見てこちらを参照していたことを知りました。吾妻連峰には1960~70年代によく登りましたが、シモフリ新道は全く気にかけることなくこのようなルートがあることを知って大変驚きました。そこで、いつ頃どのように使われていたかを知りたくなりガイドブックを調べてみました。 皆さんが書かれているようにスカイライン開通前一時的に良く使われていたようです。ちょっと長くなり恐縮ですがここに記載させてください。 (1) 吾妻連峰登山について初めての本格的ガイドブックは、朋文社が1954年に発刊した宮田恒雄氏著の「磐梯・吾妻・安達太良山」と認識しています。ここで氏は “数年前に新道が開かれた”と書いていますが、これは“賽の河原から大天狗・シモフリを経て、微湯から小富士の北側をまく登山道と合流する”“高湯から吾妻小舎への楽で安全なコース”としています。スキーツアーでも高湯起点で吾妻小舎を使う場合にはこのルートを推奨しています(CT:高湯 -1:30- 賽の河原 - 2:30 - 吾妻小舎)。なお、シモフリからラクダ尾根経由で一切経へのルート記載は全くなく、“一切経には浄土平を経て登る”としています。 (2) 次に、1961年に実業之日本社が出版した深沢達治氏・目黒実氏共著の「磐梯高原・吾妻スカイライン・吾妻・安達太良山」では、観光道路開通前の状態で、高湯からの一切経登山で賽の河原から2つのコース、Aコース:従来の五色沼経由、Bコース:“ラクダ新道”コース(CT:賽の河原 - 0:40 - 不動沢出会 - 0:40 - ラクダ新道入口 - 1:30 - 一切経)が紹介されています。微湯からの一切経登山でも、観光道路(工事中)出合いからシモフリとラクダの鞍部経由“ラクダ新道”で2時間と記載しています。(観光道路開通は、1959年11月) このように、1950年代に2段階で切り開かれたようですね。 最近の噴火警戒による規制で浄土平からのアプローチができなくなったために、廃道化していたルートが注目されているのは皮肉ですが不幸中の幸いというべきでしょうか。自分もトライしたいと思います。
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torasan-819 at 2016-04-25 21:06
Hide6さん
コメントと詳しい情報ありがとうございます。私もシモフリ新道は先輩に教えてもらうまでは知りませんでした。 Hide6さんは古い資料を現在もお持ちなんですね。シモフリ新道は日本山岳協会福島支部の初代メンバーらが昭和24年(1949年)に整備したとされていますので、1954年発刊の「磐梯・吾妻・安達太良山」で “数年前に新道が開かれた”と記載されていることと符合しますね。賽河原から一切経までは距離もありますから、2段階で開かれたというのも頷けます。 賽河原からシモフリ鞍部までの約6キロが日本山岳協会福島支部の有志により復元されたと、2013年の新聞にあります。シモフリ新道は誰にでもお勧めできるルートではありませんが、吾妻の多様な1面を知るには良いルートだと思います。 また拙ブログを訪問していただければ幸いです。
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Hide6
at 2016-04-27 20:40
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2013年の新聞情報をありがとうございます。また、昔の話にお付き合いいただき感謝しています。
「磐梯・吾妻・安達太良山」の著者、宮田氏とは家族同士が懇意にしており、宮田氏からもらった本書は私の大切な山のバイブルになりました。千葉に移転してからは歩く機会が減りましたが私の”ふるさとの山々”です。 torasanさんのブログには当時を思い出させる記録が多くあり懐かしく読んでいます。これからも楽しみにさせていただきます。よろしくお願いします。
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torasan-819 at 2016-04-29 20:24
Hide6さん
2013年6月23日の福島民報です。 さて昔の資料はとても貴重ですね。是非今後も大事にされますようお願いいたします。 私は経験も知識も浅いので、何かありましたならアドバイス等いただけましたら幸いです。
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ワンダ
at 2017-11-27 20:43
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50年以上前の話ですが、浄土平から狐地獄経由で、賽の河原を通り不動沢に抜けたことがあります。その後、狐地獄の付近は通行禁止になりました。今も賽の河原ー駱駝山ー一切経山のルートがあるのに驚きと、懐かしさを禁じえません。その時はちょうど10月中旬で、前日の初雪で頂上部分は真っ白、空は完璧な晴天、そしてハウチワカエデの真っ赤な紅葉と緑色の針葉樹の対照と、この世のものとは思えない風景でした。
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torasan-819 at 2017-11-28 22:17
ワンダさん
拙ブログに訪問いただきありがとうございます。 ワンダさんが歩かれたのは50年以上前ですか!大先輩にコメントいただき光栄です。 その時の風景は年月が経過してもなお鮮明な記憶ということは、さぞかし美しかったのでしょう。 現在のシモフリ新道はルートと言えるのかどうか、かろうじて踏み跡が確認できるレベルです。 現在も静かな山歩きのできる通好みのルートです。 |
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