2017年 07月 31日
北岳バットレス ~ 2017年7月14日-17日(その2)
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山域山名   南アルプス 北岳バットレス
山行期間   2017年7月14日(金)~17日(月)
山行形態   アルパインクライミング
天候     15日 晴れ 16日 晴れ時々曇り 17日 晴れのち曇り
参加者    3人(L:K樹・T中・トラ山)
行程     14日 道の駅国見19:30=道の駅しらね0:30=芦安温泉第5駐車場1:45
       15日 第5駐車場4:50=広河原6:20~白根御池小屋8:22-9:55~大樺沢二俣10:15~Dガリー大滝下11:55-13:00~
          白根御池小屋14:30
       16日 白根御池小屋2:04~Dガリー大滝下3:45~第5尾根支稜取り付き4:30-4:40~第4尾根主稜取り付き6:40~
          三角垂壁8:40~マッチ箱9:30~枯れ木テラス11:30~城塞チムニー11:55~北岳山頂13:15-13:35~肩の小屋14:04~
          白根御池小屋15:33
       17日 白根御池小屋6:33~広河原7:56=第5駐車場9:07
行動時間   15日 8時間10分 16日 13時間29分 17日 1時間23分
移動距離   未計測
標高     最低点1,525m 最高点3,193m
装備     ロープ50m×2





【16日】
           ヘッデンで雪渓を登る
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          C沢D沢中間尾根を登る
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午前1時半に起床。まずまずよく眠れた。北岳バットレスではパーティーが多い場合に順番待ちの渋滞が発生し、後ろの方にいるとかなり時間がかかってしまうことがあるという。知っている山岳会では、北岳バットレスの登攀中に暗くなり、登りきることができなくなってビバークしたということも聞いた。我々シニアはそんなことは御免だし、朝早いのは年齢的に得意?なので早出することにしたのだ。支度をして午前2時過ぎに出発。我々が一番かと思ったが、同じテン場にいた男女2人パーティーに先を越された。ヘッデンを付けてテント村を抜け登山道を歩く。大樺沢二俣でアイゼンを装着して雪渓を登る。先行する2人パーティーはアイゼンなしでスタスタ登っていった。途中で振り返ると、後続パーティーのヘッデンの明かりがいくつも見える。続々と登ってきたようだ。C沢D沢中間尾根を見つけて踏み跡を辿る。昨日下見をしていなければこうスムーズにはいかない。午前4時前に雪渓下まで来たが辺りはまだ暗い。午前4時過ぎには行動可能と思っていたのだが、ここは東北よりずっと西だということを考えていなかった。ハーネスを付けて明るくなるのを待っているうちにも、下から何パーティーも登ってくるのが見える。ところが全部がこちらに登ってくるわけではなく、右に左に適当にばらけていく。第4尾根主稜の下部岩壁は様々なルートがあるということで、先行パーティーが詰まっていると見るや、ルートを変更するということもあるそうだ。ただし、いずれにしても上部で第4尾根主稜に集中することにはなる。



           明るくなり行動開始
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           第5尾根支稜取りつきで順番待ち
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           第5尾根支稜登攀開始
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          2ピッチ目(早くも後続のパーティーが迫っている)
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           Dガリー大滝上部の登攀
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           ピラミッドフェースの横断バンドをトラバース(かなり怖い)
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           ピラミッドフェース登攀中のパーティー
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午前4時20分頃、やっと明るくなったので行動開始。雪渓をロープを伸ばしてトラバースし、昨日確認した第5尾根支稜の取り付き点まで移動する。K樹さんと自分はアプローチシューズからクライミングシューズに履き替えた。T中さんは40年前と同じスタイルで登山靴で登るのだという。K樹さんから今日はリードとセカンドが交代するつるべ方式ではなく、基本的にK樹さんがリードして登るとの説明があった。セカンドはT中さんと自分がそれぞれダブルロープの1本を結び、前後に少し差をつけて同時に登るのだという。シングルロープの変形バージョンということになる。時間短縮のためでもあり、リードする自信のなかった自分がホッとしたのは言うまでもない。先行の2人パーティーが登り始めたところなので、少し待ってから我々も登り始める。最初のピッチは難しくない。下部岩壁の取り付きとしてはおそらくここが一番易しいところなのだろう。K樹さんがするすると登って残置支点で確保し、コールを受けて2人が続く。続いて2ピッチ目に入っていると、早くも別ルートで登ってきたパーティーが追いついてきた。3ピッチ目はDガリー大滝の上部を登るが、ロープなしでも登れる程度だ。テラスに出て右上を見上げるとピラミッドフェースを登っているパーティーがいる。その下で我々は右へやや下りのバンドを横断し、回り込んでから第4尾根に取り付くとのこと。この横断バンドの中間部は崩壊跡で、細い踏み跡はやや外傾しているのでかなり怖い。浮石が多く下にパーティーがいるかもしれないと思うと、細心の注意で足を運ぶ。



           潅木のある岩場を登る
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           凹角を登る
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           小テラスに出てリッジを登る
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           第4尾根主稜の取り付き点
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           富士山が見える
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無事トラバースして回り込み、潅木のあるところまで来るとホッとする。後続のパーティーが来て踏み跡を先へと進んでいった。踏み跡はさらに先へ伸びていて、下方に一部が見えているC沢上部のCガリー大滝からのルートと交わるらしいが、我々はここから直上するという。第4尾根主稜の取り付きはまだ上であり、ここは下部岩壁の上部というのか第4尾根下部というのか、いろんな記録を見ても今ひとつ呼び方が不明な場所のようだ。若者2人パーティーが来たのでお先にどうぞと言うとフリーで登っていった。我々は右手の灌木のある岩場をルートに選ぶ。こちらのほうが沢屋にとっては馴染みがあって落ち着く感じがする。自分はどうも凸角が苦手で、岩に挟まれるような凹角が好きというか安心できる。灌木があるのでフリーでも登れそうとはいえロープを伸ばす。灌木帯から小テラスに出ると、露岩のリッジ状をさらに登り大テラスに到達。ここがやっと第4尾根主稜の取り付き点になるらしい。左手には富士山がくっきりと見えている。結局この第4尾根下部だけで4ピッチだったのか5ピッチだったのか、必死なので記憶があいまいだ。今日登り始めたパーティーの中では、第4尾根主稜取り付き点にトップで到達したのは我々のようだが、すぐ数パーティーが下から迫ってきた。時間には余裕があるので、休憩を兼ねて先に1パーティー先行してもらうことにした。



           第4尾根主稜を登り始める
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           比較的易しいスラブの登攀
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           かなり高度感が出てきた
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           右に回り込む
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           ロープを伸ばすK樹さん
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           白い岩のクラックと呼ばれるところ
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           三角形の垂壁
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           左上に城塞チムニーが見える
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           Dガリー奥壁を登攀中のパーティー
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           ホバリング中のレスキューヘリ
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さて我々の番だ。皆が同じところを踏むのだろう岩角は、滑らかにすり減っていてテラスから離陸するのがちょっと難しく思えた。しかし、K樹さんは右の広いクラックを利用して苦も無く登っていく。自分も何とか登ったが、T中さんは苦労しているようで2回ほどロープがぴんと張った後にやっと登ってきた。登山靴が滑って取り付けず、何度か落ちたので後続パーティーのアブミを借りて登ってきたのだという。我々はアブミを持ってこなかったのだ。この先も登山靴では厳しいだろうと、K樹さんのアプローチシューズを借りることにした。比較的易しいスラブに1ピッチ伸ばし、肩がらみの確保で右上して回り込むと白っぽい岩(通称:白い岩のクラック)の下に出た。白っぽい岩の登攀は高度感はあるが比較的易しい。三角形の垂壁下のテラスに出たが、2パーティーが追いついてきたので先に登ってもらうことにする。東北人は控えめなのだ。左のスラブはDガリー奥壁と呼ばれるスラブだろう。数パーティーが登っていて、よくぞあんなところを登るものだと思う。とはいえ、目指すところは彼らも我々も同じで、左上に見える四角い壁のような岩のようだ。中央部の溝を登っているパーティーが見える。城塞チムニーと呼ぶらしいが、なるほどまさに城塞という感じである。そのうち眼下にヘリコプターがやってきた。C沢の上と思われる辺りでホバリングして明らかにレスキューのようである。そのうち要救助者を吊り上げて飛んで行った(雪渓で滑落して怪我をした人がいたと後で聞いた)。



           マッチ箱からいったん懸垂下降する
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           マッチ箱の下を登る
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           支点が空くのを待機中
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           マッチ箱のコルを懸垂下降中の他パーティー
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           やっと我々の順番が来た
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           枯れ木テラスは渋滞中
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           リッジをトラバースして城塞チムニーへ
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           城塞チムニー下から見るマッチ箱
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           第4尾根主稜の終了点
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           稜線にはガスがかかってきた
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三角垂壁は自分にとってかなり難しく思えたが、クライミングシューズのお陰で何とか登れた。靴を履き替えたT中さんも大丈夫。そのまま登っていくとマッチ箱と呼ばれる岩の先端だ。2人でいっぱいの狭い先端は高度感が半端ない。ここから残置支点で15mほどの懸垂下降をしてスラブの途中に降りる。各ルートから登ってきたパーティーが上にも下にも横にも見える範囲で10パーティーはいそうだ。こうなると賑やかを通り越して渋滞が心配になってくる。上には何パーティーかいるので登ることができず順番待ちとなる。しかし、そうしているうちにも半ば強引に懸垂下降してくる人もいる。見ると60代後半かと思える年配の方で、ガイド2人と客が3人のガイドパーティーのようだ。順番が来たのでK樹さんがマッチ箱下L角のクラック沿いに登りリッジでピッチを切る。T中さんと自分が登り、上に見える枯れ木テラスというところへK樹さんがロープを伸ばすが、上のパーティーが詰まっているのでしばらく待機となった。T中さんと2人でリッジ上で待っていると、先ほどのガイド氏が我々の横を抜けてロープを伸ばしていった。あれれと思っていると後から5人が登ってきた。勝手がわからぬ自分はそういうものなのかと驚くやら感心するやら。結局K樹さんも追い越されたようだ。支点が空くのを待って枯れ木テラスというところに到達したが、マッチ箱の懸垂下降から1時間半ほどもかかってしまった。枯れ木テラスは2010年に崩壊した所で、今は猫の額ほどの面積しかない。横に見える城塞チムニーへは、クラックを跨いでリッジを左にロープを伸ばしてトラバースする。崩壊によりリッジの裏側はスパッと切れ落ちていて、距離は短いがかなり緊張する。城塞チムニー下で残置にセルフビレイしてひと息つくが、もう次のパーティーがやってきた。城塞チムニーでは、ガイドパーティーの客がなかなか登れずもがいていた。結局下からガイドがショルダーで押し上げて登っていった。チムニーが空いて我々の番となったが、K樹さんは別として自分とT中さんは案の定手こずる。待っているパーティーも気になり、結局2人とも支点のヌンチャクを掴んで登った。城塞チムニーの上に出ると、それまでとは違った穏やかな傾斜の斜面になる。ここが第4尾根主稜の終了点のようだ。もうロープはいらないが、そのまま少し登った平場でザックを降ろし装備を解いた。見上げる稜線にはガスがかかり始めてきた。



           明瞭な踏み跡を辿る
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           北岳山頂にて
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           花を見ながら下山
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           白根御池小屋に帰着
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稜線の登山道までは明瞭な踏み跡があり、お花畑の中をゆっくりと登っていく。20分ほどで登山道に出ると、稜線の反対側はガスで真っ白だった。そこから少し歩くと山頂である。ガスで眺めはないが大勢の登山者でにぎわっている。初めての北岳でもあり、少し休憩を兼ねてゆっくりする。ここでは偶然知り合いの夫妻がいて、お互いにびっくり。旧交を温めてから下山にかかる。肩の小屋に近づいたあたりからガスの下に出たので、眺めが得られるようになる。草すべりのお花畑を見ながら下り、白根御池小屋には14.30到着。12時間以上の行動時間となったが、シニア3人組としてはまずまず上出来かなと思う。これもK樹さんのお陰であることは言うまでもない。昨日と同じテーブルで祝杯を上げる。余韻に浸りながらのビールは格別の味がする。寝不足なので早めにテントに入る。呑んで声高に会話するパーティーの声が響いていたが、疲れていた自分は気にもならず眠りに落ちた。午後9時半近くにガチャガチャと音がして目を覚ますと、「戻ったぞー」と言いながら仲間のテントに帰ってきた輩がいる。バットレスパーティーだろう。順番が後ろの方になるとこういうこともあるらしい。夜中にまた目を覚ますとテントを雨が叩いていた。

【17日】
           さあ下山しよう
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今日は下山するだけなので午前5時ころゆっくり起きる。昨夜の雨は大したことなかったようで、テントの撤収には支障なし。次々と下山するパーティーが出ていく。我々も出発しゆっくり歩いていると、後ろから昨日小屋をトップで出発した男女パーティーが抜いていく。どうも行動パターンが同じようで、昨日の登攀中もそうだが、いちいち一緒になってしまう。広河原発8時のバスに乗ろうとしたが、乗り合いタクシーなら駐車場まで送ってもらえるとのことでタクシー(1,200円)にする。第5駐車場に着いてみるとガラガラになっていた。隣の金山沢温泉(850円)で3日間の汗を流す。一般道を秩父経由で関越道、北関東道、東北道と走り継ぎ夕方に帰宅した。

北岳バットレスでは良い経験をさせて頂いたと言いたいが、正直なところ結構いっぱいいっぱいで余裕なんてものはなく、あまり周囲を見ることができなかったというのが現実。さすが名の知れたクラシックルートで7月の3連休ともなればパーティーの多さは当然なのだろう。それにしてもこんな経験のない自分は、パーティー数の多さと交錯には戸惑うばかりだった。今考えればもっとルートを詳細に確認し記録したかったと思う。しかし、後続パーティーのプレッシャーもありそれは難しかった。とはいえ天気に恵まれたこともあり、富士山を眺めながらのクライミングは爽快のひと言。またやってみたいかと問われればイエスだ。こんな機会を作ってくれたK樹さんとT中さんありがとう。



by torasan-819 | 2017-07-31 11:14 | | Comments(4)
Commented by tabilogue2 at 2017-08-08 09:01
途中で、手に汗握ってしまいましたw 革の登山靴に昔のアタックザックでクラシックルート・・・
カッコイイけど腰ベルトがない分、左右に振られて大変だったことでしょう。
それと、スメアシューズは最低装備ですね、よくわかりました。

特にバンドのトラバースのところなんか 我がことのようにハラハラしちゃった。
トラバ途中で「こんなところかよぉ???」って泣きが入りそうです。Aゼロも解るような・・・w

キコリのKさんも シニアだけでパーティ組むんですから、”漢”ですなぁ。。。
Commented by fck_mototyan at 2017-08-08 18:21
少しカテゴリが変わると用語も異なるんですね。いつかやってみたいかと問われればノーですね。怖い^_^トラさんもKさん凄いわ。
Commented by torasan-819 at 2017-08-09 07:10
tabilogue2さん
T中さんも40年前との違いはかなり実感したと思います。登り方や装備や自分自身の体の違いなどなど。
以前はあぶみの架け替えで登ったところも、今は皆さん普通にフリーで登っています。
こんなところ登れるのか俺?と何度も思いましたが、登るしかないわけで(笑)
北岳バットレスは長時間行動になるので、技術もさることながら体力が必要なルートと思いました。
とはいえ渋滞なしで効率的に登ることができればかなり時間は詰められますが。
還暦近いオッサン2人を引き上げてくれたK樹さんは漢ですわ。
Commented by torasan-819 at 2017-08-09 07:18
fck_mototyanさん
用語ですか?
実はなんちゃってクライマーな自分はよく分かってない部分もあるのです(^^ゞ
怖いのは確かですね~なんで自分はこんなところにいるのかなんて時々思います(笑)
でもその分達成感もあるので登ってしまうんですかね。


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