2018年 01月 30日
山遭協救助隊冬山訓練 ~ 2018年1月27日
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27日は所属している宮城県山岳遭難防止協議会の冬山救助訓練に参加。警察と消防も参加して、総勢40名以上という大人数となった。訓練では「山スキーでの遭難者が発生。救助にヘリが使えない状況で人力搬送とする。沢を渡るのにロープを張り吊り下げて横断し急斜面を引き上げる。」という想定で行った。ロープを張るなどの作業中に、他の者は弱層テストとビーコン・ゾンデでの捜索訓練を実施した。警察も消防もビーコンは全員初めてだったが、さすがに呑み込みが早い。その後、実戦さながらの搬送訓練を行った。スケッドストレッチャー(担架の一種)にはダミーの重りではなく、生身の消防署員が入ったのでずっしりと重い。沢に張ったロープに吊り下げて渡す際は緊張が走る。急斜面は上からロープで引き上げて無事終了。参加者で豚汁食べてミーティングして解散した。

さて、世間では様々な分野で高齢化が叫ばれて久しいが、山遭協とて例外ではない。自分で言うのもなんだが、還暦近いのに若手の部類とはこれいかにだ。消防も警察も息子のような年齢なので、体力はとうてい敵わない。では、我々の存在意義とは何ぞと問えば、山を知っていることに尽きると思う。地元の山を深く知り理解し、的確なルート案内や判断ができることが一番求められることなのだろう。そういう意味では、年季の入ったロートルにも活躍の機会があるというものだ。ただし、そのためには地元の山に四季を通じて踏み込んでいなければならない。そういう者に自分はなりたいと思っている。





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偶然だが、今回の訓練想定と同じような状況での遭難事故がつい先日あった。そのことについて少し取り上げてみたい。以下はネットニュースからの引用。


 新潟県妙高市両善寺のロッテアライリゾートでスキー滑走中に遭難していたAさん(68)とBさん(40)の親子が、2018125日午後245分頃、遺体で発見された。

 妙高警察署によると2人は24日午後、スキー滑走中、道に迷ったため、スキー場へ連絡。2人は「いつの間にかコースから外れ道に迷った」と話していたという。また、Bさんは立木に衝突し、顔と腹にけがを負ったとみられる。パトロール隊が捜索したが発見できなかったため、スキー場が同140分頃、同署に通報した。しかし、天候が悪く視界不良で雪崩の危険もあるため捜索を断念し、同署は同日午後5時頃、携帯電話で2人の位置情報を確認した上で、その場で穴を掘ってビバークするよう指示していた。その後、この電話を最後に2人と連絡が取れなくなっていたという。

 警察や消防など30人が25日午前7時頃から捜索を開始し、同日午後245分頃、同スキー場で一番上にある山頂付近に向かうリフトの乗り場から約500m西の沢で、雪に埋もれた2人の遺体を発見した。前日に携帯電話の位置情報で確認した場所だった。死因は凍死とみられるという。



この2人は山スキーではなく、普通にスキー場に滑りに来たゲレンデスキーヤーと思われる。ちょっとコース脇のツリーランでもしようと考えたのだろうか。親子はゲレンデに戻れなくなりスキー場に迷ったと電話し、パトロールが捜索したが発見できず警察署に通報したということだ。携帯電話の位置情報からおおよその場所は特定できていたというし、遭難者からは「雪が深すぎて動けない」との連絡を最後に途絶えたとの報道もある。最悪の結果になったのは非常に残念だ。ご冥福をお祈りします。


発見場所が沢であったことから、滑降中に沢に入り込んでしまい抜け出せなくなったのだろう。スキーやボードは徒歩と違って移動スピードがあるだけに、滑る方向を間違うとあっという間に沢に落ち込んでしまう場合がある。我々は「沢に落とされる」とか「沢に呼ばれる」と表現することがあるが、スキーやボードはどうしても自然と楽に滑る方向(最大傾斜方向)に向かってしまいがちだ。ルートを探しながら何となく滑っていると、簡単に沢へ入り込んでしまうことが良くある。沢には柔らかい雪が溜まっていることが多く、そのような沢からの脱出はシールを貼った山スキーでもかなり大変なことになる。


この2人も雪洞などでビバークできれば、命は助かった可能性も十分あっただろう。迷って戻れなくなった一般スキーヤーやボーダーが、山中で一晩過ごして助かったという事例もままある。シャベルやツェルトなどの装備を持っていなかったとしても、雪洞でビバークとの指示があったとおり、手でもなんでも掘って何とかできなかったのだろうかと思う。ただし、サラサラの雪の場合は掘るのも難しいことがあり、その時の雪質に大きく左右されることになる。もしかするとこの2人も雪洞を掘ろうとしたが叶わなかったのかもしれない。


多少は知識や経験があったとしても、自分が実際そうなった場合にどうなるかは分からない。動けずじっと寒気に耐えて一晩過ごすというのはどういうことなのか、経験してみないと本当のところは分からない。5年前の1月中旬には、宮城蔵王の山中で2人のスキーヤーが深雪で行動不能となり、着のみ着のままで2晩過ごして凍傷はあったものの生還している。この時は3日目にヘリが飛べたのでギリギリのタイミングで発見できたが、さすがに3晩は難しかったのではないかと思われる。7年前の1月中旬には、箕輪スキー場から山に入ったがスキー破損(ビンディングか?)と天候不良で行動不能となり、リフトの降り口から南約400メートルの沢でツェルトに入ってビバークし、救助を待った2人の山スキーヤーがいた。この時も2晩過ごしたが、3日目にヘリにより発見され無事救出されている。


山スキーによる遭難での救出例をあげたが、亡くなったり行方不明のまま発見されない事例も多い。ひとつ間違えば遭難という状況になりながらも、たまたま運よく生還できたという、隠れ遭難的なことも日々発生しているのかもしれない。際どい状況に陥った時に遭難するかしないかは、当事者の経験と知識や装備に加えて体力や怪我や天候など様々な要因があり、どっちに転ぶかはわずかな違いなのだろう。




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妙高も蔵王も箕輪も時期が1月ということにも注目したい。この時期はまだ雪に底が出来ていないことが多く、深雪にはまり込むと行動不能になることがある。深雪が底なし沼のようになり足場が作れないため、シールを貼って再びスキーに乗ることさえ難しくなる。ましてツボ足で登り返そうとしても、アリ地獄のアリのようにその場でもがくばかりになり、体を上げることが極めて困難になる。私も先日の若女平では深雪に悪戦苦闘し下山遅延の原因となってしまった。ゲレンデの圧雪しか知らない人には、想像すら出来ないのが深雪からの脱出なのだ。特に妙高のロッテアライリゾートは豪雪地帯にあり、沢にはかなりの深雪が溜まっていたと思われる。


我々山スキーをやるものは、シャベルやツェルトなどの携帯が常識になっているが、実際に冬山でのビバーク経験のある者はほとんどいない。自分も計画してのテントや雪洞はあるが予期せぬ形でのビバーク経験はない。しかし、冬山での不意のビバークはシュラフもないため、寒く辛く厳しい時間となるであろうことは想像に難くない。ビバークせざるを得ない状況と判断したなら、無駄に動いて体力を消耗することなく、ひと晩やふた晩は生き抜くと覚悟を決めることが肝要だろう。いずれにしても昨日は人の身今日は我が身である。安易な気持ちで山に入ることは慎みたい。




by torasan-819 | 2018-01-30 22:35 | | Comments(0)


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