2018年 03月 18日
吾妻には日本で最も古い時代に開かれたツアールートがある。いわゆるクラシックルートというものだ。スキーが山を歩く道具そのものだった頃から、数十年前まではよく歩かれていたのだと思う。しかし、今となってはほとんど歩く人もいなくなってしまい、忘れ去られつつあるルートなのだ。自分はそんなルートを歩くことにこだわっている。単なるノスタルジックなのかもしれないが、無くなってしまうのが惜しいと思うのだ。今回は以前から考えていた五色温泉からの高山下りを歩いてみることにした。縦走になるので相方かサポートがないと難しいのだが、今回はM崎さんが相方になってくれたのでトライすることができた。 山域山名 吾妻山 五色温泉~高山下り 山行期間 2018年3月11日(日) 山行形態 山スキー 天候 晴れのち曇り 参加者 2人(L:トラ山・M崎) 行程 五色温泉5:25~四郎右ェ門沢7:21~東海大緑樹山荘8:30~家形山避難小屋9:40~五色沼コル10:06-10:18~ 一切経山西側コル11:03~鎌沼横断11:30-11:40~昼食11:42-12:00~スカイライン12:23~鳥子平12:36~ 高山13:26-13:36~細尾根(フンドシ)14:11~林道14:35~十字路14:53~駐車地点15:07 行動時間 9時間42分 移動距離 22.3km 累積標高差 +1,524m -1,764m 五色温泉宗川旅館の下を回り込む 古い標識があちこちに残っている 家形山(中央)が見えてきた 「五色ー沼尻コース」のツアー標識 黄色の「冬」プレートもある 右に見えるのは高倉山 これも「五色ー沼尻」のツアー標識 2:45 自宅を出る。早朝というよりもまだ深夜である。昨日からの喉の痛みが気になるが、熱は無いようなので大丈夫だろう。高速も使い土湯温泉には3:53に到着した。既に着いていたM崎さんと合流し狭い道を登っていく。林道入り口前の道路脇のスペースに1台デポして取って返す。五色温泉手前にある道路脇の駐車場所には5:08到着。 ニッポンビールのツアー標識 蟹ヶ沢右俣の左岸を下降 東海大緑樹山荘 スキーを担いだM崎さん ガンチャン落としを登る 7:21 四郎右ェ門沢を渡るが、すっかり埋まっているので何の問題もない。沢のすぐ手前に鉄板で作った「五」と「沼」の標識がある。五色温泉~沼尻温泉のツアールートであることを示す標識である。歩いていくと「ニッポンビール」の標識もある。ニッポンビールは1964年に社名変更でサッポロビールになっているので、少なくとも54年以上前のものということになる。当時はどんな人たちが歩いていたのだろうかと思いを巡らすのも楽しい。蟹ヶ沢右俣の手前にも「五」と「沼」の標識がある。この標識を見ると東海大緑樹山荘は遠くないとわかる。この沢は高さがあるので渡渉がポイントになる箇所だ。今年は積雪十分で問題ないが、雪が少ないと沢が口を開けていて渡渉に苦労する場合もある。今回はガリガリの急斜面下降に気を使った。沢を越えて少し進むと3つ目の「五」と「沼」の標識があった。 8:30 東海大緑樹山荘に到着。この小屋は一般解放されていないが、目印になるのでいつも立ち寄ることにしている。スタートして3時間経過。休憩とも思ったがM崎さんは全然余裕なので進むことにする。小屋から先は地形図では大したことないのだが、実際はそこそこの斜度がある急斜面になる。カリカリ斜面なのでかなり手こずったが何とか登る。M崎さんは途中でスキーを担いでアイゼンで登ってきた。ふと気づくとルート上にある目印の布が見当たらない。東海大緑樹山荘と家形山避難小屋の間には、東海大学ワンダーフォーゲル部の赤布と慶応吾妻山荘の大柿さんの緑布が毎回必ずあったのだ。しかし、今年はどちらもないのだ。あっても色あせた古い布が見つかるだけなので少々気になる。もうそろそろ家形山避難小屋のはずだと思いきょろきょろすると、既に脇を通り過ぎて少し上に出ていた。そのままガンチャン落としを登り始める。M崎さんはずっとスキーを担いでいるので、そのままアイゼンでスタスタ登っていく。自分はシール登高を試みるがやはり無理だと悟りスキーを肩に担ぐ。キックステップはいくらも雪面に刺さらないが、何とか落ちずに登った。 五色沼を回り込んで一切経山へ 高山が見えてきた 前大巓 東吾妻山と鎌沼 鎌沼を渡る 磐梯吾妻スカイラインに出る 鳥子平からの高山 10:06 五色沼コルに到着。まずまず計画どおりだ。ここは強風地帯なのだが、今日は嘘のように穏やかである。まさにツアー日和といえる。家形山の下をトラバースしていると山頂に人影が見えた。昨日今日と、天元台から登り吾妻連峰を雪洞縦走してきた我が会のパーティーだ。手を振って挨拶し先へと進む。雪の付いていない一切経山を左に見ながらコルに出ると高山が見えてきた。前大巓の方に回り込んでいくと正面に東吾妻山と手前下に鎌沼の景観が広がる。東海大緑樹山荘からここまでスキーを担いできたM崎さんがザックを降ろした。鎌沼まで滑ろうということらしい。自分はシールのまま下降することにする。水を得た魚のようにM崎さんが滑り降りていく。鎌沼は凍結しているので氷上を歩いてショートカットする。渡り終えたところで昼食にしたが、食べていると雲行きが怪しくなってきた。山の天気は分からないので先を急ぐことにする。磐梯吾妻スカイラインまで最短ルートを狙うと、うまい具合に橋の手前にすんなり出ることができた。スカイラインを少し歩いて鳥子平に到着。のっぺりした高山の北東面を見上げる。山頂まで200ⅿの登りである。体調が今一つなのでM崎さんに先行してもらう。足が重くてペースは落ちるばかりだ。7年前の高山でも登りで不調だったことを思い出す。 高山の山頂には反射板がある 箕輪山を正面に滑り降りる 土湯ー高山のコース標識 フンドシと呼ばれる細尾根 ザラメになり滑りやすくなった 最後は林道歩き 13:26 高山山頂に到着。登りが辛くてM崎さんに10分以上遅れてしまった。正面には箕輪山が近い。ここからがいわゆる「高山下り」になる。スタートからずっと貼ったままだったシールを剥がす。自分は久しぶりであまり記憶もないので、今シーズン高山は3回目というM崎さんに先行してもらう。しばらくは固い雪面に足の疲労が増すような感じだったが、標高を下げるにつれて少しずつ緩んできた。1,300mまで下げるとザラメの快適な雪質になった。雪も変わると印象もガラッと変わる。今日初めての滑降らしい滑降であり、ツリーランを楽しむことができた。林道に出てショートカットしながら下り、平坦になったところで3.11の黙とうを行う。7年前の今日は東日本大震災だったのだ。滑らない雪に疲れを感じながらも最後のスパート。かなり融けているところもあったが、ギリギリ雪を繋いで最後までスキーで下る。今朝の駐車地点に15:07到着。M崎さんと握手を交わす。 車を回収に五色温泉に向かったが、到着したのは午後4時を結構すぎていた。ダメもとで聞くと入浴可能とのこと。ありがたくゆっくりと汗を流させていただいた。長い距離を歩く場合やはり縦走は充実感がある。単独ではなかなか難しい縦走だが、相方がいれば可能性は広がる。あれこれ頭の中でルートを考えるのも面白い。なお、M崎さんはこれで3週連続で吾妻の20km超のロングルート(前の2回はピストンだが)を歩いたことになる。大平ルートと大沢ルートである。いやはや何とも凄い人だ。 GPSトラック
by torasan-819
| 2018-03-18 06:22
| 山スキー
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Comments(2)
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fck_mototyan at 2018-03-22 06:57
素晴らしいルートでした。個人的にはツアー看板も悶絶級でしたが、鎌沼氷上通過が印象深いです。もうアイゼン履いて担ぐ季節になったんですね。
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torasan-819 at 2018-03-22 21:17
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