2010年 11月 09日
=========================================================================== 山名 祝瓶山(1,417m) 山行期間 2010年11月7日(日) 山行形態 一般登山 山域 朝日連峰 地形図 羽前葉山 天候 快晴 参加者 単独 行程 祝瓶山荘9:04~桑住平分岐9:38~祝瓶山山頂11:18-12:21~赤鼻13:08~桑住平分岐13:55~祝瓶山荘14:41 行動時間 5時間37分 移動距離 約9.3km 累積標高差 約+1,010m -1,010m =========================================================================== 今年の5月GWに大朝日岳から南へと下る時、前方に小ぶりながら目立つ鋭鋒がありそれが祝瓶山だった。その時山名は既に知っていたが、実際にあれが祝瓶山だと特定して見るのは初めてだったように思う。その姿形からか惹かれるものがあり、今度は祝瓶山から大朝日岳を見てみたいと思ったのだった。しかし祝瓶山に行くきっかけも無いままに10月も過ぎようとしていたところ、バイクでも山でも大先輩のN田さんが祝瓶山に登ったことを知り、俄然登高意欲が湧いてきたのだった。どうせなら沢納めとして沢を詰めて山頂に立てないものかと考えた。しかし時は既に11月。つい先日は降雪があり、白く雪化粧となった山も多いゆえ沢などという物好きは見つからず、結局単独行での一般登山となった。 午前6時半過ぎに自宅を出る。昨夜は珍しく頭が重く疲れた感じがあったのだが、今朝は快調とは言えないまでも大丈夫のようだ。放射冷却もあり、途中の国道にあった気温計は2度だった。今日は祝瓶山荘から登るのだが、長井市街から山に向かっていくと、途中長井ダムの建設現場を通る。かなり大きなダムだが本体工事は完了し、来春からの本格運用となるらしい。県道252号は長いダムにより付け替えとなった新しいルートを登っていく。長井ダムからさらに7~8キロ走ると木地山ダムがあり、道はその先で未舗装の野川林道となる。木地山ダムからの祝瓶山は、その輪郭もキリッとしていて素晴らしい眺めだ。さらに6キロほど進めば祝瓶山荘だ。林道はさほど荒れてはいないが、それでも自分の車は車高が低いせいもあり何度も腹をぶつけてしまう。乗用車は注意した方がいいだろう。何台か下ってくる車とスライドしたがキノコ採りだろうか。 木地山ダム湖からの祝瓶山(左の鋭峰) 紅葉も鮮やか 祝瓶山荘(なぜか入口ドアが開けっ放し) 山荘前からの祝瓶山(ズーム) 板の外された吊り橋 ブナの原生林は保全区域となっている 祝瓶山荘には4台ほどの車があったが人影は見えず。他にも風力発電と太陽発電を備えた立派な小屋と、簡素な山小屋が2棟ある。祝瓶山荘には「長井山岳会」とあり、山岳会所有の小屋であろうと推察できた。近くに電話ボックスがあり何かと思えば登山届所だ。仰ぎ見る祝瓶山を目指して出発する。今日の足下は長靴だ。ほどなく野川に架かる吊り橋に出たが…板が無い!。傍らにあった長井市観光課の「告示」なる文を読むと、なんと昨日6日に板を外したとある。うかつだった。冬仕舞いのこの時期に吊り橋の板を外すのは当たり前のこと。水量の多い野川を渡るのはちょっと無理があるので、カニ歩きでワイヤーを伝って渡ることにした。おっかなびっくり長さ30mはあろうかという吊り橋を渡り終えひと安心。対岸に渡るとナラやブナの中をしばらく平坦な道が続く。男性5人パーティーとすれ違う。この時間に下ってくるとは昨夜はどこに泊まったのだろうか。野川本流の分岐を左に進み、桑住平の分岐を左に折れるとカナクラ沢、ヌルミ沢と続けて渡り尾根への取り付きへと向かう。登り始めるとすぐ、かなり急な細い尾根道が続くようになる。 ヌルミ沢を渡る 尾根道から山頂を仰ぐ 右手の尾根の紅葉と大玉山(画像右) 左足に古傷を持つ私だが今年はさらに何度か左足を痛めてしまい、古傷と相まって時折痛みのある状態が続いていた。大人しくしても治るものでもなく、このところだましだましの山行となっている。怪我で可動域が狭くなっている左足首は、勾配が急になるとつま先立ち加減で歩くようになり疲れやすい。しかし、それもこれもまた自分の個性のうちだ。足らぬところがあれば足らぬなりに歩けばいい。誰と比べるでもなく競うのでもなく、自分自身と対話しつつひたすら歩を進める山登りがこよなく好きなのだ。 ゴツゴツした岩肌の東壁 コカクナラ沢が突き上げる南側の稜線 尾根の向こうに白く左から袖朝日岳、西朝日岳、中岳、大朝日岳 左はコカクナラ沢、右はヌルミ沢に削られた細尾根は、両側の展望がすこぶるいい。11月上旬とはいえ快晴の今日は気温も上がってきている。出発時には3枚重ねの上半身も、いつしかTシャツ1枚なのだがそれでも汗を絞られる。高度を上げると右手の尾根の向こうに白く雪を被った稜線の一部が見えてくる。朝日連峰の主稜線だろうがどの山なのかまだわからない。急峻な尾根道はほとんど手を緩めることなく、厳しい勾配のまま山頂へと続いている。1000mを越えた頃、わずかだが先日の降雪の名残が現れてきた。口に含むとザラメ雪が渇いた喉に落ちていき実に美味い。見上げる祝瓶山東壁も近づくにつれ、切り立った衝立のように我が身に迫ってくるようだ。左右どちらの沢にせよ、山頂まで詰め上がるのは今の自分にとってはかなり厳しいだろうと思うが、さりとて登れなくもなさそうだ。来年の検討課題とする。 迫力のある東壁 赤ペイントが直登ルート 最後のひと登りは手も使う 雪の上に単独行の足跡を見つける。パターンから登山靴ではなく長靴でもないようだ。健脚らしく安定して歩幅も広い足跡を追いかけるようにして登っていく。山頂が近づくと土が無くなり岩稜になってくる。ルートは赤ペンキでマーキングされているのでそれに従う。岩は花崗岩でしっかりしているがスラブ状で大きな凹凸がないのがかえってスリリングだ。下を見れば吸い込まれそうな急斜面はあまり下りには使いたくない。左に回り込むようにトラバースすると一気に直登する。山頂直下はロープもあったが使わずよじ登ると山頂に飛び出た。 山頂にて(中央が大朝日岳) 飯豊連峰は霞んでいる 鷲ヶ巣山と中ノ岳が双耳峰のように見える(画像中央右) 山頂には先客が2人いた。挨拶をしてさっそく360度のパノラマを楽しむ。5月に祝瓶山を眺めた大朝日岳や西朝日岳の白くなった主稜線が一望だ。袖朝日岳の向こうには以東岳の頭も見えている。南を見れば霞んではいるが飯豊連峰、東に視線を移していけば吾妻の山々から蔵王連峰が一望だ。蔵王と比べると同じような標高でも朝日連峰の白さは際だっている。先客のうち同年配かと思われる男性は小国口から鈴振尾根で登ってきたとのこと。もう1人は青年だが私と同じルートで、地下足袋を履いていた。雪についていた足跡の主はこの青年だった。青年は地元の長井山岳会だというが若いのにいかにも山慣れた風情。それにしても登山靴に長靴そして地下足袋と三者三様の足下なのが面白い。青年から下でスライドした5人は桑住平で幕営したのだと聞き納得。風もなく穏やかな山頂だが汗が冷えると寒くなる。2枚着込んで昼食のラーメンをつくる。眺め最高の山頂レストランのランチタイムはついつい長引き1時間以上になった。三角点にあった板を見ると小学生の親子登山記念の板だった。小学生よりも父兄の方が大変だったろう。さてそろそろ下りようかという時、ご夫婦2人が鈴振尾根側から登ってきた。 北側へ下り振り返り見るとまた違う表情 赤鼻への分岐だが標柱も倒れていて分かりにくい(実際先月10/16にここで5人が下山方向を間違っての遭難騒ぎがあった) 大朝日岳へと続く稜線 仲むつまじいご夫婦と山頂に別れを告げ南側に下る。鈴振尾根への道だがほどなく分岐があり右へ折れ急斜面を下る。右手に祝瓶山の東壁へ一気に突き上げるカクナラ沢を見ながらヤセ尾根を下る。いったん鞍部に下りまた少し登ると赤鼻の分岐だ。そのまま登れば大玉山から平岩山を経て大朝日岳へ至るが、ここは右に折れて赤鼻尾根を桑住平へと下る。こちらもなかなかの急勾配だが、ロープやらクサリもあるので慎重に下ろう。急斜面が落ち着くとアカハナ沢を渡る。周囲は紅葉が進んだブナやナラの天然林。いるだけで自然と気持ちの良くなる心地よい空間だ。しかし近年ブナ枯れやナラ枯れが増えているという。 ブナ林から透かし見る祝瓶山 眩いばかりの森の中 祝瓶山荘と立派なダム管理用らしい小屋、手前の2棟は個人の小屋らしい トップの画像と同じ場所から 今朝通った桑住平の分岐を過ぎると祝瓶山荘も近い。また吊り橋をカニ歩きで渡るが、川の流れを眼下に1本のワイヤーに足を乗せて歩くのはあまり気持ちの良いものではない。祝瓶山荘前の水場で喉をうるおしていると山頂で会った青年が到着。ナメコを少々採ってきたという。聞けば祝瓶山荘は長井山岳会に連絡すれば1人千円で貸してもらえるとのこと。昨夜彼らは吊り橋の板を外す作業の後、山荘でキノコ鍋パーティーだったようだ。24歳のこの青年は地元の山に登ることが好きなのだという。歴史の古い山岳会のようだが、若き人材も育っているようだ。帰路はまた長い山道だが、この時間から何しに登ってくるものか上ってくる車が数台あった。木地山ダムからの祝瓶山はシルエットとなり、静かな湖面に姿を写していた。長井ダム周辺では晩秋の紅葉を楽しみつつ祝瓶山に別れを告げた。 気になっていた祝瓶山に何とか年内に登ることができた。標高が1400m程度とは思えない風格があり、変化に富み魅力のある山であり、自分にとってまた登りたい山のひとつとなった。次回は小国口から鈴振尾根を登ろうか、沢登りで山頂を目指そうかあれこれ考えるのも楽しいものだ。 ※N田さんが祝瓶山に登ったのが私の2週間前。同じコースなので同じようなアングルの画像が多く、2週間の変化がよくわかる。N田さんの記事「東北のマッターホルン」をどうぞ。 ※たった1日の山行だったが、今こうやって記録をまとめながら振り返っても味わい深いいい山旅だった。久しぶりに満たされた気持ちになれた山旅だった。 ルート図
by torasan-819
| 2010-11-09 00:43
| 山
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Comments(14)
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yossy1904 at 2010-11-10 18:43
大朝日の山頂から祝瓶山を見ると、次はあそこに行こうという気分になりますね。
私も年内に行きたかったのですが、来年にお預けになりそうです。 ところで紅葉の写真がとても綺麗です。 週末は私も山に行っておりましたが、登山口周辺の紅葉が真っ盛りでしたね。
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マロ7
at 2010-11-10 19:26
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lc4adv at 2010-11-10 21:29
紅葉がほんときれいです。自分は1週間早かったようですね。
沢で転んでカメラが故障、トラさんの画像で思い出せました。ありがとうございます。 標高の割には登り、下り共楽しめる貴重な山だと感じました。 来春は釣りでも訪れたいと思います。
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torasan-819 at 2010-11-11 00:10
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torasan-819 at 2010-11-11 00:16
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torasan-819 at 2010-11-11 00:20
lc4advさん
紅葉のタイミングは難しいです。 この辺りは山菜にイワナ釣りにキノコ採りが楽しめるエリアですね。 毎年春と秋に山荘に泊まっての祝瓶山市民登山があるようです。 長井山岳会と岳人長井の方々が山菜とキノコを振る舞ってくれるようなので参加するのもイイかなと思ってます。
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NON
at 2010-11-11 00:25
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加ト幹事長
at 2010-11-11 15:27
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utinopetika2 at 2010-11-11 16:30
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torasan-819 at 2010-11-11 20:45
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torasan-819 at 2010-11-11 20:47
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torasan-819 at 2010-11-11 20:49
祝瓶でしたかぁ!すっごくいいんですね♪
大朝日から見ていつも気になっていて、いつかはと思っていたんですけど、このタイミング絶妙。昨日蔵王から見たらまだ雪を被っていなかったのでまだ行けるかな… 来シーズンこそ行くぞぉ。
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torasan-819 at 2010-11-23 07:15
Tobyさん
やはり大朝日から眺めて気になってましたか。 であれば祝瓶山に登るしかないですね(笑) まだ登れるかとは思いますが雪を被ると長井側からは危険なので小国側からになるでしょうか。 やはり来年残雪期の天気の良い日に登って大朝日を眺めるのがいいかもしれませんね。 |
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