2011年 05月 17日
====================================================================== 山域山名 飯豊連峰 門内沢 門内岳(1,887m) 山行期間 2011年5月15日(日) 山行形態 山スキー 地形図 長者原・飯豊山 天候 晴れ 参加者 2人(L:トラ山、加○さん) 行程 梅花皮荘5:39~飯豊山荘6:36~温身平6:59~雪渓末端8:10-8:22~石転ビノ出合9:03~門内岳12:13~ 門内小屋12:25-12:57~石転ビノ出合13:22~雪渓末端13:29-13:43~温身平14:47~飯豊山荘15:11~ 梅花皮荘16:15 行動時間 10時間36分 移動距離 26.1km (徒歩分含む) 累積標高差 +2,182m -2,182m (徒歩分含む) ====================================================================== 15日は鳥海山に行こうと考えていたが、天気の回復が遅れている。この時期に獅子ヶ鼻から千蛇谷を登ろうという、ちょっと厳しそうなルートを予定していたのだが、朝方は雨が残りそうで気温も上がらないという予報に迷いが出た。結局天気予報に従い、好天の約束された飯豊連峰に向かうことにしたのは山行前夜だった。飯豊の山スキーは、昨年16日に門内沢を滑っている。今回は石転び沢を滑ろうと思い慌ただしく計画書を作成した。短い仮眠しかしていないが、午前3時に目覚まし時計で叩き起こされる。すぐ車を出して加○さんを乗せると飯豊へと向かった。午前4時を過ぎると空が少しずつ明るくなってくる。梅花皮荘には5:10頃到着。一般利用者の邪魔にならないよう駐車場の手前の方に車を止める。既に釣りか山か分からないが数台の車が止まっている。準備をしていると見覚えのある車が側に止まった。蔵王仙人さんだ。やはり山スキーで、石転び沢か門内沢かは登ってから決めるという。 除雪の終わった道を歩く スキーを担いで5:39にスタート。ごうごうと流れる玉川に架かる吊り橋を渡り道に出る。玉川沿いのこの道はまだ冬季通行止めでゲートが閉まっている。車で飯豊山荘まで行くことが出来ないので、昨年は自転車を車に積んでいったのだが、今年は歩くことにした。飯豊山荘までの道のりを、加○さんはテレマークブーツのままで、自分は長靴で歩く。道は既に除雪が終わっていて車も走れる状況だが、ガードロープ等の安全施設の整備がまだなので、その設置が終わるまでは通行止めということだろう。斜面の雪が落ちきっていない箇所もあるので、雪のブロックが落ちてくる可能性もある。町の情報によると、今年は例年より遅く6月上旬開通のようだ。 湯沢に架かる橋のゲート 温身平より梅花皮岳と烏帽子岳 雪渓を歩く 飯豊山荘までの約4.5kmを1時間弱で歩く。湯沢の橋を渡り気持ちの良い新緑のブナ林を約1.6キロ歩くとやっと温見平(ぬくみだいら)の表示板のあるところだ。昨年はここまで自転車で47分だったが、今年は徒歩なので80分かかった。どちらが良いかは考え方次第だろう。この場所からは梅花皮岳がよく見える。ここから先は残雪歩きが多くなる。砂防ダム脇の階段を登った先からがいよいよ登山道になる。梅花皮沢の左岸に沿って付いている登山道は残雪で見え隠れし、ともすれば見失いそうになるので、先をよく見て踏み跡や赤布を探しながら歩く。前方にスキーを担いだ単独行者を発見。追いつくと女性であった。単身で門内沢を滑る予定だという。なんとアクティブな女性だろう。 婆マクレのトラバース(後方は単独女性) 地竹原の手前でいったん沢に下りる ここからスキーで歩く 雪面は比較的フラットで歩きやすい 婆マクレという急斜面では緊張のトラバース。ここは崩れて道形がほとんど無くなっている。加○さんのテレブーツはこんな場所では分が悪い。滑落に注意して慎重に通過する。地竹原を過ぎたところで梅花皮沢の雪渓に乗る。やれやれやっとスキーで登ることが出来る。梅花皮荘からここまでで9km近い歩きだ。このアプローチの長さがあるからこそ、この時期に滑りにくる者は少ない。先ほどの女性はテレマーカーで、さっさと準備をして登っていく。自分はここに長靴をデポしてブーツに履き替える。今日は快晴で、スキーでの雪渓歩きも軽快だ。いま足下の雪渓の下では、雪解け水がごうごうと流れているのであろうが、聞こえるのは自分の歩く音だけだ。 梶川出合 石転ビノ出合 石転び沢の土砂流出とデブリの状況 門内沢の斜面崩壊箇所 快晴の雪渓を登る 石転ビノ出合で休憩。ここは門内沢と石転ビ沢が出会う場所で、見上げる左の沢が石転ビ沢、右の沢が門内沢だ。これから登ろうとする石転び沢を見上げると、沢の中ほどが茶色くなっている。左岸の斜面が崩れて沢に土砂が流れたようだ。デブリも見える。雪渓の左端を通れそうだが落石の不安もある。右の門内沢を見上げると、中ほどから上は見えないものの、この位置から見える範囲では石転び沢より状態はいいようだ。悩んだが予定を変更して門内沢を登ることにする。石転ビノ出合から少し登ってさらに確認しながら、山岳会にルート変更の連絡を入れる。飯豊もこの辺りまで登ると、なんとか携帯(docomo)が使えるので助かる。しかし、この選択はあまり賢くなかったことを後で知ることになる。石転ビノ出合から稜線までは約1000mの標高差があり、沢の雪渓で一気に上り詰めることになる。ゆえに登りは厳しく体力勝負になるが、下りのダイナミックな滑降の魅力がそれに耐えさせてくれる。 沢を横切る流出土砂 あちこち落石が転がっている 門内沢を登っていくと、両側の斜面で雪崩があちこち発生していて、沢の中央までデブリが落ちてきているのが目に入る。雪だけでなく斜面の一部も崩壊し、土砂や岩まで雪渓の上を流れている。いやはやこれは石転ビ沢より状態が悪いかもしれない。しかも斜面の雪には多くのクラックが入っていて不気味だ。3月の地震の影響もあるのだろうか。他の山でも例年にはなく、多くのクラックが入っているのが確認されている。休憩しながら斜面を見上げてどうしようか考えてしまう。石転ビノ出合で抜いてきた単独女性が、休まずそのまま登っていく。確かに悠長に休んでいる場合ではないようだ。突然「ラーク!」と上から声がする。顔を上げるとサッカーボール大の落石が転がり落ちてくる。我々はラインから外れていたので、そのまま動かずしかし目は離さずに落石の行方を追った。雪渓の落石は恐い。静かにしかし凄い勢いで落ちてくる。その後我々は、さらに2回落石に襲われることになる。最後の落石は危なかった。50センチはあろうかという落石が落ちてきて、そのラインを目で追うと、20mほど下にいる加○さんに真っ直ぐ向かうように見えた。「ラーク!ラーク!」と大声で叫ぶ。加○さんは落石を見据えて動かない。早く逃げろと思ったのと、加○さんが間一髪体をかわし、落石が加○さんの足をかすめるように落ちていったのが同時だった。加○さんは落石の方向を見極めて体をかわしたようだが、見ている方はかなり冷や冷やしてしまった。 高度感のある登り 青空に向かってのキツイ登高 その後は上方と左右に、忙しく注意を払いながらの登高がつづく。高度を上げると雪も締まってきたのかデブリも少なくなってきた。しかし、沢の左岸側をかなり稜線に近い位置から土砂が走った跡があり、予断は許せない状況が続く。いよいよ勾配が急になってくるとシールでの直登は出来なくなり、電光形にジグを切って登ることになる。しかし、くだんの単独女性はシールの効きが良いのか技術が優れているのか、我々より浅い角度でジグを切りどんどん登っていく。急な登りになれば追いつくだろうと考えていたのだが、逆にどんどん離されるばかりだ。表面の雪はシャーベット状で、滑落の心配はあまりないが、それでもシールが滑るときがあり一瞬ヒヤッとする。ずっと下まで一望できる急斜面は高度感が凄く、一歩一歩登っていくときのぞくぞくする緊張感がなんともいえない。左手には梅花皮岳も見えてきた。門内岳も近いはずだが、山頂手前の急斜面のせいで見ることが出来ない。昨年は見えた門内小屋の屋根も、今年は雪の溜まりかたが違うのかまだ見えない。単独女性は左寄りのラインで登っていったようだが、こちらは右寄りのラインで登っていく。 稜線に出る(手前から北股岳、梅花皮岳、飯豊本山) 門内小屋 最後の急斜面の肩を斜に登ると、門内岳の山頂がすぐそこだった。今年も山頂までシール登高が出来た。西側には二王子岳が見える。加○さんが登ってくるのを待って門内小屋に移動すると、単独女性が休憩中だった。話しをすると新潟山岳会とのこと。門内岳を滑りたくて単身飯豊に来たという。意欲、体力、技術ともに充実しているようだ。またどこかの山で会いたいものだ。ところで門内小屋の入口扉の窓が破れていた。そのため中に入った雪が固まって扉が内側に開かず、小屋の中で休憩することが出来なかった。 小屋前から滑降開始 爽快な滑降が続く 吸い込まれるような斜面の滑降 デブリと石を避けながら さて待望の滑降だ。昨年は滑り出しがガスっていたこともありかなり緊張したが、快晴の今年は心地よい緊張感で斜面に挑める自分がいる。柔らかいザラメ状の雪は滑りやすく、下界に飛び込んでいくような感覚でのターンが続く。一気に滑り降りるにはもったいないしその脚力もないので、何度も止まって互いに写真を撮りながら滑降する。単独女性は別なラインで先行し、瞬く間に石転ビノ出合まで滑り降りてしまった。門内沢の上の方はいいのだが、中段まで降りるとデブリや石が増えてくる。スキーで石を踏んでしまうので注意が必要だ。石転ビノ出合までの標高差1000mの滑降を楽しみ、滑ってきた門内沢を見上げる。石転ビノ出合から下は勾配も緩くなり、スキーを流しながら雪渓末端まで滑る。長靴に履き替えスキーを担ぐと、石転ビ沢から蔵王仙人さんが降りてきた。話しをすると今日のコンディションは、やはり門内沢の方が良くなかったようだ。 梅花皮沢が口を開ける 井上さんと竹爺さん イワウチワ 温身平のブナ林 下山は再びの長い歩きだ。婆マクレを無事通過した先の雪渓で、ツボ足の男性2名に追いつかれる。あれっどこかで見かけた顔だなと思ったら、飯豊朝日連峰の登山者情報の井上さんと竹爺さんだった。門内沢のデブリや落石のことを話したら、今年の飯豊は雪が柔らかく、今までにない状況があちこちに見られるという。さすがにこの2人は足が速く、我々の先になるとたちまち見えなくなってしまった。以降、温身平、飯豊山荘とひたすら足を運ぶ。お土産に道の脇でフキノトウやタラノメを採り、梅花皮荘に着いたのは16:15だった。ほどなく蔵王仙人さんも到着。結局今日温身平から飯豊に入ったのは、山スキーが4人とツボ足2人だったようだ。昨年より短かったとはいえ、10時間を超える行動を無事終えた余韻と充実感が自分を満たす。石転ビ沢を滑らなかったのは残念だが、また飯豊に来る理由が出来たというものだ。残雪の飯豊が見える梅花皮荘の温泉で汗を流し、さっぱりしてから帰路についた。 ルート図(加○さん提供データによる) 赤:登り 青:下り
by torasan-819
| 2011-05-17 20:44
| 山スキー
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Comments(18)
わぉ!石転び沢・門内沢!
やっぱすごい。高度感といい落石・落雪・雪崩、もうフルコースですね。でもそれをさっ引いてもおつりがたっぷり来る絶景♪ しかも主稜線が丸見えなんて言うことナシですね。いいなぁ。
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torasan-819 at 2011-05-19 12:38
うひょ!いいんですか?チョー足手まといかもしれませんけど…
ぜひお願いします。
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torasan-819 at 2011-05-19 21:20
Tobyさん
いえいえTobyさんなら問題ないと思います。 あの大朝日岳の東斜面と同程度の傾斜と考えてもらえばいいかと。 夏に一度登ってみるのもいいかもしれません。 アイゼン・ピッケルは必携ですが。
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lc4adv at 2011-05-20 02:10
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torasan-819 at 2011-05-20 05:50
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utinopetika2 at 2011-05-20 19:25
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torasan-819 at 2011-05-20 21:29
せいださん
ブログ拝見しましたが、毎年の石転び沢や門内沢の記録は、私の方こそ参考にさせていただきます。 上部は斜面の状態もまずまずなので、今週末はまだ滑り頃ではないでしょうか。 中段以降は結構荒れてますが、どのみち美味しいところが終わった後なので消化試合のようなものですし。
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torasan-819 at 2011-05-20 21:30
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leviathan05 at 2011-05-21 00:30
今年も飯豊を楽しんでいますね。このダイナミックな景色はいつ見ても素晴らしいです。(^O^)
torasan-819 さんが門内の小屋にいるころ、私はニ王子岳から飯豊を眺めてました。 後日、写真の整理が出来てからUPしたいと思います。 (ーー;)
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torasan-819 at 2011-05-21 10:41
leviathan05さん
飯豊はどの季節に登っても圧倒される眺めです。 >門内の小屋にいるころ、私はニ王子岳から飯豊を眺めてました。 ということは見つめ合っていたというわけですね(笑) 今度は新潟側からも登ってみたいと思っています。
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torasan-819 at 2011-05-21 10:50
NONさん
>私には一生無理だわ とかいって来年は山スキーで飯豊に登ってたりして(^。=) NONさんにその気があれば絶対できますよ。 >飯豊行きたい、紅葉の縦走が夢です。 はい実現しましょう! ていうか私も紅葉の飯豊は登ったことありませんが(笑) 9月下旬~10月上旬ですよ~
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yossy1904 at 2011-05-23 21:58
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torasan-819 at 2011-05-23 22:24
yossy1904さん
門内沢や石転び沢はやはり格別です。 長いアプローチをひたすら歩き、白馬大雪渓にも勝る標高差を登ってやっと得られる滑降ですから。 実は今年は飯豊の別な沢を考えていたのですが、大震災で時機を逸してしまいました。 来年の課題ですが、年齢との戦いでもあります(笑) 是非来年ご一緒しましょう飯豊の沢に。
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はる
at 2011-05-25 20:45
x
こんばんは。門内沢でお会いしました単独のテレマーカー女子です!
偶然、こちらを発見して 「わっ!あの時のスキーヤーの方だぁ~」って感激してます。 門内沢、上部はとっても気持ちよかったですね あの感覚を味わってしまうと、バックカントリーはやめられません♪ 本当にまたどこかの山ででお会いしたいですね またいろいろ楽しいお話聞かせてください。
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torasan-819 at 2011-05-26 21:03
はるさん
おお~あのお方ですか!こちらこそ感激です。 私などはスキーは下手の横好きでして、本来門内沢など滑れるような技量もないのですが、あの醍醐味を味わいたくて急斜面にビビリながらも登ってしまうんですね。 はるさんは飯豊にも結構登られているようなので、そのうちまたお会いできるような気がします。 それまでについていけるよう鍛え直しておきますので。(^O^) |
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