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2012年 03月 19日
![]() 山域山名 吾妻連峰 吾妻山 五色沼(1,810m) 山行期間 2012年3月11日(日) 山行形態 山スキー 天候 晴れのち曇り 参加者 2名(L:佐○さん、トラ山) 行程 福島7:30=除雪ゲート前7:10-7:24~スカイライン横断8:27~水飲場8:41~山鳥山9:37-9:48~井戸溝10:17~ 慶応吾妻山荘分岐10:41-10:45~大根森11:14~五色沼・大岩11:40~ガンチャン落とし上部11:57-12:15~ 家形山避難小屋12:27-12:48~東海大緑樹山荘14:52-14:58~四郎右ェ門沢横断16:20~1077mとのコル18:14~ 五色温泉20:07 行動時間 12時間43分 移動距離 15.9km (GPS計測) 累積標高差 +1,287m -1,315m (カシミール計測) ====================================================================== 前編より続く 呼びかけた声に反応がない。正直焦った。再度呼ぶとやっと声が返ってきた。大丈夫か確認すると、ケガもなく穴にも落ちなかったようだ。ホッと胸をなで下ろす。ケガをしていたらなどど、いろいろなことが脳裏をよぎったがともかくひと安心。佐○さんがスキー1本を持ち、キックステップで登り返してくる。こちらはスキー3本を持ち先行して登る。勾配が緩くなったところでひと息つき、和○さんに無線で状況報告をする。さらに上へと登山道の辺りまで登る。沢からだと100m近く上がったので佐○さんはキツかっただろう。登り上げて一息つくと時刻は14:25。このルートミスで1時間近くロスしてしまったようだ。しかし、計画にはかなり余裕を持たせていた(と思っていた)ので、この後にミスしなければ大丈夫だろうと、まだこの時は考えていた。しかしその考えは甘かったことを、やがて思い知ることになる。 ツアールートを示す黄色のプレートは福島登高会で付けたもの ![]() 東海大緑樹山荘への斜面を滑る佐○さん ![]() 雪に閉じこめられた東海大学緑樹山荘 ![]() 100mほど斜面を北へトラバースしてから、右へ90度近く転進し斜面なりに滑る。この斜面はほどよい斜度で、重い雪でもそこそこスキーは走ってくれた。ところどころに古いツアー標識らしいものが見つかる。しかし、それらの標識は欠落しているようで疎らなので、次もあるだろうと当てにして進むのは危険だ。東海大学緑樹山荘(旧青木小屋)を探すが見あたらない。おかしいなと思ったら、やっと黒っぽい壁が見えた。大雪で建物は一部しか見えなくなっていたのだ。ちなみにこの山荘は大学専用であり鍵がかかっているので、避難小屋としては使えない。やれやれと休憩し時計を確認すると14:52。予定では13:30だが、この時刻でこの遅れはかなり厳しい。地形図を見ても、五色温泉はまだまだ先だ。ガンチャン落とし~五色温泉の行程のまだ3分の1しか来ていない。明日は仕事なので、遅れればビバークもたまにはいいさというわけにはいかないのだ。さあ先を急ごう。 古いツアー標識と思われる ![]() この斜面も上から滑るのではなく左から右のトラバースだ ![]() 四郎右ェ門沢を挟んで高倉山を望む ![]() 辛うじて見える単管パイプを目印に左の登山道に折れる(昨年11月と比較) ![]() 緑樹山荘からは左の沢を越え、とにかくトラバースに継ぐトラバースだ。気を抜いて斜面にまかせて滑ってしまうとたちまちルートより下がってしまう。地形図ではわずかに高度を下げる方向に進んでいるようでも、実際はほぼ平坦時々登りという感じだ。今日のように重い新雪ではかなり足にくる。疲れてくるとつい自分に甘くなり滑りたくなってしまうが、それはぐっと我慢の子だ。ずっとトップでラッセルし雪を踏み続けているが、まだ足は大丈夫だ闘えるぞ!と自分に気合いを入れる。やがて明瞭な沢が現れ階段登高で左岸を越える15:21。この沢は蟹ヶ沢の上流支沢で、福島と山形の県境となっている。沢を越えさらにトラバースし続け何本かの小沢を越える。後で確認すると、ここは1kmで標高差50mしかなかった。やがて前方に高倉山とそれに連なる尾根が見えてきた。既に日は傾き、高倉山の左肩向こうに落ちようとしている。いったん四郎右ェ門沢に下りてから対岸を登り返すと、にわかにガスがかかってきた。辺りは白くそして少し暗くなってきた。林道を100mほど下りたところで左に入り、登山道沿いに歩く。ここは昨年歩いているのでわかっているが、そうでなければかなり分かり難いところ。林道を下りすぎるとルートに戻るのが困難になってしまう。とはいってもスキーにシール、地形図にコンパスと時間、そして体力があれば、五色温泉までは様々なルートを取ることが可能だ。無数のラインの中から、より効率的なラインがルートとして固定されただけのことだ。山スキーの魅力は、白いカンバスに自分なりのラインを描けることにもある。高倉山へは慶応ルート、立教ルートという、大学山岳部華やかりし頃のルートがあったらしいが、それも彼らがそこを歩きそう名付けたからのこと。自分もいつかどこかの山に自分なりのルートを拓きたいものだ。 このツアー標識も何十年前のものだろうか ![]() === この後はまったく余裕が無くなったことと暗くなったことで画像がほとんど無い。 === 片斜面を高度を落とさないようにトラバースを続ける。締まった雪ならそれでも滑ることができるのだが、今日の雪では浅いとはいえラッセルが続き、スキーは滑る道具ではなく歩く道具となりきっている。山スキーが今ほど滑降重視ではなく、登山形態のひとつとしての山スキーであった時代ならではのルートといえるのだろう。たまに見かける古いツアー標識が往時を偲ばせるが、この標識はいったい何十年前のものなのだろうか。そんなことを考えながらも、薄暗くなりゆく山中でこの先のヘッデン行動を覚悟していた。五色温泉に下りるには、1077ピーク南西のコル手前を少し登って越えてから下るようになる。ここで2009年はシール登高したようだが、シールを貼る手間をきらい等高線沿いに左回りに回り込もうとした。ところが重い雪になかなか回り込めず高度を上げられない。結局疲れてシールを付けるしかなくなり、ついでにヘッデンも点けることにした17:50。再び歩きだしたものの、シールで容易に登れることもあり、つい左回りに登り始めてしまった。それまで片斜面を常に右に下がらないよう、左へ左へと意識して歩いてきたことが影響したように思う。あれ?おかしいなと思いGPSで確認すると軌跡が輪を描いている。これはどうしたことかと一瞬頭が混乱したが、落ち着いて考えると、リングワンダリングをやってしまったことに気付く。これには疲れているところさらにガックリと疲れた。ここで約20分のロスとなってしまった。気を取り直し方向修正。 暗闇に浮かぶ五色温泉の明かり ![]() 暗い中ぼんやりと見えるコルへ向かうと、10分とかからずコルの頂部に到着18:14。ここから五色温泉までは残り約1kmしかなく、平均斜度15度の快適な滑りができるはずだった。しかし、辺りは既に真っ暗でヘッデンだけが頼り。小さな照射範囲ではおそるおそる滑るしかない。シールを付けたまま下りることにする。方向はわかっても、うねりや小沢を越えるのに時間がかかる。あと少しなのだが思うように進めないのがもどかしい。途中で佐○さんのシールトラブルも発生するなど難儀する。林道とおぼしきところまで下り、30分ほど歩いてようやく、暗闇の中に浮かぶ宿の明かりが見えたときは本当にホッとした。やれやれやっと到着したと時計を見ると20:07。宿のご主人だろうか、こんな時間にヘッデンを点けて突然現れた我々に、どうしたのかと声をかけてくれたので、ツアーコースを下ってきたのだと答える。宿の前では和○さんが待ってくれていた。長時間の待機にさせてしまい申し訳なかったと同時に感謝感謝である。1077mとのコルからは条件が良ければ、15分ほどで五色温泉まで下りられると思うが、今日はなんと2時間近くもかかってしまったことになる。 今回の山スキーは様々な反省点がある。一番はルートファインディングの問題。地形図とGPSがありながら簡単にルートを外してしまった。次にシールを付けるタイミングが上手く計れていないこと。もっと早く付けていればと思うことが何度かあった。いずれにしても自分はまだまだ未熟であるということだ。1077mとのコルまでにルートミスなどで失った時間は約1時間20分。ルートミスがなければ、1077mとのコルを17時頃通過できた可能性が高い。そうすればまだ明るいうちに五色温泉まで下りられただろう。それでもギリギリではあるのだが。2009年に和○さん達が下ったときはどうだろう。家形山避難小屋を出てから五色温泉まで3時間45分かかっている。しかも記録では45分ほどロスしているとある。つまりベストのルートで下りられれば3時間で下りることも可能らしい。しかし我々は7時間19分かかった。ルートミスと夜間行動で失った時間を約3時間とすれば、ベストのルートを取ったとしても4時間以上はかかったことになる。やはりスキーが走らなかった影響は大きい。なにはともあれ、今日中に無事帰還出来たことを素直に喜ぼう。汗が冷えて寒くなった体を車のヒーターで温めながら帰宅したのは午後10時半だった。 =後日の回想= 今日もまた酒を飲みながら、ひとり静かに回想の波間を漂っている。今回このクラシックルートをどことなく「滑る」イメージで臨んだのは誤りだったかもしれない。このルートはまさしく正統な山スキーの「ツアールート」なのだ。冬山登山のひとつの形態であり、スキーを利用して縦走するのがこのルートの本来のあり方なのだ。五色温泉を出発点にしてこのルートを登っていけば、緩斜面も楽しい縦走路というわけだ。もちろん今回のように下るのもひとつのやり方だが、雪の状態とルートファインディングに注意しなければ、距離があるだけに我々のように思わぬ時間がかかることもあるだろう。しかし、条件が悪くなければ中級ルートと言えるのかもしれない。今回のブログ記事を読んで、行きたいと思う人とそうでない人、様々だろうができれば是非自分で歩いてもらいたいと思う。ネットで情報のあふれた定番のルートはいくらでもあるが、歴史のあるクラシックルートにはそのルートならではの感動があるはずだからだ。そんなこんなをつらつら考えていると、もう1世紀近くになろうという昔にこのルートを歩いていた人達の姿が、見たはずもないのにありありとイメージされ浮かんでくるのである。当時の人達と今の我々を重ね合わせるのはおこがましいが、彼と我の見る山の姿はほとんど変わっていないだろう。変わったのは人であり時代だ。まして昨年は大震災と原発事故という未曾有の出来事があった。しかし山は、特に福島の山々は、ただそこに在り静かにたたずんでいる。人の営みがいかに小さいか、そして時には恐ろしく愚かだということを山は静かに語りかけてくれる。我々は謙虚に生きることの大切さを、山から学ぶこともできるはずだ。そんなことも考えながら、今日もまたひとりもの思いにふけるのだ。 ルート図(赤:登り 青:下り) ![]()
by torasan-819
| 2012-03-19 05:19
| 山スキー
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Comments(16)
山の姿はほとんど変わっていないだろう。変わったのは人であり時代だ。
ほんとにそう思います。 夢中で読みました。山はいつも条件が異なり、誰にでも厳しくもあり優しくもあり、大自然に入るには装備も心も備えを十分にですね。 無事帰還でなによりです。
0
ranger3yujiさん
もう少し何か条件が悪ければフォレストビバークだったかもしれません。 自分のいる位置と残りの距離を把握していたので下山出来ましたが、暗闇でのスキーはあまり面白くありません(笑) おっしゃるとおり十分な装備は必要ですね。 「その時」はいつ来るのかわかりませんから。
平成6年の吾妻山遭難を思い出しました。
ご無事で何よりでした クラシックルートは感想のとおり 正に、スキーが冬山登山の時代の歩く道具 の時代のコースだと思います。 ラッセルの連続で、よく体力が続きましたね。 脱帽です。
格段に変わったのは道具なんだろうけど、それに反比例して人の気持ちと体力がユルく(傲慢?)なってしまったかな、便利な分。
でも、行ってたら間違いなく死んでたネ、俺。つーかみんなを道連れにしてたな(恐)。。
煙突おじさんさん
平成6年の遭難は結構知られていますね。 先月の「山渓」にも載ってましたし。 ワタクシもよく行く吾妻山での大量遭難ということで、以前から興味があり資料を読んだりしていました。 ラッセルはそれほど深雪ではなかったので何とかなったという感じです。 ワタクシ大概の山行では根を上げないのですが、さすがにこの日はきつかったです。 限界寸前でした。
加ト幹事長さん
確かに道具は進歩してますね。 昔は木の単板の板に竹のストック、靴はもちろん革でアザラシのシールを貼るという感じでしょうか。 スキーに限らず道具の進歩とともに失ったものもあるでしょうが、逆に可能性が広がったこともありますしね。 その時代その時代で生きていくしかないんですよ。 ところで今度はもっとユルいの計画しますから是非ご参加を。 それまでに鋼の腰回りにしてください(笑) たとえば鳥海山の中島台ルートとかいかがですか~
真っ暗な山を山スキーなんてぞっとします。無事で良かったですね。
等高線を見ると難しいルートですね。 我々(もう35年前?)の頃は高湯~家形山のピストンだけでした。五色は考えなかったです。 来年もアドベンチャーなレポート、期待しています。
lc4advさん
ヘッデンがあるので周囲が少しだけ見えましたし、もう少しで到着する見込みがあったので割りと大丈夫でした。 このルートはルートファインディングがちょっと難しいのですが、スノーシューで歩いても面白いかな。 当時はやはりスキーの機動力がなければなかなか踏み込めないのが、五色温泉からのルートだったと思います。 アドベンチャーなルートではないはずなのですが(笑) レポートを少々盛り上げて書いているのでそんな印象になったかもしれませんね。 ロングルートに魅力を感じているので、今回以上のロングに挑戦したいです。
闇夜でスキーとは貴重な体験ですね、
硯石~不忘、標高差1000mの単独ラッセルが今回生かされてますね 3月、調査で、馬の神、水引入道、不忘、へ何度も足を運びましたが、今年は特に日替わりで雪質の変化が激しいです、モナカ雪で背負ったまま、下ったポーダーさんもいました、 シートなので笑い話しで済みますが、ロングだったら、ビバークですね
ナマステさん
「闇夜でスキー」ん~なんか言葉の響きがいいですね(笑) 今年の雪はドカドカッと降ったり、3月も中途半端に降るものだから難しいですね。 たまたま良い条件で滑れた人は運が良かったということでしょう。 モナカだろうがアイスバーンだろうがシュカブラだろうが関係なく思うように滑ることができたらと思いますが、それはありえませんね。
この時期、二桁行動時間は辛いですわな、いくら精力、いやぁ、体力絶倫、いやぁ、体力抜群なトラさんでもね。
”レポートを少々盛り上げてる”・・・少々じゃないでしょう、可也でしょう(^_^;) |
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