この本は、長野県警察山岳遭難救助隊の現役隊員やOB計37人の手記をまとめたものだ。これまでも救助隊員の手記の出版物は発刊されていて、自分も何冊か読んでいるが、この本は昨年出版されたもので、この手の本としては一番新しいものだろう。救助する側からの視点ではあるが、現代の山事情が透けて見える。手記を書いている隊員の年齢も若い人が多い。読んでみると、救助隊に憧れて入った人が結構いることに気付く。現実には凄惨な遭難現場もあるだろうが、現実と向き合ってひたすら救助に専念する。しかし、やはり彼らも人の子で様々な思いもあるようだ。救助作業の最中に事切れる遭難者を目の当たりにする隊員の気持ちはいかばかりだろうか。出版にあたりあまりストレートな表現は避けられているが、文章からにじみ出てくるものがある。いずれにしても、彼らに共通するのは「家族の元に帰してあげたい」という思いだ。女性隊員の手記もあり読んでいて興味深い。今は女性隊員がいないということだが、女性ならではの細やかな気配りが役に立つ場面もあるはずなので、復活してもらいたいと思う。我ら登山者としては彼らの思いを胸に、山に向き合いたいものだと思う。