2013年 05月 28日
石転び沢の雪渓は積雪量の豊富な飯豊連峰においても、長大で標高差も大きく規模の大きな雪渓だ。スキー登高の開始地点からなら、延長3.8km、標高差1,200m。石転ビの出合からでも、延長2.5km、標高差1,000mとなる。自分は日本3大雪渓の白馬・針ノ木・剱沢のいずれにも行ったことが無いのでわからないが、なんら引けを取らないどころかそれ以上と言う人もいる。石転び沢は石転ビの出合で門内沢と合わせるが、山スキーを始めた3年前から毎シーズン、どちらかの沢に登ってきた。今年も石転び沢へと思い声をかけたら、3人が手を上げてくれた。3人とも石転び沢は初めてとなる。今年は幸運なことに、飯豊山荘までの道が5/24の午後に開通したという情報が入った。いつもは梅花皮荘から飯豊山荘までの約5kmは、徒歩か自転車での移動となる。往復約10kmが軽減されるのは嬉しい。このことにより生じる余裕で、以前から気になっていた北股沢かホン石転び沢の調査、条件が良ければ滑ってみようと考えた。 ================================================================================ 山域山名 飯豊山 北股岳(2,024.9m) 山行期間 2013年5月26日(日) 山行形態 山スキー 天候 曇りのち晴れ 参加者 4人(L:トラ山・加○さん・sharizakaさん・KIYOさん) 行程 駐車場6:03~温身平6:26~靴デポ地点(640m)7:34-7:50~石転ビノ出合8:24-8:33~1560m地点9:57-10:21~ 梅花皮小屋10:57-11:15~北股岳11:37-11:46~滑降地点11:51~石転び沢(1530m)11:58-12:05~ 梅花皮小屋12:45-13:34~石転ビノ出合14:00~靴デポ地点14:08-14:24~温身平15:41~駐車場16:05 行動時間 10時間2分 移動距離 18.4km (参考値) 累積標高差 ±2,330m (参考値) ================================================================================ スタートしてすぐ湯川の橋を渡る 梅花皮岳が見えた 午前3時半過ぎに加○さんを乗せて白石を出発。sharizakaさんとKIYOさんは、既に昨夜のうちに現地入りしている。飯豊山荘の先の駐車場で2人と合流。他にも何台もの車があり、登山者が準備をしている。天気予報では午前中曇り、午後から晴れという予報だが、雨がパラパラ落ちて時折雷まで鳴っている。様子見でスタートを遅らせようとも考えたが、回復傾向なので予定どおり出発する。自分は長靴だが、同行の3人はトレッキングシューズ。温身平の林道を20分ほどで十字路を右に折れると、正面に飯豊の稜線が現れる。目をこらせば梅花皮小屋も小さく見える。飯豊がお初のKIYOさんが「あそこまで行くのか~」とつぶやいたのが印象的。 堰堤脇の階段を登る 上つぶて石・下つぶて石付近の沢は口を開けている うまい水の雪渓 堰堤脇の階段を登ると本格的な山道となる。ほどなく残雪が繋がるようになり、行く手を塞ぐ枝を右に左に避けながら歩く。「うまい水」はまだ雪渓で覆われていたが、雪渓末端より水が流れているので利用可能。左下に見える沢は口を開けていて、雪解け水が轟々と流れている。突然KIYOさんが「自信が無いので一人で戻れるうちに戻りたい。」と訴えた。今シーズンはバックカントリーに積極的に入っている彼だが、登山経験はほとんど無いに等しい。これまで経験した人臭いルートから見れば、今日踏み込んでいる飯豊は山の深さが違うことを感じているのだろう。今日はボーダーの領域ではなく、山屋の領域だと道すがら話してもいた。しかし、彼が十分やれる技術と体力を併せ持っていることは、これまで供にした山行から分かっている。彼をここでひるませ、気持ちで負けさせてはいけない。「大丈夫。サポートするから大丈夫だ。」と声をかけると、気を取り直して再び歩き始めてくれた。 婆マクレを慎重にトラバース 梅花皮沢はすっかり埋まっている 滝沢出合 石転ビノ出合 やがて急斜面をトラバースする「婆マクレ」に差しかかる。初めて経験するKIYOさんが怖々渡る姿を見て、つい3年前の自分を思い出す。道は地竹原の手前でいったん沢に下りる。例年この時期は沢が口を開けていることが多く、再度左岸に上がってからまた雪渓に下りるのだが、今年は雪渓が繋がっている。雪渓を少し歩き、いつもの場所辺りでシールを貼ることにした。履いていた長靴はここにデポする。ボードのKIYOさんはスノーシューを履く。雪渓にはゴミはいつものとおりだが、まだクラックも立て溝も少ない。晴れればじりじりと両面焼きだが、今日は曇り空で風も適当にあり快調に歩いてゆける。やがて石転びの出合に到着。ここで1本入れることにして石転び沢を見上げると、先行者が点々とアリのように取り付いているのが見える。ここから約1000mを一気に登り上げることとなる。何回来ても、何度見上げても緊張するのは変わりない。 徐々に斜度が増してくる 左岸の状況 右岸の状況 ホン石転び沢出合 後続が点々と KIYOさんも頑張っている 北股沢の状況を観察 石転び沢は登るに従い、斜度を増していく。両岸からの汚れたデブリはいつものとおり。顔を上げて落石に注意しながら登るようにと声をかける。以前はジグを切って登った斜面も、雪が適度に締まっていることもあり直登できる。快調なペースで先行者を数人抜く。落石地帯は休まず早く抜けるに越したことはない。1230mで左手にホン石転び沢出合。今日は無理だがいつか滑りたいものだ。さらに登っていくと、右手に北股沢が大きく見えてくる。よく観察すると、クラックは入っているがそれほど大きくはない。左俣の方が条件が良さそうに見える。ただし、稜線直下はかなりの斜度のようだ。稜線直下の急斜面の手前でいったん斜度が緩む。ここで1本と思ったが落石が多く留まるのは危険なので、さらに少し登って皆を待つ。 シールでの登高はここまでとした 最後の急斜面 梅花皮小屋の屋根が見えてきた 今週もまた見えた環水平アーク さてここからはツボ足で登る。梅花皮小山まではまだ300m登らなければならない。見上げればのけ反るような急斜面だが、多くの先行者のキックステップでしっかり階段が出来ており、足を合わせるだけでいいのは助かる。今日もこまめなエネルギー補充をしていたせいか、それほど疲労を感じることもなく高度を上げていく。やがて屋根が見え、徐々に梅花皮小屋が姿を現す。5~6人の先行者が小屋前で休んでいる。10:57梅花皮小屋到着。後続の3人を待って登頂を祝す。なんとここでも水平の虹が見えた。環水平アークだ。先週の鳥海山に続き、2週連続で見られるとは驚いた。 北股岳への途中よりの梅花皮小屋 北股沢左俣を見下ろす ここをエントリーポイントとした 滑降開始(加○さん提供画像) 斜面途中から見上げるとまるで壁だ シビレる高度感 滑降ライン 再び小屋まで登り返した 予定では余裕を持って13:00到着としていた。よし、北股沢を滑降しよう。滑るのは自分ひとりとなったが、北股岳までは加○さんも登るという。梅花皮小屋から北股岳までは170mの登りで、またひと汗をかく。山頂に加○さんを残し、自分はさらに北へと進みエントリーポイントを探る。左俣を覗きこむと、吸い込まれるような斜面が眼下にある。足元直下からの斜度がきつく、自分にはかなり難しい。思い切ってとも考えたが、もう少し先へ移動してみる。すると何とかエントリーできそうな斜面がある。山頂から50mほど高度を下げたところだった。山頂の加○さんを一瞥すると、ためらうことなく斜面にドロップ。左に少しトラバースすると、右へジャンプターンで切り返す。体で感じるままにターンを刻む。ザラメなので恐怖感は無い。クラックがあったのでいったん止まると、横をスラフが流れ落ちていく。しばらく見ていてもその流れが止まることはなかった。クラックを避けながら滑り降りると、たちまち石転び沢に合わせる。標高差450mの滑降もあっという間だ。さて再び梅花皮小屋へ330mの登り返しだ。 大日岳をバックに4人で 石転び沢の滑降開始 sharizakaさん KIYOさん 加○さん 自分(sharizakaさん提供画像) 汗だくになって梅花皮小屋に到着。ひと休みしながら、梅花皮岳に向かった加○さんの帰りを待つ。戻った加○さんに聞くと、ホン石転び沢は山頂直下の斜度が急で、50mほど高度を下げるまではターンも難しいだろうとのこと。来シーズンの課題にしよう。石転び沢の滑降は、小屋にいた5人パーティーと同時となった。さあ、石転び沢を存分に楽しみながら滑ろう。KIYOさんは今朝の不安も何のその、満面の笑みでかっ飛んでいく。sharizakaさんはといえば、相変わらずの綺麗なテレマークターンで斜面を攻めている。加○さんはさっさとひとり旅で、もうずっと下まで滑っている。自分もこれまでで一番楽しんで滑ることができた。 ニリンソウが咲いていた 緑濃くなった梅花皮沢 また来るよ石転び沢 途中で何度か刻みながら滑り降りると、靴のデポ地点までは梅花皮小屋から37分だった。スキーを長靴に履き替えると、梅花皮沢沿いに登山道を下る。やたらとブヨがまとわりついてうるさい。駐車場に着くと皆さん既に下山したようで、残っていたのは自分たちの車だけだった。梅花皮荘の温泉で余韻に浸りながら湯につかる。今日もいい山行だった。 ※今回はなぜかGPSのトラックが酷く乱れてしまった。現在の機種に変えてから、こんな事は1度もなかったので不思議だ。よって今回のルート図はカシミールで再現したものを掲載した。移動距離と累積標高差は参考程度に見ていただきたい。 ルート図(再現)
by torasan-819
| 2013-05-28 23:30
| 山スキー
|
Comments(12)
やっぱり石転びはいいですね\(^O^)/
スタートが飯豊山荘からならワタクシも北股岳までチャレンジしたい…よりは石転びをちゃんと滑る方が優先かな。去年はヘロヘロでまともに滑りにならなかったですから(´д`)
0
Commented
by
torasan-819 at 2013-05-29 17:55
Commented
by
utinopetika2 at 2013-05-29 18:36
石転び沢ツアー、ありがとうございました!
ホント、素晴らしかった。言葉がありません。 来年はもっと体力付けて、オプショナルツアー参加しますね(笑)。 6月は、いつどこで板納めするか悩みます・・・・
Commented
by
ワタクニ
at 2013-05-29 22:10
x
Commented
by
KIYO
at 2013-05-29 22:48
x
今回も大変お世話になりましたm(__)mありがとうございました!
未体験の連続と過緊張で前日から終始パニくってましたが… 先週の鳥海北面といい、二週続けてこんな素晴らしい場所を滑れるとは…ホント最高、みなさんに感謝感謝です(>_<) 願わくは僕も次回は北俣・本石転びあたりを… そのためにも課題をしっかり予習復習しておきます。
Commented
by
torasan-819 at 2013-05-30 07:31
Commented
by
torasan-819 at 2013-05-30 07:37
sharizakaさん
環水平アークが我々を歓迎してくれていた?かな。 初石転び沢を楽しんでもらえたようで何よりです。 体力的にsharizakaさんなら全然問題無いと思ってますが、お初ということで北股沢は自重されたんですね。 う~んワタクシも板納めをどうするかは悩みです。
Commented
by
torasan-819 at 2013-05-30 07:39
ワタクニさん
コメントありがとうございます。 左俣のコンディションが良さそうだったのでトライしました。 いや~ドキドキでしたが楽しかったです。 来シーズンも何処かでお会いするかと思いますがよろしくお願いします。
Commented
by
torasan-819 at 2013-05-30 07:51
KIYOさん
どうしようかなと思ったのですが、記事の中にKIYOさんの「とまどい」を書かせてもらいました。 そのことにより、単に登った滑っただけでない記録になると思ったもので。 未体験ゾーンの経験は人を一回り大きくします。 でもKIYOさんは若いのだから、急がずじっくり経験値を上げていけばいいのだと思います。 そのお手伝いをワタクシのような山オヤジ達が、少しでもできればと思っています。 基礎体力をつけてスピードと持久力をアップすれば、フィールドはどんどん広がります。 でもその分リスクも大きくなるので、そのことは肝に銘じておいてください。 道すがら話しましたが、将来は逆にKIYOさんに連れて行ってもらうようになります。 その時はよろしくね(^_-)-☆
Commented
by
lc4adv at 2013-05-30 23:03
高度感たっぷりの画像、堪能させてもらいました。
梅雨前の今が一番天候が安定するんですよね。行こうかな?
Commented
by
torasan-819 at 2013-05-31 07:23
|
アバウト
カテゴリ
以前の記事
2023年 06月 2023年 05月 2023年 04月 2023年 03月 2023年 01月 2022年 12月 2022年 11月 2022年 10月 2022年 09月 2022年 08月 more... お気に入りブログ
お山遊び 裏のお山で雪とたわむる ... 山より道具 草花と自然Blog Digital phot... ebiyanの南東北 山... 駅風呂やめました本舗 白石まちづくり Mixture アルコールストーブを創ろう 思い出を残して歩け。 フォトハウス in 福島 Six O'Clock kaiの気ままに山系アウ... mellow life 植野稔の自然遊悠学 イワ... 山について語るときに僕の... マウンテン・ソング・ブック ☆ Happy Pho... 日々是精進也 山ノート S H O P H O T O バイクで行く旅。2 山の子 ことりはうすブログ マロのページⅡ 山と野と ほわほわ山登り THE NATURE T... 宮城南部便り 農家の嫁の事件簿 +(ぷらす) yamaoyazy?の山歩記 ちょいと川へ のんびり写真館 水戸葵山岳会(会員による... tabi & photo... Mountain Rose -Enjoy Natur... Climb & Ride 新・自然遊悠学 伊藤知之のスキー通信 mountain nev... 船形山からブナの便り(ブ... 仙台山想会 紺碧の空へ あんだんて♪の、人生の忘... tabi & photo... 蔓兵衛の山と庭の日々 点描3 最新のコメント
メモ帳
マロのページⅢ
あの山に登ろう 自然に飛び込む~山形の自然満喫日記 すうじいの時々アウトドア みちのく遊山 はなゴンの中年まったり山登り みやぎ山・スキー日誌 いんちょの山登り Coffee Break 福島登高会(新) 福島登高会(旧) 白峰会 大江山岳会 本庄山の会 西川山岳会 フィエスタの谷 エコプロ のんびり~な日々 山田沢田岩田 petit message Toby's blog 煙突おじさんの山スキーと釣り 地図センター 飯豊朝日連峰の登山者情報 飯豊朝日連峰の麓から それゆけ とーちゃん ほんねのね 東北の山遊び 豊後ピートのブログ しぎはらの山々日誌 福島フォーラム ウォッちず きのこ専科 hebereke様の本格的登山隊 HITOIKI Blog 山と海の記録 あかねずみの月山だより 目指せ!立派なテレマーカー 東北の山~鳥海山 東北アルパインスキー日誌 専門天気図アーカイブ soloist 山道具道楽 まったりアウトドア 沢の風と空 その空の下で。。。 沢胡桃 登山用品店teku_teku ぶなの会 扉のページ 山で会えたら 山人小屋 逍遙溪稜会 山めし礼賛 熊プーの生活 山釣り紀行 東風の雑記帖☆「あしたはあした」 sanpei.soragoto まったりアウトドア 山の天気 飯豊族 山スキー・山登りと徒然日記 朋友会 fwix-rope 四季の山野草 春夏秋冬~東北の山巡り~ YASUHIROのマウンテンワールド 阿部氏のページ オドサマの採集食生活 野人に戻ろ 恒さんの"気ままに山歩き 山形の山や自然を写真で紹介 逍遙の四方沢話 那須の山だより ぽこけん WINDY EXCURSION 最新のトラックバック
ライフログ
検索
タグ
その他のジャンル
ブログパーツ
最新の記事
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||