2013年 06月 03日
山スキーなどやっていると、スキーシーズンというものは12月から6月までの半年にもなる。中には雪を待って11月から始め、雪渓を追ってしつこく7月まで滑る人もいるから、その場合7ヶ月以上にもなる。ひとシーズンが終わると、もう次のシーズンが近いので気になってくるのである。なので、年ガラ年中スキーを考えているとも言える。スキーシーズンは非常に忙しい。どこを滑ろうか、パーティーはどうするか、下調べをしてデータを集めなければ、ルート図や計画書の作成がまだだ、道具のメンテも必要だ、帰ってくれば画像をまとめる、山行記録を作る、ブログをアップするなどやることは山ほどある。これをほぼ毎週のように繰り返す半年間なのだ。だからシーズンが終わると、正直やれやれという気持ちにもなる。さて、今シーズンも終盤となった。自分は毎年(といってもまだ4シーズン目だが)5月下旬か6月上旬に板納めとしてきた。行けなかった山、やり残したことは多いが、それらは来シーズンの課題としよう。さて、今シーズンの締めくくりとして、2週連続の飯豊に向かうこととした。狙いはやり残すことをひとつ減らすためだ。 ================================================================================ 山域山名 飯豊山 梅花皮岳(2,000m) 北股岳(2,024.9m) 門内岳(1,887m) 山行期間 2013年6月1日(土) 山行形態 山スキー 天候 晴れのち曇り 参加者 単独 行程 駐車場6:28~温身平6:45~靴デポ地点(640m)7:46-7:54~石転ビノ出合8:27~梅花皮小屋(1850m)10:44~ 梅花皮岳(2000m)11:08-11:37~石転び沢(1260m)11:53-11:58~梅花皮小屋13:26-13:40~北股岳14:08~ 門内岳14:50~門内小屋前より滑降15:00~靴デポ地点15:20-15:28~温身平16:17~駐車場16:35 行動時間 10時間7分 移動距離 22.4km (GPS自動記録) 累積標高差 ±2,885m (GPS自動記録) ================================================================================ 中央右が梅花皮岳 上つぶて石・下つぶて石付近 「うまい水」でばったり 湯沢ゲート手前の駐車場を6:28にスタートする。今日は朝から快晴で気持ちが良い。足元は5月26日と同じく長靴だ。温身平から梅花皮岳を眺め、堰堤から登山道と歩き、「うまい水」は休まず通過するつもりだった。しかし、先行者が2人休憩中なので、そのまま通り過ぎるのも何だと思い話をすると、なんとgamouさんとshibataさんだった。やはり今シーズンの板納めのようだ。時間に余裕がない自分は、先行させてもらうことにする。 婆マクレも緑が濃くなった 雪渓が落ちて沢が口を開けてきた この1週間で梅花皮沢の雪渓はズタズタに 滝沢出合 梶川出合 登山道が梅花皮沢の雪渓へ下りる箇所は、雪解けが進み左岸と雪渓の間が口を開けている。1箇所ブリッジになっていたが、観察していると突然一部が崩壊した。とても渡れたものではないので、少し下りてから雪渓に這い上がる。26日に比べると沢の流心付近は大きく口を開け、ゴウゴウと渦巻き流れている。雪渓の上を恐る恐る歩いていくが、数日中に歩けなくなるだろう。いつもの地点に長靴をデポすると、スキーで歩き始める。しばらく歩いていると、先刻の2人が追いつき追い抜いていった。 石転ビノ出合 石転び沢 ホン石転び沢出合(ドロップポイントが見える) 人間より大きなブロックがゴロゴロ落ちている 北股沢もまだ滑ることができそうだ 急斜面に先行者がひとり 石転びの出合で休憩中の2人を再び追い越すと、1000mの登りに取りかかる。今日はペースを意識的に抑え、休みをあまり取らないつもりだ。快晴で日差しは強いが、少し風があり助かる。見上げれば何人かが、急斜面に取り付いているのが見える。それにしても今日の石転び沢は入山者が少ないようだ。飯豊山荘までの道が開通しているので、もっと多いと思ったのだが。1540mでスキーを担ぎ、ツボ足で登高開始。直登したい自分は先行者のステップをアテにしていたのだが、先行者のステップは右に斜上していく。仕方なく自分でキックステップを繰り返し直登する。アイゼンは付けていないが、雪は緩んでいるのでしっかり蹴りこめば問題無い。しかし、この蹴りこみで結構体力を使う。梅花皮小屋には10:44到着。スタートから4時間16分なので、計画より少し早い程度。 梅花皮岳山頂とホン石転び沢の雪渓上端(EVA父さんが見える) 覗くと急すぎて斜面が見えない EVA父さんと ホン石転び沢を滑るため、休まず梅花皮岳へ登る。山頂が近づくとスキーを担いだ先行者が見えた。自分にとってホン石転び沢は初めてのチャレンジ。山頂に近づくと雪渓が見えてきた。まさしく山頂直下から崖のような急斜面。かなりの斜度ということは分かっていたが、滑り出しは50度を軽く超えていそうだ。とんでもない急斜面ではないか。準備中の先行者に話しかけると、なんと昨日ホン石転び沢滑降の記録を拝見したばかりのEVA父さんだった。EVA父さんはホン石転び沢は3回目なのだという。なんたる奇遇、そして何とも心強い。行動食を食べながら斜面観察。山頂直下からの数10メートルをクリアすれば、後は何とかなりそうだ。あれこれ話ししていると30分ほど経ってしまい、これまで稼いだ余裕時間は無くなってしまった。 EVA父さんドロップへ緊張の一瞬 最初のターン 核心を抜けた 次は自分の番だ ぞくぞくする高度感 シャープなEVA父さんの滑降 う~ん言葉にならない 痛快の一言 シュプールを刻む 石転び沢に合わせる さあいよいよ滑降だ。EVA父さんがドロップする。素速いターンで山頂直下の難所をクリア。素晴らしい見事だ。次は自分の番。EVA父さんの滑降イメージがあるのか、これほどの急斜面に立っても不思議と恐怖感は無い。意を決してドロップ。最初のターンが肝心だと思ってはいたのだが、エッジを外しよもやの転倒。頭を下にしかけたが、なんとか5mほど落ちただけで引っ掛かり止まった。ふう~やれやれ。その後は何とかターンをこなし、高度を下げて安全地帯へ。見上げるととんでもない急斜面に、下まで落ちなくて良かったとあらためてホッとする。自分の技量では、この斜度でのターンは厳しい。横滑りで高度を下げるべきだった。自分の技量の見極めと冷静な判断が必要だ。その後は斜面が大きく広がり、標高差700m以上の滑降を存分に楽しむ。ダイナミックで素晴らしい滑降であり、あの急斜面がなければもっと多くの人が滑るのだろうと思う。やがて石転び沢に出合うと、このまま下りるEVA父さんと別れた。 急斜面を登り返す gamouさんとshibataさん 北股岳中腹からの石転び沢 左から門内岳、扇ノ地紙、梶川峰 登山道脇にミヤマキンバイ ミネザクラ 門内岳手前から見えた梅花皮岳に滑降ラインを重ねた 門内小屋と雪渓 さて梅花皮小屋まで600m近い登り返しだ。シールを貼る気もなく、ツボ足で登高を開始する。太陽に焼かれ汗がしたたり落ちる。本日2度目とあって、さすがに足取りは重い。自分で自分に課した労苦が、恨めしくさえ思えてくる。救いは自分のつけた直登ステップが、後続者の利用で大きくなり歩きやすいこと。やっと梅花皮小屋の屋根が見えてきたと思ったら、滑り降りてきたgamouさんとshibataさんとスライドし驚かれる。小屋でゆっくり休んでいたという。13:26梅花皮小屋到着。行動食を食べて水を補充すると北股岳へ向かう。かなり足にきているので、ゆっくり登るしかない。北股岳山頂を越えると、門内岳まで1.8キロの稜線が見える。稜線の登山道を、兼用靴でひとり歩いていく。門内岳に到着すれば、門内小屋はすぐ先にある。 入り門内沢を俯瞰する 入り門内沢もなかなか良い斜面だ カタクリの群落 タムシバ さあ入り門内沢の滑降だ。小屋直下は笹薮が出ているので、左へトラバースすると滑りごろの斜面。もはや足の余力はいくらも残ってないのだが、ほどよい斜面は気持ちよく滑降できる。2年ぶりに入り門内沢を滑る、これも今日の目標のひとつだったのだ。先行のテレマーカー2人をかわし、石転ビノ出合はノンストップ通過。何度かひと息つきながらも、小屋から長靴デポ地点まではちょうど20分だった。これがスキーの機動力であり、上手く使えば残雪期の行動範囲は驚くほど広がる。足元を長靴に変えると、ブヨに追いかけられながらの山道歩き。虫除けスプレーもブヨの大群には防戦一方で、腕を何箇所も咬まれる。この時期はブヨ対策が必須だ。計画では17:00着としていた駐車場に16:35到着。ホン石転び沢と入り門内沢の滑降、そして行動時間の3つを達成した。今シーズンの板納めもこれで完了だ。 GPSトラック ( 徒歩及び登高部分:赤 滑降部分:青 ) ※クリック拡大 山行計画を作る場合、コースタイムに余裕を持たせるのが常識だ。しかし、今回はほとんど余裕を持たせていない。自分の現在の体力は自分が一番よく分かっている。いや、分かっている「つもり」なのだろう。自分を追い込まないと見えてこない部分がある。だから自分に対して、かなりキツイが頑張れば出来そうな、あえてギリギリのさじ加減で計画を作る。それは距離であったり時間であったりする。自分に対して「やれるならやってみろ」と言い、「ようしやってやろうじゃないか」と返す。ゲームメーカーもゲームプレーヤーも同じ自分だ。ソロプレーヤーとして参加した今回のゲームはクリアできた。次はさらにハードルを上げるかどうか悩みどころだ。 ※石転び沢は落石の発生が多いので、登高中も常に注意を払う必要があります。 ※ホン石転び沢の滑降は、条件が良くないと山頂直下からの滑降は至難です。転倒は即滑落です。
by torasan-819
| 2013-06-03 00:53
| 山スキー
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Comments(16)
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KIYO
at 2013-06-03 22:48
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ホン石転びにプラスしたのが門内だったとは…開いた口が塞がりませんでした(@_@;)
ホン石転び沢、たまらない感覚なんでしょうね! やはりホン石転びはどうしても滑りたい目標となったので、来期に向けてしっかり準備していこうと思います。 金曜に鳥海だったんですが、ボクの板納めもうちょい先になるかもしれません(笑)
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ranger3yuji at 2013-06-03 23:22
写真を見ているだけでも緊張感たっぷりでした。
ものすごいです。
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torasan-819 at 2013-06-04 06:40
KIYOさん
口締めてくださいね(笑) しかもホン石転び沢はまだ滑れますよ~ とはいえおっしゃるとおり来シ-ズンに向けてじっくり準備するのがよろしいかと思います。 応援しますしお付き合いもしますので期待してますからね(^_-)-☆
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torasan-819 at 2013-06-04 06:43
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加ト幹事長
at 2013-06-04 13:05
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化け物・・・か?
俺は赤子だな。。
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EVA父さん
at 2013-06-04 14:28
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お疲れさまでした!
お会いでき嬉しかったです。 一瞬、ヒャ!としました。 でも待ち前の脚力でリカバリー、やはり常日頃の鍛錬の賜物ですね。 ワンデーで累積標高差2885m、こりゃ~おったまげです。 私の二日分も、これじゃ~とってもついて行きそうにありません。 (クー、悔しいの~)
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torasan-819 at 2013-06-04 20:31
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torasan-819 at 2013-06-04 20:37
EVA父さん
いや~お世話様でした&助かりました。 100m以上は滑落するかと思いました(^◇^;) それにしても前夜に山行記録をしげしげとチェックしていた方が目の前にいらっしゃるとは驚きました。 まあ案外狭いですからねこの世界も。 累積標高差はGPSが細かいアップダウンも丁寧に拾った数字ですのであくまでも参考ということで。 次は目指せ3000mオーバーです(笑) 来シーズンは是非ご一緒させてくださいね~あまりハードでないところで(^g^)
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torasan-819 at 2013-06-04 20:41
あ~、門内沢までやっちゃいましたか~!ホン石転び沢まで滑っておきながら。遠い世界へ行っちゃった感じです(笑)。
今シーズンはホントお世話になりました。来シーズンは少しでもトラ山さんに近づけるように頑張ってみます(気持ちだけ)。
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torasan-819 at 2013-06-04 22:08
sharizakaさん
これで今シーズン思い残すことは無い…とまでは言えませんが引っかかりは少なくなった気がします。 様々なルート&斜面の組み合わせで、山スキーの可能性をもっと探りたいと思いますが、年齢との戦いかな(笑) また来シーズンもよろしくお願いしますね。 おっとその前にあの計画を実行しなくちゃね(^_-)-☆
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pallet-sorairo at 2013-06-07 10:36
初めまして
あら懐かしい飯豊だ! こんなところを滑り降りるって!?え~っすごいなあ なんてびっくりしながら読ませていただいてましたら… NONさんのお知り合い(お仲間)? NONさんのところへは時々コメントいれさせていただいてるんです。 ネットってほんとにいろんなところでつながってるんですね。
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torasan-819 at 2013-06-07 20:24
pallet-sorairoさん
コメントありがとうございます。 NONさんとは何年か前から山友としてお付き合いさせていただいています。 とはいっても一緒に登ったことはまだ少ないのですが(^^ゞ pallet-sorairoさんも山登りの経験は豊富のようにお見受けしましたが違いますかね? これからは沢登りに縦走の記事が多くなりますが、是非またお出でください。
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leviathan05 at 2013-06-08 22:09
バケモノ呼ばわりする気持ち、よ~くわかります。(笑 でも、ほんとスゴイです。
久しぶりに石転びの景色を見られてうれしいです。 m(_ _)m いつも山スキーの人は下山が速いので羨ましいと思います。 私が2~3時間かけて下る所をスキーの人は2~30分で下ってしまいますから・・・ ( ̄o ̄)
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torasan-819 at 2013-06-09 13:06
leviathan05さん
たしかにスキーは機動力がありますが、登りではツボ足登山者によく負けますよ(笑) 何しろ足に重しをつけて歩いているようなものですから。 下山の速さは行動範囲を広げてくれますが、あまり過信すると痛い目を見るのでほどほどがいいですね。 |
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