2013年 10月 28日
後烏帽子岳遭難事故について
f0170180_20422877.jpg

今月12日に蔵王の後烏帽子岳山域で遭難が発生した(記事はここ)。連日の捜索の結果、15日の朝、ヘリコプターにより発見された。しかし、残念なことに既に亡くなっていた。今回の遭難ではいろいろ考えさせられることが多く、自分の目で発見現場を直接確認したくて、先日1人で現地へと向かった。発見現場の位置は、当日現場にいた仲間からGPSのデータをもらったのでピンポイントで分かる。




                         秋山沢コースを登る
f0170180_20461039.jpg


                         登山道の左手斜面に下降する
f0170180_2115362.jpg


                         水面が見えてきた
f0170180_20485383.jpg


                         遭難者が発見された沼
f0170180_20495732.jpg


秋山沢コースの登山道を1時間弱登り、左手の斜面に入り下降する。笹ヤブだがそれほど濃くないので、歩きに支障はなく見通しもある程度きく。ヤブこぎに慣れた人なら、なんということもないヤブだ。下降していくと水面が見えてきた。発見現場の沼の水面だろう。下降を始めて7分ほどで沼に到着。登山道との標高差は約60mほどだ。斜面が平坦地に変わるところの窪地に、水が溜まって沼になっている。流入する沢などは無いようだ。沼の大きさは東西80m、南北20mくらいだろうか。大小2つの沼が隣接しているとの情報もあった。見ると中ほどで一部浅いところがあるものの、水面はつながってひとつの沼のようになっている。もしかすると、水面が下がったときは2つなのかもしれない。

                         静かな沼の水辺
f0170180_2142851.jpg


                         木々を透かして馬ノ神岳の尾根が見える
f0170180_2053469.jpg


                         沼の中間部
f0170180_20545862.jpg


                         沼の東部
f0170180_20554155.jpg


考えるに、遭難者は秋山沢から登山道に戻る際にルートを見失い、迷ったあげくこの沼にたどり着き救助を待っていたのだろう。登山道から沢に降りる際に、ピンクテープを付けながら下降したようだが、戻る時に見失ったと思われる。自分も経験があるが、下りながら目立つと思って付けたテープも、登り返すときは角度の違いなどから見えにくくなることも多いのだ。得られた情報から推測すると遭難者は、12日に警察に救助要請したときから、発見されるまでここを動かずにいたのではないかと考えられる。13日も携帯からの発信があったというから、少なくともその時までは彼の意識はあったのだ。沼を見ながら遭難者のことを考える。どんな思いで1人夜を過ごし、そして息絶えたのだろうかと考えると何ともやりきれない。自分には、合掌し故人の冥福を祈ることしかできない。

                         斜面をトラバースして登山道へと
f0170180_20573437.jpg


                         10分ほどで登山道に出た
f0170180_2058416.jpg


沼から登山道への帰路は、斜面をトラバースするように歩いた。ゆっくり歩いても10分ほどで登山道に出る。登山道からこれほど近いのに、彼にとっては届かぬ距離だったのだ。怪我をして動けなかったのではない、自分の居る位置が分からなくなり動けなくなったのだ。しかし、南側には秋山沢が流れており、沼にいても沢音が聞こえる。木立を透かして馬の神岳の尾根もよく見える。この位置関係からすれば、登山道は反対側にあるはずであり、北に向かえば登山道があるはずなのだ。仮に方角が分からなくとも、沢の反対に向かえば必ず登山道があるはずなのだ。なぜ気づかなかったのだろうかと考えると、何とも残念である。

                         遭難位置図:赤丸が発見現場(青線は今回歩いたライン)
f0170180_21174554.jpg


しかし、遭難するときとはそういうものなのかもしれない。自分が迷ったと認識したとき、現在地が判らなくなったことによる動揺と混乱が生じるであろう。やがて恐怖すら生じてくるかもしれない。普通なら当然と思えることも、正常な判断が困難になるのではないだろうか。彼は若い頃に、登山をある程度やっていたとの情報もある。山菜採りやキノコ採りをやっていたとも聞いた。しかし、あっさりと遭難してしまい、抜け出すことができなかった。どこかちょっとでも歯車がずれたときに、こうも簡単に人は遭難してしまうのだ。我々は今回の遭難から、何を学び何を教訓とすればいいのだろうか。いずれにしろ明日は我が身、他人事ではないとの認識を持つ必要はあるだろう。なお、遭難者の装備や捜索の初動体制や方法などについても個人的見解はあるが、またの機会に譲るとしよう。

by torasan-819 | 2013-10-28 20:33 | | Comments(15)
Commented by utinopetika2 at 2013-10-28 22:46
地図とグーグルアースで確認しました。
とても気になっていた事の一つでした。
様々な思いが駆け巡ったのでしょう。
たいへんお疲れ様でした。
Commented by torasan-819 at 2013-10-28 23:21
utinopetika2さん
グーグルアースの画像は雪がありますが、沼の水面がハッキリと確認できますね。
おっしゃるとおり、様々な思いが去来したのです。
亡くなった遭難者とは、ちょっとしたエピソードもありますが、それはお会いしたときにでも話しましょう。
Commented by fwix at 2013-10-29 09:31 x
単独行の場合、相談相手がいないから
パニックに陥ったら判断力が相当落ちますよね

十ン年前のGW、初雪山で滑りすぎて、登り返し中に現在地見失ってパニクった経験あります
ご飯食べて一息ついてから、冷静に地図と周りを見比べて同定できて、山小屋に帰れました

まず落ち着くこと、ですね
Commented by torasan-819 at 2013-10-29 20:48
fwixさん
そうですね同行者がいることにより、落ち着いた判断ができるということもありますね。
でも、同行者に過度に依存すると良い結果にならないこともあるので、そこが難しいところでしょうか。
要はケースバイケースかなと思います。
ワタクシも単独でルートロスの時に、ちょっとパニックに近い経験はあります。
fwixさんがひと息ついたのは正解でしたね。
やみくもに動き回らずに、まずは自分を落ち着かせて冷静になると言うことは重要だと思います。
Commented by sho at 2013-10-29 22:18 x
そうでしたか。残念です。やはり、装備の問題も大きいでしょうね。GPSを持っていたら自分の居場所がわかるのでしょうか?
Commented by torasan-819 at 2013-10-30 07:30
shoさん
このあたりは遭難者の地元なのです。なので登山という感覚ではなく、裏山に登るくらいの感覚だったのではないかと思っています。
よもや遭難するなんてことは考えもしなかったでしょうから、装備もほとんど持っていなかったと思われます。
キノコ採りや山菜採りで遭難する人たちは、装備は持ってませんがそれと同じだと思います。
GPSがあれば一目瞭然です。しかし、信じられないことに世の中にはGPSを持っていても道迷いをする人がいます。
電池が無くなればただの重しですし。要は使いこなせるかどうかです。
Commented by HITOIKI at 2013-10-30 22:57 x
GPSを買ったばかりの時、GPSの現在位置と地形図が一致しないことがありました。それは、最初の登山口を間違っていて、GPSで見える狭い場所が同定できなかったでした。それからは方角を確かめるためのコンパスと地底図はGPSとともに持っていくことにしています。
Commented by torasan-819 at 2013-10-31 00:08
HITOIKIさん
GPSは大変便利ではありますが、万能ではありませんよね。
コンパスや地形図と同じく、あくまでも道具ですから。
HITOIKIさんがされているように、GPSの他にコンパスと地形図は必携だと思います。
Commented by マロ7 at 2013-10-31 07:08 x
少しばかり中味がわかりました。
遭難者の方はいつまで生存していたのだのうか。
翌朝に明るくなれば位置関係がわかるし、下ったルートを戻ることができたのでは…と?
ここから秋山沢の幻の滝は近いのですか。
Commented by 加ト幹事長 at 2013-10-31 13:30 x
鳥海山でガスに巻かれて、すっかり方向を見失ったことがありました。
5、6人で右も左もわからなくなり、めずらしくGPSを出してたまたま入力していた滝の小屋のウェイポイントを目指してみました。
矢印に導かれ、仲間をホイッスルで誘導・・あらビックリ到着。
GPSの威力に驚きました。
でも仲間がいたから冷静に判断できたものだとも思いますね。
残雪期は方向を誤ったうえ下りすぎ、さらに突破できないヤブに阻まれ時間的にも焦りましたね。
そいえば、この間の煮込みうめがったど。今度作り方教えてケロ。ごっつぉさんでした。。
Commented by torasan-819 at 2013-10-31 20:04
マロ7さん
> 遭難者の方はいつまで生存していたのだろうか。
ワタクシも知りたいですが、それは本人しか分かりません。
本人の記録があればとも思いますね。
メモがなければ地面に小枝で書くとかですが、そんな余裕はなかったのでしょう。
> 翌朝に明るくなれば位置関係がわかるし、下ったルートを戻ることができたのでは…と?
そう思いますよね。でもそう出来なかったがゆえの遭難なのだと思います。
幻の滝の位置は諸説ありまして、ワタクシもよく分かりません。
湧水なので季節により現れたり消えたりするとの情報もありますが、真偽のほどは不明です。
マロ7さん調べてくださいませんか?
Commented by torasan-819 at 2013-10-31 20:27
加ト幹事長さん
湯ノ台ルートの滝の小屋ですね。GPSは以前より飛躍的に衛星の捕捉性能がアップして、ホントに信頼できるアイテムになりました。
ワタクシなどは、山登りの初っぱなから単独行なので、だいぶGPS様に助けていただきました。
それでも残雪期などでのルートミスはしばしばですね。GPS持っていてもです。
そうしょっちゅうGPSばかり見ているわけではないからなのですが、結局は自分のミスなんですよね。
さて、先日のモツ煮込みは手間とお金が…少し(笑)かかってます。
今度はモツ鍋パーティーなどやりたいっすね~雪の山中で(^_-)-☆
Commented by morino1200tb at 2013-11-01 22:33
随分前に残雪期の船形で、山頂へ行った後、升沢小屋から三光の宮へ戻るショートカットで迷いました。
暫くしてから北泉ヶ岳山頂で遇った方にガーミンの英語版を見せられて得心して購入。(その方も船形で迷い経験とのこと)
GPSは安心感はありますが、地形図とコンパス(プロトレック。これも壊れたら終わりですけど。)は常に携行です。
一人の時は何かにすがろうという気持ち(トレースやテープなど。そしてそのように見えてしまう怖さがあります。)が大きくなり、中々冷静になれませんね。
Commented by torasan-819 at 2013-11-02 06:57
morino1200tbさん
ハイテクのGPSも電池が無くなれば単なる重しですからね。
やはり地形図とコンパスに地形を見る目、最後は野生のカンでしょうか。
獣道を登山道と思いこんだり、人は物事を自分が「見たいように」見るんですよね。
自分で自分を欺いてしまうようなところがあると思います。
おっしゃるとおり冷静な判断が難しいですね。
Commented at 2013-11-30 15:48 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。


<< 吾妻連峰 東吾妻山での放射線量...      蔵王の秀渓 小屋の沢遡行からガ... >>