2013年 11月 10日
会越国境山群 御前ヶ遊窟でスラブと紅葉を楽しむ ~ 2013年11月9日
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自分が御前ヶ遊窟(ごぜんがゆうくつ)を知ったのは、ほんの数年前のことだ。新潟県阿賀町にある御前ヶ遊窟は、会越国境山群に属する井戸小屋山(902m)の東尾根の岩塔にある。御前ヶ遊窟という名称が、何やらいわく因縁ありげではないか。調べると、武将平維茂の奥方が隠れ住んでいた(と言い伝えられている)洞窟のことのようだ。豊富にあるネットの記録を見ると、スラブの登攀画像が印象的だ。特に秋は紅葉が美しいようで、いたく興味をそそられた。昨年は機会がなかったが、よし今年こそはと思い定めていた。行きたいと口にしていたところ、仲間が集まり5人で行くことになった。御前ヶ遊窟は全員が初めて。自分はちょっと苦手なスラブ登攀に、期待半分不安半分というところ。
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 山域山名   御前ヶ遊窟
 山行期間   2013年11月9日(土)
 山行形態   一般登山
 天候      晴れのち曇りのち晴れ
 参加者    5名(L:和○さん・佐○さん・○井さん・八○さん・トラ山)
 行程      登山口7:58~鍬ノ沢渡渉点8:07~登山道合流点8:28~シジミ沢出合9:39-9:55~御前ヶ遊窟12:16~
          岩塔頂上12:41-13:09~ソウケエ新道14:05~鍬ノ沢渡渉15:42~登山道合流点15:56~登山口16:24
 行動時間   8時間26分
 移動距離   7.4km (GPS計測)
 累積標高差 ±1,079m (GPS計測)
 装備      ロープ 45m×1・50m×1
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                         わらび園にある案内図
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                         登山口を出発
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                         鍬ノ沢を渡渉
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福島市内で午前5時に集合し、高速に乗り津川ICで降りる。棒目貫という山間の集落を過ぎると、観光わらび園があり、御前ヶ遊窟の案内図がある。道なりに進むと、右カーブの先の案内板に従い左の林道へ入る。300mほどで行き止まりとなり、ここが登山口だ。数台の駐車スペースがあり、登山ポストがある。既に先客が1台駐車してあり、3人パーティーが今まさに出発するところだった。我々も支度をし、登山ポストの中の登山者名簿に記入して7:58に出発。細い道を進むと左下の鍬ノ沢へと、ぬかるんで滑りやすい道を下る。鍬ノ沢を渡り、右岸に道は続く。細い道はぬかるみ、急斜面のトラバースが嫌らしい箇所もある。ゴム長靴のほうが合いそうな道だったのは予想外。

                         右からソウケエ新道が合わさる合流点
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                         マップで確認する
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                         シジミ沢拡大図
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                         対岸のスラブ(尾根はソウケエ新道)
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                         岩塔が見えてきた
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                         シジミ沢出合
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ソウケエ新道合流点の先に、御前ヶ遊窟の詳しいマップがあったので再度確認。左岸の尾根は徐々に高くなり、切れ落ちるスラブが見事だ。道が菅倉沢を渡るところで、自分だけ鍬ノ沢に降りてそのまま沢を登ってみる。沢を遡上すると、10分ほどでシジミ沢出合に到着。シジミ沢は水流も無い小沢で目立たないが、赤テープがあり、すぐ上流には滝があるので間違うことはないだろう。

                         御前ヶ遊窟の岩塔が見える
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                         プアマンズアプローチシューズ?
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先行する3人パーティーが準備していた。道を歩いてきた他のメンバーも到着し、沢を渡って合流。ここで靴を履き替えることにする。和○さんは最初からラバーソールの沢靴だが、佐○さんはフェルトソールの沢靴、八○さんと○井さんはアプローチシューズに履き替える。自分はラバーソールの沢靴も、ましてやアプローチシューズなんて持ってない貧乏沢屋。いつものフェルト靴と思ったが、乾いたスラブとフェルトの相性は今ひとつなのを知っている。なので以前より気になっていたハイパーVという靴を新調してきた。ハイパーVは作業用の靴なのだが、ソールが滑りにくいゴムで、しかも対摩耗性もあるという優れものらしい。そこそこ沢登りにも使えるということで、一部の沢屋さんが密かに使用している。自分も使ってみたいと考えていたので、良い機会と思い昨日買ってきた。価格は2980円也。

                         シジミ沢の始めは苔むした岩登り
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                         濡れたスラブを登る(右にトラロープあり)
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                         振り返ればスラブの滑り台
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3人パーティーより早く準備が終わり、先行して登り始める。シジミ沢はほとんど水流が無い。取り付きから木の枝が被る急なゴーロ登りで、岩は苔が付いていて滑りやすい。やがて開けると、両側がブッシュのスラブとなり、目線を上に向けると御前ヶ遊窟のある岩塔が見える。スラブはわずかに水が流れていて濡れているが、フリクションはあるのでそのまま登れる。クサリやトラロープも下がっているが、はたしてどこまで信用できるのかは不明だ。古いトラロープには、なるべく頼らない方がいいだろう。アプローチシューズの八○さんはどんどん登っていくが、自分も含めた他のメンバーは慎重に登る。足下のハイパーVは思った以上に好感触だが、今年は身辺で転滑落者が続いたこともあり、より慎重になっている。スリップすればどこまでも滑り落ちるのではという不安が、腰の引けた登りにさせているようだ。そんなこともあり、今日のトップは八○さんに任せようと思った。自分はしんがりを務めようとゆっくり登っていると、3人パーティーが追いついてきたので先行してもらう。

                         チムニー状の岩溝
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                         赤テープが要所にあり迷うことはない
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                         クサリが下がっている
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                         高度感が増してくる
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                         ルート確認中の八○さん
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                         これから登るスラブと御前ヶ遊窟のある岩塔
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                         スラブにロープを延ばす                         
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スラブはブッシュで狭まり、チムニー状の岩溝区間を登ると、赤テープに導かれて少し右にそれる。今のところ赤テープは要所要所にあり、追っていけば間違うことはなさそうだ。ルートが不明確で苦労したという記録もあるところを見ると、その後に新しく付け直されたのかもしれない。ブッシュ混じりの岩場を登ると、少し左に戻ってスラブに出る。長いクサリが下がっているが、練習の意味もあり初めてロープを出す。1ピッチ登るが、スラブは御前ヶ遊窟の岩塔に向かって真っ直ぐ続いている。このまま登れば最短で到達しそうだが、上部は傾斜が立っていて厳しそうだ。迂回ルートなのかもしれないが、赤テープに従い右に曲がってから左回りに回り込むように登る。ここは高度感はあるものの、フリーでも不安はない。

                         スラブ溝を登る
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                         右から回り込む
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                         岩塔へトラバースする
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                         御前ヶ遊窟の岩室
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今度は左へ岩塔の基部を目指すが、ここのトラバースでは念のためロープを出した。向かう先では、先行していた3人パーティーの1人がスラブで行き詰まり、上からロープを垂らしてもらっているところだった。到着した岩塔の基部には岩穴があったが、御前ヶ遊窟はもうひとつ先の岩穴で、奥には何やら仏像らしきものがある。
御前ヶ遊窟は自然に出来た岩室らしい。本当に平維茂の奥方が隠れ住んだのかどうかは判らないが、岩室の前に水がしみ出ているところがあり、食料があればしばらく暮らすことも出来よう。

                         遊窟から左のスラブへ回り込む
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                         高度感が凄い
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                         岩塔(846m)
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せっかくなので、岩塔の頂上に登ってみることにする。下で見たマップによると、遊窟を出てすぐの直上する岩に取り付くと急で登れなくなるので、左のスラブを登るといいらしい。3人パーティーが直上する岩に取り付いていたので、そのことを言ったが大丈夫と登っていった。我々はマップどおりに左のスラブに回り込む。スラブ脇のブッシュを頼りに登れるが、ここでも念のためロープを出し安全第一で行くことにする。今回の登りで、ここのスラブが一番高度感があった。もし転がれば、400m下まで落ちることは間違い無いだろう。

                         山頂より下を覗くと吸い込まれそう
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                         ソウケエ新道のある尾根
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                         飯豊連峰
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                         切れ落ちた山頂北端で怖々と
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スラブを登って少しヤブを漕ぐと尾根道に出る。右が岩塔で左が井戸小屋山へと続く。岩塔の頂上(846m)に登ると、5人が休む程度の広さがあったので昼食とする。風もなく暖かい山頂で、眺めはすこぶる良い。南北に長い頂上の端に立って下を見ると、何100mも下まで切れ落ちていて吸い込まれそうだ。3人パーティーはスラブで手こずったのか、我々が下り始めた頃に登ってきた。

                         遊窟の下にある書き込み「かえり 5m下 左」
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                         ソウケエ新道への分岐はクサリで登る
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                         岩塔基部を巻く
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                         尾根のソウケエ新道へと登る
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さて、登ってきたとおりに遊窟まで戻ろう。ロープを残しておいたのでスラブの下りも安心だが、それでも怖いものは怖い。遊窟に着いたら岩の書き込みどおりもう少し下ると、左手にクサリがあり急な登りとなる。これがソウケエ新道へと登る分岐だ。トラバースしながら斜上していくと、岩塔の基部を巻いてトラバースする。尾根に向かって登っていくとソウケエ新道だ。

                         ソウケエ新道を下る
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                         クサリを頼って下降する
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                         登山道を戻る
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初めのうちは露岩の細尾根やクサリ場で気を抜けない。しかも、アップダウンを繰り返しなかなか標高が下がらない。やがて下り一辺倒となり標高を下げていく。尾根の左右もすっぱりと切れ落ちたスラブだ。最後に5箇所目のクサリ場を降りると、タツミ沢の渡渉である。鍬ノ沢の左岸を少し下り、対岸へ渡渉して登山道に合わせる。ちょっと暗くなってきた山道を急ぎ下り、登山口には16:25到着。登山者名簿に下山時刻を記入し山行を終了した。

会越国境山群は、雪に磨かれたスラブの岩肌を持つ山が多い。その滑らかなスラブは、クライミングの対象となりこそすれ、一般登山者が登れるようなものではない。この御前ヶ遊窟のスラブのように、一般登山ルートの範ちゅうに入るものは珍しいのだろう。とはいえ、スラブの登攀は難度が高い。ロープは使わず足下は登山靴のスタイルでこのスラブを登る人もいる。また、我々のように、ハーネスにヘルメットとフル装備のパーティーもある。考え方の違いになるかもしれないが、一般登山の上級ルートとして考えても、ヘルメットは被った方が良いだろう。今回は初ルートでロープを3回出したこともあり、それなりに時間がかかった。特段にトラブルが無い限り、今回より行動時間が長くなることはないだろう。御前ヶ遊窟を計画される方は、人数等により加減して参考にされたい。

                         GPSトラック (登り:赤 下り:青 ) ※クリック拡大
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by torasan-819 | 2013-11-10 19:50 | | Comments(8)
Commented by utinopetika2 at 2013-11-12 22:14
御前ヶ遊窟も一度は行ってみたい山です。
で、濡れたスラブもハイパーVで登られたのですか?
履き心地やトラクションはアプローチシューズと比較して如何なでしたか?
紅葉真っ只中の岩山のロケーションは素晴らしいです。
Commented by torasan-819 at 2013-11-13 07:07
utinopetika2さん
スラブが濡れているのは下の方だけでした。
もちろんハイパーVで登りました(^^)v
見た目より勾配はないかもしれません、30数度程度だと思います。
この程度なら大丈夫ですが、これ以上になればやはり値段の差でしょ(笑)
来年また行きたいので声かけますね。
Commented by maro4070 at 2013-11-13 07:43
行ってきましたねぇ~(^o^)
スラブの紅葉は最高でしたでしょう。
わたしゃ、登山口からキノコいただいたもんで荷が少しは重かった。
この時、ソウケエ新道の下れでクマバチの巣を踏んで…みんな蜘蛛の子を散らすようにいなくなったネ。(>_<)
Commented by torasan-819 at 2013-11-13 18:38
maro4070さん
紅葉は綺麗ですが、わたしゃ滑り台が気になって気になって(^_^;)
キノコは目を皿にして探したのですが、めぼしいのが無く残念でした。
それにしても会津・越後の山はいいですね~
Commented by madokau at 2013-11-14 20:54 x
マルイです。
正確には、八○さんと私は最初から最後までアプローチシューズでした。
スラブの登りは快適でしたが、アプローチはアプローチシューズではなく沢靴がよかったかもしれません。
とても楽しかったです。ありがとうございました。
Commented by torasan-819 at 2013-11-15 07:58
madokauさん
そうでしたね(^^ゞ
あらためて他の記録も見ると、あの山道はいつもズブズブのようです。
長靴がいいくらいの道でした。
御前ヶ遊窟はまた行きたいと思わせる面白い山でしたね。
Commented by leviathan05 at 2013-11-16 01:20
素晴らしい紅葉と、ものすごい高度感ですね。
うちの近くなので名前だけは知っていましたが、、、  ∑(゚Д゚;))) コワ!
Commented by torasan-819 at 2013-11-17 06:36
leviathan05さん
是非登ってみられるといいですよ。
初めての場合は案内人の方がいた方が良いと思いますが。
ソウケエ新道から登るという手もあります。


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