2016年 08月 02日
![]() 船形連峰の大倉川の支流である横川は、上流部で矢櫃沢(やびつさわ)と名を変え、後白髪山と三峰山の間に深く谷を刻んでいる。登山大系によれば通過困難なゴルジュ帯が魅力であり、完全遡行が果たされたのはそれほど昔のことではないという。船形連峰の沢の中では難しい沢とされ、近年の遡行記録は数えるほどしかない。以前からいつかはと思っていた沢だが、今回メンバーがそろい遡行することにした。 山域山名 船形連峰 大倉川流域・矢櫃沢 山行期間 2016年7月31日(日) 山行形態 沢登り 天候 晴れのち曇り 参加者 4人(L:◯樹・千◯・安◯・トラ山) 行程 定義山駐車場6:30=横川登山口7:30-7:49~入渓8:25~矢櫃の滝8:58~釜伏の滝9:22-10:36~大滝下の6m滝11:41~ 横川大滝12:15-13:42~登山道14:50~後白髪山頂15:14-15:28~横川登山口15:59=駐車場17:05 行動時間 8時間10分 移動距離 10.4km (GPS計測) 標高 最低点760m 最高点1,422m 装備 日帰り沢装備(ロープ50m×1・30m×1) 横川登山口から歩き始める ![]() 矢櫃沢橋から沢に下降 ![]() 堰堤を左岸から越える ![]() 側壁が高くなる ![]() 定義山の駐車場に7:30集合。メンバーは今日が初顔合わせとなる安◯さんを加えた4人。千◯さんとはなんと3週連続の沢登りとなる。定義林道を登っていくと右に横川林道の分岐があり入る。道に被った笹や灌木をかき分けるようにして進むと横川登山口だ。下山は横川登山口に下るのだが、標識があるのでやっと登山口であることがわかるほど笹に覆われている。車は登山口手前の道路脇に数台置ける。林道を30分ほど歩き、矢櫃沢橋の左岸側から沢へと下降。ゴーロを歩き始めるとすぐ両岸がV字谷となり、堰堤が現れて左岸から越える。左岸に枝沢の30m滝を見るとゴルジュの様相を呈してくる。 トイ状の小滝を開脚で越える ![]() CS滝 ![]() 矢櫃滝 ![]() 矢櫃滝1段目 ![]() 矢櫃滝2段目 ![]() 小滝を越えてトイ状6m斜滝を登ると、幅の狭い小滝を開脚で越える。自分は開脚が大の苦手だが何とかクリア。右に左に向きを変える沢を登っていくと矢櫃滝が現れた。この滝は2段で、1段目は釜のある8m滝が幅のある水流を落としている。この滝は登山大系では「長い間遡行を拒んできた」と記載されている。釜に入って右岸沿いに進み、水から上がって水流脇を登ると思ったより容易である。2段目の5m滝は釜を泳いで取り付き、水流左を登るがさほど難しくはない。そんなわけで矢櫃滝は呆気なくクリアしたが、1段目は高さがあるので状況によってはロープも考えたい。 釜伏の滝 ![]() ロープを伸ばす ![]() 釜を泳いで取り付く ![]() 水を被りながら登る ![]() 小滝を越えると突然前方に洞穴のような暗い空間が見えた。洞穴のように見えたのは、右岸が大きく被っていて鋭く右に屈曲しているからなのだが、中へと入ると暗くてまさに洞穴のようである。その中に6m滝が釜に水を落としており、釜伏の滝との名がある。登山大系では「左岸岩稜を登るか、少し戻って右岸ルンゼを高巻く」とされているが、実際に登った記録があり、今日は我々も登る気で来たのだ。千◯さんがトライすることとなり、釜を右から泳いで取り付くと、あっさりと(そう見えた)体を引き上げた。釜のこちらから見るとつるんとした岩だが、ホールドスタンスは細かいながらもあるようで、右壁を探りながら少しずつ登っていく。4か所ハーケンで支点を取りながら30分ほどで登攀成功。見ているこちらは動いてないので寒くて震えそうだった。2番手の◯樹さんがロープを引いて支点にアブミを掛けて登り、3番手の安◯さんが続く。自分はラストでアブミを掛け替えながら登り、ハーケン・シュリンゲを回収するがやや苦労した。核心の滝を越えたので一息つく。この滝で要した時間は75分ほどだった。 12m滝 ![]() 4m+7mの2段滝 ![]() 7m滝 ![]() 10m滝 ![]() なんとナメコ発見! ![]() 大滝手前の小函 ![]() 6m滝と横川大滝 ![]() 遡行を再開すると左岸から滝で枝沢が近接して2本落ち、その後は「まわり滝群」と呼ばれる直登できる滝が続く。苔のついた12m滝を左壁から直登し、4m+7mの2段滝を登り、次の7m滝は微妙なホールドを拾って越える。階段状の10m滝と小滝をいくつか越えると、両岸が狭まり小函となる。突っ張ったり水に入ったりと各人各様に越えると、ゴルジュは突き当たり左から6m滝が落ちる。奥に入って見上げるとやっと大滝が見えた。35mの横川大滝である。 6m滝を登る ![]() やっと滝の全体が見える ![]() 横川大滝上部 ![]() 右壁のガリーを登る ![]() 灌木帯へ逃げる ![]() 横川大滝下部はほぼ垂壁 ![]() まずは6m滝を千◯さんが、右壁のガリーからトップでロープを伸ばす。大滝下でいったんピッチを切り全員が上がる。大滝は下部は立っているが上部の傾斜は寝ていて登れそうに見える。実際右からも左からも登られているようだが、逆層で滑りやすい岩はかなりいやらしそうであり、いずれにしても下部は人工登攀だろう。今回は右にあるガリーを登り、可能ならば途中から右壁に戻って水流脇を登ることにした。○樹さんがリードするが岩が脆くて浮石もあり、思った以上に悪いようだ。落石を起こさないよう細心の注意で登っている様子が伝わってくる。結局右壁に戻ることは困難なようで、そのままガリーを登って灌木帯へと入り、左へトラバースして落ち口に出たようだ。若い2人が続いてスルスルと登るが、ときおりラークの声とともに石が落ちてくる。ラストは自分が支点を回収しながら登ったが、あまり効いてないハーケンや小指程度の灌木の支点しかなく、体重のある自分にはシビれる登攀となった。6m滝と横川大滝の登攀には約2時間を要した。 小滝がいくつかある程度 ![]() 自噴水があった ![]() 源頭部を詰めていく ![]() ヤブこぎ数分で登山道 ![]() 2週連続の後白髪山頂 ![]() 横川登山口に到着 ![]() 大滝を登ればあとは源頭部を詰めるだけである。水が涸れてからも沢筋を追い、最後はヤブこぎを数分しただけで登山道に飛び出た。後白髪山頂までは25分ほどだが、先週と同じくガスで眺めはない。沢装備を解いてひと息つくと、登山道を横川登山口へと下山した。 矢櫃沢は釜伏の滝や横川大滝など、難しいが登れる滝があり遡行しがいのある沢だった。特に今回はメンバーにも恵まれ充実した沢登りとなった。泳ぎが必ずあるので、遡行するのは気温の高い日にしたい。横川大滝を登攀する場合は、それなりの装備と気構えで望みたい。 GPSトラック ( 登り:赤 下り:青 ) ![]()
by torasan-819
| 2016-08-02 07:14
| 沢登り
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Comments(6)
いよいよ 横川あたりになると きちんと組織だっていないと登れない沢だと感じます。
足並みとルートを読む力とが 際立って大事になってくるなあ とも思います。 横川は郡山・仙台時代を通して踏破していない沢でした。 が、これで満足しました(笑)ありがとうございます。
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tabilogue2さん
今回のパーティーは登れる人ばかりでした。自分は別ですが(^^ゞ おっしゃるとおり足並みがそろってないと遡行は覚束ないですね。 でも釜伏の滝や横川大滝は高巻いてもいいじゃないかと思います。それで矢櫃沢が遡行できるのであれば。 以前YMCAのH野さん達は横川大滝の左壁を登ったそうです。 2年前に左壁を登っている記録もあります。あの岩ではかなりいやらしいと思いますね。 我々は左壁は悪いと判断し右壁を選びましたが、そこもそこそこ悪かったです。 いずれにしても同行メンバーにより自分も押し上げ引っ張り上げてもらったという感じです。 こんな沢登りもたまにはいいかな…というかこんな感じが多くなるような予感がします(^0^;) メンバーに感謝でございます。
そうなんですよ。。。
YMCAの連中はは幡野に限らず、腕に覚えのあるヤツは 最初はセカンドで、2回目にはトップ引きで登ってんじゃないかな?( `ー´)ノ ここで落ちて「自信」を無くしたにしても、 別の大滝をクリアしたり、京渕や朝日や丁の沢で だいぶ コナレてるはずです そんなわけで 京渕も完登しておいた方がいいですよ(´艸`) ![]()
ひゃ~
ただただ、驚きです。 |
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