2023年 05月 19日
![]() 山域山名 蔵王連峰 刈田岳(1,757.8m) 前山(1,684m) 山行期間 2023年2月11日(土) 山行形態 山スキー 天候 晴れ時々曇り 参加者 4人(L:トラ山・K地・T尾・О島) 行程 すみかわスキー場9:25リフト利用=ゲレンデトップ9:43~刈田岳11:22~刈田岳避難小屋11:33-12:02井戸沢源頭滑降~前山13:07-13:18東斜面滑降~澄川源頭13:31-13:52~岳樺沢出合13:55~金吹沢渡渉点14:21~雪崩発生救出14:53-15:27~井戸沢渡渉点15:30~雪上車道15:56~すみかわスキー場16:07 行動時間 6時間24分 移動距離 11.0km 累積標高差 +707m -964m 東京のT尾さんとその友人のО島さんが蔵王に来るというので山スキーを計画した。時間の読める無難なところということで、蔵王の刈田岳に登りパラダイスコースで戻る計画とした。スタートが遅いのでリフト利用(4人×3回・12回券1枚でちょうど)とした。ゲレンデトップから中央コースに入ったが、期待した新雪は風で飛ばされたのかあまり積もっていない。南岸低気圧による降雪なので山ではさほどでもなかったようだ。浅いラッセルで歩いていく。剣ヶ峯の尾根はやや風が強かったが問題なし。順調に登り刈田岳山頂に到達した。避難小屋に戻り昼食休憩としたが我々の貸し切りだった。小屋直下から井戸沢源頭の締まったバーンを気持ちよく滑降。エコーラインを南へ回り込んでかつての樹氷原へ向かった。「かつての」と表現したのは樹氷となるオオシラビソの枯死が進み、現在は見る影もない状態だからだ。それでも雪原の景観は素晴らしく、天気があまりにも良くてこのままパラダイスコースで戻るのがもったいなくなった。先週のちば山の会同様、前山まで足を延ばすことにして山行管理者に連絡を入れた。前山の山頂に到着するとボーダーたちが東斜面を滑っていた。我々も続いてドロップしたが、密度の高い重い雪でターンしにくい雪質だった。2月にしてはちょっと期待はずれだ。澄川源頭まで滑り降りたが、T尾さんのソールに雪が付着する現象が発生した。なぜかソールにシールの糊が残り雪が付着するようだ。これでは滑らない。糊を掻き落として固形ワックスを生塗りした。沢を穴に注意して下降すると、岳樺沢出合からはシールで登り返し。金吹沢を渡り緩斜面の途中でシールを剥がし東へ進む。やがて沢地形が見えてきて井戸沢右岸に到着。 井戸沢を渡渉するため右岸を滑り降りるところでアクシデント発生。短いが急な斜面を自分がトップで滑り始めたところ、後ろから「雪崩れっ!」との声が聞こえた。とっさに右手にトラバースで逃げて振り返るとデブリが目に入った。規模は大きくはない(推定幅30m長さ15m)が雪崩である。セカンドはО島さんのはずなので姿を目で捜したが見当たらない。まさかと思い呼びかけるが返答がない。まさか雪崩埋没ではという疑念が確信に変わった。ビーコンを捜索モードに切り替えてサーチすると、10mの距離と矢印で方向が示された。その方向には数本の樹木があり根元にデブリが堆積していた。すると何となく声が聞こえた。おそらくあそこだろうと移動し始めると、今度は間違いなく声が聞こえた。姿は見えないがО島さんのようだ。声のした方へと急ぎ近寄るとデブリの間からわずかに出ている指先が見えた。ビーコンで捜すまでもない。生存可能性が急速に低下する15分内に救出しなければならない。声をかけるとくぐもった声で返事が返ってきたので呼吸はできているようだ。斜面上にいた他の2人に早く降りてきて手伝うように叫んだ。浅く埋まっている頭を出すため手で雪を掘り始めた。指から手首、肘から上腕と雪をかき分けるとヘルメットが見えてきた。顔の周りの雪をかいて呼吸と表情の確認をする。状況を聞くとしっかりした受け答えにひと安心。体を掘り出すためシャベルを取り出す。降りてきたK地さんも加わり2人で雪を掘る。スキーを外すのに手間取る。やっと掘り出して体の異常はないか確認すると大丈夫とのこと。怪我がなくてホッとする。右手にはストックのストラップだけが千切れて残っていた。掘る範囲を広げてストックを見つけた。比較的落ち着いている本人に雪崩が発生した状況を聞く。2番手で滑り始めたところ斜面に入ってすぐ雪崩れたという。スキーカットが雪崩の引き金になったように思われる。声を発してもらわなかったら自分も巻き込まれたかもしれない。もし2人が埋没したらと考えるとゾッとする。先週、遭難救助訓練を行ったばかりであったが、まさか1週間後に実際の現場に遭遇するとは思いもしなかった。訓練以外の本番でのビーコン捜索と埋没者掘り出しは、山スキー14シーズン目にして初めてのことだった。パーティー全員が落ち着くのを待ってから下山を再開する。井戸沢を渡渉して雪上車道に出るとスキー場へと戻った。 リフトで登る ![]() 快晴 ![]() 中央コースを刈田岳へ ![]() 景色も良し ![]() 剣ヶ峯の尾根はやや風強し ![]() 刈田岳山頂 ![]() 井戸沢源頭を滑る ![]() 前山へ向かう ![]() 刈田岳を背に ![]() 前山東斜面を滑る ![]() 澄川源頭へ ![]() 沢床を下降 ![]() 登り返し ![]() 金吹沢を横断 ![]() 雪崩発生 ![]() 埋没状況(頭を掘り出したところ) ![]() 雪崩斜面(目測で幅30m長さ15m) ![]() デブリ状況 ![]() スキー場へ戻る ![]() GPSトラック ![]() < 雪崩事故メモ > 沢を越えれば行程はあと少しという安堵感と、スキー技術については心配いらないメンバーということから、いろんな意味で確認が甘くなり油断があったように思う。 特にО島さんは今回のメンバーの中でもスキー技術は一番で登山経験も豊富であり、どこでも大丈夫だろうという勝手な思い込みと安心感があった。 井戸沢の渡渉は何度となく通過しているが、今回の場所についてはいつもより上流側であり初めて滑り降りる場所だった。 急斜面だったが急な部分自体は短いのですぐ通過できる程度であり、弱層テストするまででもないだろうと思っていた。 回り込めば急な部分は迂回できるのだが、最後に急斜面をひと滑りしようという安易な感覚があった。 2/16に現場を再確認したが、緩斜面から急斜面に斜度変化する肩の部分は小さいながら雪庇になっていることが確認できた。 当日も同じような状況になっていたと思われるので、雪庇をスキーカットすれば雪崩れる可能性はかなり高くなるだろう。 滑降はひとりずつ行い、滑り終えるまでメンバー全員が滑降者から目を離さないのが基本であり、リーダーとしてメンバーにも徹底しなければならなかった。 その場面場面で判断し行動しているが、いずれにしてもその判断は不完全なものであり、そのために安全マージンを取っておくという意識が足りなかった。 斜面を前にして高揚している自分あるいはメンバーをどうコントロールするかが難しい。 何をどう分析して反省したとしても事後の結果論なのだが、再発防止の糧にはしなければならない。 一番必要なのは「慎重さ」であり「臆病さ」なのだと思う。
by torasan-819
| 2023-05-19 17:01
| 山スキー
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