ソロで生きる:本
2016-12-05T00:17:10+09:00
torasan-819
中年オヤジの趣味の記録と思いついたことを書き留めます
Excite Blog
読書「富山県警レスキュー最前線」
http://torasan819.exblog.jp/27135580/
2016-12-04T23:23:00+09:00
2016-12-05T00:17:10+09:00
2016-12-01T23:23:00+09:00
torasan-819
本
山岳レスキューに関しては日本一といわれる富山県警察山岳警備隊だが、その隊員の手記をまとめた本が「富山県警レスキュー最前線」だ。遭難事故について、救助する側の視点で書かれているのだが、彼らがどんな思いで捜索に当たっているのかが読むほどに伝わってきた。昭和40年に発足した富山県警山岳警備隊だが、これまで約5千人を救助してきたという。彼らに助けられた者は多いのだが、その一方、救助や訓練活動中の事故で3人の隊員が殉職しており、そのことについても触れられてる。山岳警備隊員は体力も技術も一級のレベルが求められるので、隊員を志す人は登山をある程度やっていた人達なのだろうと漠然と思っていた。しかし、本書を読むとまったくやっていなかった人もいることが分かりちょっと驚いた。体力には少々自信があった若者も、初めての訓練で打ちのめされ自分の不甲斐なさを思い知ることとなる。しかし、決意と覚悟と厳しい訓練によって、一人前の警備隊員になっていく。読んでいて胸が熱くなった。
自分は山岳遭難防止対策協議会の末席に加わっており、要請があった場合などに救助活動に参加している。守備範囲の蔵王周辺は、それほど遭難の多い山域ではないのだが、それでも年平均にすれば数件程度の遭難事故が発生する。今年10月にはキノコ採りの方が遭難したとのことで、要請があり出動した。現地はロープで下降するような急斜面で、捜索2日目に発見することができたが残念な結果となってしまった。一緒に現場に入っていた宮城県警機動隊や消防レスキュー隊の隊員は20代で若い。息子のような年齢だが、現場での彼らは頼もしくプロ意識にあふれている。遭難者を発見したのは我々ロートルの民間救助隊だったが、その後の処理はもちろん彼らが主体となる。ヘリでピックアップするまで手伝い、遭難者を見送った。山で事故は起こしたくない、起こせないなとつくづく思う。しかし、山に限らず人間が活動している限り事故は必ず起きる。大切なのは、その発生を出来うる限り減らす工夫をすることだろう。
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会報725 No.46
http://torasan819.exblog.jp/24778255/
2015-12-18T00:58:00+09:00
2015-12-18T02:19:09+09:00
2015-12-18T00:58:11+09:00
torasan-819
本
会報がやっと出来た。毎回のことだが校正作業に時間がかかった。始めは意気込んで作業を開始するのだが、残念ながらその勢いは続かない。作業がズルズルと後延ばしになったというわけだ。言い訳になるが、小さな山岳会にとって毎年の発行を継続するのは結構大変なことなのだ。それでも何とか年が変わる前に発行できたのは喜ばしい。会報No.46は184ページになった。2014年の山行の中から、山スキー41、雪山5、沢登り17、無雪期登山36の、計99編の記録が収められている。山スキーが多いが、その中には雪洞縦走での合宿なども含まれている。
福島登高会は華々しい山行とは無縁の山岳会だが、地元の山を中心に地道に活動を続け、その記録を丹念につけている。ネットでも記録を公開しており、会のHPでは40年前の記録を見ることも出来る。会長の編集後記には「記録はホームページや会報により、多くの登山者に還元される。それが登山界の発展に寄与し、次世代へと引き継がれ、会の発展にも結びついてゆく。」とある。そのような考えのもと、これからも会報を発行し続けたいと思うのである。
※会報の「725」という名称は、ホエーブス社のストーブの中でも小型なモデルの「725」からいただいている。かつて登山用ストーブと言えば、ホエーブスというほどの定番ストーブであった。
《 以前の会報 》 No.45 No.44
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読書「極限への挑戦者」
http://torasan819.exblog.jp/24756026/
2015-12-10T22:28:00+09:00
2015-12-12T07:24:35+09:00
2015-12-10T22:27:55+09:00
torasan-819
本
ラインホルト・メスナーは、言わずと知れたというかなんというか、私などがどうこう論評などできようもないほど、遙かな高みにおられる(ように思える)方です。今年の冬から春にかけて読んだのだが、なんというか圧倒される思いがした。読了後に感想を書こうと思ったのだが、どうにも言葉が出てこない。いや、月並みな言葉はいくらでも出せるのだが、いざ書こうとするとまったく筆が進まない。結局そのままズルズルと現在に至る。そんな訳でもう書くのは止めた。読みたい方は是非読んでください。メスナーを特別に神格化したり、あがめ奉るつもりは無いが、少なくとも自分などはとうてい到達し得ない世界に身を置いた方なので、襟を正して読ませてもらいました。
ラインホルト・メスナー 生年月日:1944年9月17日
「ラインホルト・メスナーは、イタリア・南チロル出身の登山家、冒険家、作家、映画製作者。1986年に人類史上初の8000メートル峰全14座完全登頂を成し遂げたことで知られる。」 ※Wikiより引用
そういえば以前、メスナーの「ヒマラヤ運命の山」という映画も見ました。]]>
読書「それでも わたしは山に登る」
http://torasan819.exblog.jp/23689584/
2015-02-19T20:09:58+09:00
2015-02-19T20:10:17+09:00
2015-02-18T21:32:25+09:00
torasan-819
本
田部井淳子さんの著作をまともに読むのは、実はこの本が初めてとなる。雑誌のエッセイを読んだり、テレビで話しているのを聞いたことはあるが、記憶にある限りでは著作を読んだことはない。だから田部井さんについての理解も、福島県出身で世界初の女性エベレスト登頂者ということくらいであり、テレビでの印象から気さくなおばちゃん登山家という程度の認識でしかなかった。そういえば、宮城県山岳連盟の記念行事で南蔵王の縦走があったとき、不忘山頂で一度だけ顔を見たことはあったかな。いずれにしてもその程度なのだ。
「それでも わたしは山に登る」は一昨年発刊された本で、図書館で見かけて何のきなしに借りてきた。思ったよりもというと大変失礼になるが、正直なところ読んで良かったと思えた本だった。まず文体が軽妙で気負いが無く、とても読みやすい。野山の花を語るような調子で、エベレストやアンナプルナのことを語る。極めて普通の日常的なことも、極限の環境での出来事も、田部井さんにとってはあたかも同じレベルのことのように思えてしまう。きっとこの方の人柄から来るのだろう。ごく普通でいながら静かにして熱い思いがあり、何より辛抱強く根気強くて忍耐強い。そんなところに、田部井さんの出自である東北の地域性を見てしまうのだが考えすぎだろうか。
本書では海外登山から地元のちょっとした山までの、幅広いエッセイ集となっている。前半では主に海外登山隊での出来事で、華々しい成果の陰に隠れてしまうような、ともすれば隠しておきたくなるような極めて人間臭いイザコザや悶着もエピソードとして書かれている。結局は収まるべきところに収めていくのだが、ぶち壊しにせず隊をまとめていく様子には感心してしまう。後半は東日本大震災での支援、そしてガンが見つかって余命3ヶ月と言われてからのことが描かれている。手術し抗ガン剤での治療をしながら、被災地支援のイベントや取材などに病院から直行することもありながら、淡々とその時自分に出来ることを重ねていく様は、読んでいてあっけにとられてしまう。あまりにもの淡々さに、自分は熱いものがこみ上げてきた。田部井さんはまさに「それでもわたしは山に登る」なのだ。単にポジティブという範囲を超えた、なんというのか今を受け入れつつも前に進むと言ったらいいのか。
田部井さんは人間的な魅力ある方であり、柔軟な思考の持ち主なのだろう。でなければ周囲の協力を取り付け、女子隊をまとめ率い、数々の海外高所登山を成功できはしまい。また、知名度があるとはいえ、被災地支援の輪にこれほど多くの協力者が現れることも無かっただろうと思う。周りを巻き込む力があるのだ。田部井さんは登山だけでなく、人生を軽やかに歩いていく人なんだなあとつくづく思う。とらわれることなく自由である。いやいや彼女だって人間であり、とらわれ縛られることもあるだろう。それでもまるで稜線を吹き渡る風のようだ。でも一番ぴったりな表現は「おばちゃん登山家」。いつまでもそうあって欲しいと思う。
=巻末の文章から=
力尽きるまで自分のペースで楽しく突き進む。
これが私のやり方だ。
生きていることはやっぱり楽しい。
歩くことが生きることだ。
目の前にある今を精一杯過ごすことが、わたしの歴史になってゆくのだと思う。
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読書「山小屋からの贈りもの」
http://torasan819.exblog.jp/23238438/
2014-11-08T08:24:00+09:00
2014-11-08T12:02:24+09:00
2014-11-06T08:01:20+09:00
torasan-819
本
高桑信一氏は沢屋にして渓流釣師、カメラマンにして渓流ガイド、山村文化にも造詣が深いフリーライターだ。本書は飯豊連峰の避難小屋のひとつである門内小屋で、2012年の7月に小屋番をしたときのことを綴ったものである。自分にも馴染みのある門内小屋だが、あいにく泊まったことはない。縦走か山スキーの時に一時利用させていただいただけである。飯豊連峰の各避難小屋は夏山や紅葉シーズンに管理人が入る。その管理人は地元山岳会などのメンバーが務めるらしいのだが、ひょんなことから高桑氏が小屋番を経験することになった。山小屋それも避難小屋ということで、営業小屋ともまた違う「日常」がある。そんな日々を軽妙と言うか、時折下世話な話題も織り交ぜながらありのままに描いている。そんな文章は好き嫌いが分かれるような気もするが、自分としては十分面白いと思えた。小屋のことや縦走路を行き交う登山者、訪れる仲間との交流など、その風景が自分のことのように脳裏に映像となって浮かんでくるのである。遅読の自分としては珍しく数日で読み終えることができた。山にどっぷり浸かっている人、どっぷり浸かりたい人に読んでもらいたい一冊。
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読書「究極のサバイバルテクニック」
http://torasan819.exblog.jp/23210267/
2014-10-31T22:18:00+09:00
2014-11-02T01:35:28+09:00
2014-10-31T22:18:15+09:00
torasan-819
本
10月下旬から11月中は外せない行事が重なり、なかなか山にも行けずにモンモンとしています。
気晴らしに読書ということで、7月から読み始めてまだ半分ほどだった書籍を読み進めます。
「究極のサバイバルテクニック」などという、B級ハウツー本にありがちな題名。
岳人に広告があったので、そう酷い内容ではないだろうと何とはなしに注文してしまった。
著者のベア・グリス氏はSAS(英国陸軍特殊部隊)にも在籍していたことがあるという、冒険家にして作家なのだという。
また、ディスカバリーチャンネルでは人気の出演者なのだともいう。
SAS出身というのが門外漢には何やら凄そうに思えてしまう。
しかし、世の中○○出身ということは当てにならないということも、経験上知っている。
そんな訳で期待半分冷やかし半分で読んでみた。
様々な状況におけるサバイバルテクニックが紹介されている。
この著者は本当にこんな様々な環境に遭遇したのかとも思うが、SASのサバイバル訓練ではそれが普通らしい。
著者はSASでサバイバルの基本から、夏山・氷点下・ジャングル・砂漠・海など、それぞれの状況で遭遇する危機に応じたテクニックの多くを身につけたようだ。
テクニックの大半は目新しいものではなく他のサバイバルハウツー本にもあるものだが、各所に著者独自の考えやコメントが載っていて面白い。
本書の中の「サバイバルの心理学」では著者の考え方が表れていて興味深い。
いわく、驚異的なサバイバル物語は「人間の気力」から生み出されている。
いわく、知識と気力のどちらかを選べといわれれば気力を選ぶ。
いわく、サバイバルできると確信することがサバイバルの最大の強み。
いわく、科学ではなく信仰が必要になるかもしれない。
なんだ最終的には気力かと思ってしまうが、やはりそうなのかもしれない。
極限状態での生と死を分けるものは。
いずれにしても自分は経験したくはないのだが、少々山をやっている自分にとって「覚悟」は必要なのだと思う。
著者は「世界は美しく広大で、力強く多様性に満ちている。それらを理解し守り楽しむ責任がある。」という。
すなわちそれが「冒険」であり、その冒険を行うがために必要なツールがサバイバルテクニックなのだ。
そういう意味では単なるハウツー本ではなく、啓蒙の書のような感さえする書籍であった。
とここまで感想を書いたが、あまり構えないでハウツー本として読むのが気楽なのかな(笑)
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読書「クライマー魂」
http://torasan819.exblog.jp/22257561/
2014-06-09T22:18:00+09:00
2014-06-14T00:36:21+09:00
2014-06-09T22:18:44+09:00
torasan-819
本
「クライマー魂」という何ともストレートな題名に引かれた。著者は木本哲さんという方なのだが、読んで初めてこの方がクライミングの世界では凄い方であり、日本の登山界を代表するひとりなのだとわかった次第。自分はあまりトップクライマーが誰それとかいうことには疎いのだ。450ページにもなる分厚い本には、木本氏が山の世界に入り、数々の経験を経て成長していく過程が描かれている。山を始めてがむしゃらに登っていた氏が、山から学び仲間から学び、葛藤しながら成長していく。氏は「山は常に学びの場である」と書いている。それは裏山でも8000mの高峰であってもだ。また「困難を克服していく行為そのものが持つ愉しみ」とも書いている。本木氏がずっと求め続けてきたものは、冒険であり未知のものに挑戦することにより得られる強烈な「生」の実感なのかもしれない。これから真摯に山に、特にクライミングに取り組んでみようという人には好書だろう。
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会報725 No.45
http://torasan819.exblog.jp/22256660/
2014-06-09T20:40:00+09:00
2014-06-11T20:31:17+09:00
2014-06-09T20:40:43+09:00
torasan-819
本
福島登高会の2013年の活動記録として、会報725のNo.45が先月発刊された。
出来上がった会報を手に取ってみると、厚みがありずしりと重い。
ネット全盛時代ではあるが、活字の重みというものは紙の本になってより増すように思う。
全192ページで、山スキー29、雪山3、沢登り11、無雪期登山57の、計100編の記録が収められている。
沢登りと山スキーが主体の山岳会だが近年は沢登りが減少傾向であり、会報の掲載記録数からもその傾向が読み取れる。
会員の山行は福島県内が大半で、その他は宮城山形など近県が多いのだが、小さな山も丁寧に登って記録しているのは地元の山岳会ならではだろう。
発刊時点で15名の小さな本当に小さな山岳会ではあるが、今なお週1回の集会を続けているという現代では希少種とも言うべき山岳会である。
冬山合宿、春山合宿、沢登り合宿と年3回の合宿を行っているが、小規模の山岳会としては珍しい部類だろう。
しかし、沢登り教室を毎年開催して沢登り人口の拡大に努め、震災後継続して福島県の山岳放射線量調査に取り組んでいるなど、小さいながらも特色のある山岳会でもある。
巻頭言には、「40年前、私たちが福島登高会を結成した時のように、理想を掲げ意気盛んに目標とする山岳会を作ろうとする人たちが現れる時代が来ることを願っています。」とある。
福島登高会が結成されたのは1975年8月。時代は移ろい大きく変化し、結成当時の熱き青年達も老いた。しかし、その意気は変わらず山を見つめ続けている。
将来、地域の山を四季を通じて登ってみたいと思う者が現れたとき、この会報がその一助となることを願って止まない。
※会報の「725」という名称は、ホエーブス社のストーブの中でも小型なモデル725よりいただいている。
かつて登山用ストーブと言えば、ホエーブスというほどの定番ストーブであった。
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読書 「ヤマケイ入門&ガイド バックカントリー スキー&スノーボード」
http://torasan819.exblog.jp/21455745/
2014-02-21T00:24:00+09:00
2014-02-21T00:27:12+09:00
2014-02-21T00:23:42+09:00
torasan-819
本
山と渓谷社の技術書とガイドブックが一体化した入門&ガイドシリーズの第4弾で、昨年11月に2,079円で購入した。
少しずつ読んでいたが、バックカントリーにおけるスキー&スノーボードの技術と知識をギュッとまとめた好書である。
63項目におよぶ技術解説は1項目が見開き2ページで、図解も豊富に使って上手くまとめられている。
また、ルートガイドも50エリアを収録してあり、まだ行ったことのないエリアをあれこれ想像してみるのも楽しい。
「入門&ガイド」というだけあって内容的には初~中級レベルなのだろうが、ベテランであっても初心に立ち返り読んでみる価値は大いにある。
技術解説編の最後の項目は「今、実践あるのみ」となっている。
本書をしっかり読み込んだなら、あとは実際のバックカントリーで実践すべしということなのだ。
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会報725 No.44
http://torasan819.exblog.jp/21040246/
2013-12-07T09:57:00+09:00
2013-12-07T11:13:24+09:00
2013-12-07T09:58:25+09:00
torasan-819
本
福島登高会の会報725のNo.44が発刊された。
2012年の山行記録集なので9月頃には発刊と考えていたものが、校正作業などに時間がかかり12月となってしまった。
全156ページで、山スキー20、雪山2、沢登り14、無雪期登山43の、計79編の記録が収められている。
会員の2012年の全山行回数は138回なので、半分以上の山行が記録として残されたことになる。
たった14人の山岳会であり、諸事情からなかなか山に行けないメンバーも多いが、山岳会として会報が発刊できたのは喜びである。
なお巻末には、会として継続して取り組んでいる、福島県の山岳放射線量調査結果を添付している。
自分の山行記録も多数載っているが、そのすべてはこのブログに掲載したものである。
校正作業で読み返し、紙の上の活字になってまた読み返すと、まざまざとその時の状況が思い起こされる。
反芻することにより、自分の中でそれぞれの山行がより深化し、またあらたな命を与えられたような気がする。
編集後記には、「登山は計画から始まり、実行し記録として整理することによって完結する」とある。
いろいろ考えはあるだろうが、我々はそんな考え方で山に登っているのだ。
※会報の「725」という名称は、ホエーブス社のストーブの中でも小型なモデル725よりいただいている。
かつて登山用ストーブと言えば、ホエーブスというほどの定番ストーブであった。
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読書 「聖職の碑」
http://torasan819.exblog.jp/21009636/
2013-12-03T01:49:00+09:00
2013-12-05T21:56:42+09:00
2013-12-03T01:49:27+09:00
torasan-819
本
聖職と言えば高僧などの他に、教師という職業を指すこともある。どちらかというと自分は、教師という感覚が強い。若い人にはピンと来ないであろうこの言葉は、現代では死語になっている感じはするが、自分のような世代にとってはまだ十分にイメージできる。この本の題名は「聖職の碑」』(せいしょくのいしぶみ)という。数年前に文庫本で購入したが、その分厚さから読むのを先延ばしにしていた。これではいかんと、やっと重い腰を上げて読み始めた次第。作者は山を舞台とした小説を多く書いている新田次郎。この聖職の碑は、木曽駒ヶ岳(標高2,956m)で発生した遭難事件を題材とし、書き下ろし長編小説として1976年(昭和51年)に発刊された。
その遭難事件は1913年(大正2年)8月26日というから、今からちょうど100年前に発生した。当時の長野県中箕輪高等小学校では、修学旅行として木曽駒ヶ岳の登山を行っていた。一行は生徒25名、地元の青年会員9名、引率教師3名(校長他2名)の総勢37名。山頂にある伊那小屋で1泊して下山する計画だった。出発時には想定し得なかった天候の急変により、稜線まで登る頃には風雨が激しくなっていた。夏とはいえ3000m近い高山ゆえ、濡れた体に当たる風で体温はどんどん下がる。やっとたどり着いた伊那小屋だが、小屋は無惨なことに半壊状態でとても泊まれるような状況ではなかった。周辺のハイマツや持参したゴザで応急的に修復したが、とうてい暴風雨となり叩きつける雨を防げるものではなかった。火を熾すこともかなわず、震える寒さの中、眠らないよう声をかけ励ましていた。しかし、ついにひとりの少年が疲労凍死したことをきっかけとして、集団としての統率は崩壊した。外に飛び出し下山しようとする者が発生し、小屋の屋根代わりのゴザをはぎ取った。もはや小屋は風をしのげる場所ではも無くなったのだ。激しい風に翻弄され、ある者はかろうじて樹林帯に逃げ込み、ある者は打ち倒され稜線で骸となった。結果として、生徒9名、青年会員1名と校長がの11名が命を失う大惨事となった。翌年駒ヶ岳の稜線には、この遭難事故の記念碑が建てられた。
以上が事件のあらましだが、著者は木曽駒ヶ岳を望める地に生まれたがゆえ、この遭難事件があったということは知っていたようだ。そして、いつか小説にしたいと思っていたようである。小説にするにあたり、著者は自ら駒ヶ岳に登り地域風土を丹念に取材し、当時まだ生存していたその当時の少年にも聞き取りしている。そのあたりのことは、巻末に長文の「取材記・筆を執るまで」が付されており、そこに詳しく書かれている。著者のこの遭難事件に対する思い入れが、いかに深かったかの表れでもあろう。また、なぜ遭難「慰霊碑」ではなく遭難「記念」碑なのかについても、その経緯が記されている。この小説を読み進むほどに、描写のひとつひとつが自分の中で鮮明なイメージとなり、あたかもその場に自分が居合わせているかのような臨場感を感じることとなった。ある時は引率した赤羽校長になり、ある時は稜線で彷徨う生徒になり、彼らの視点で疑似体験をしていった。著者の山や自然への深い造詣からくる描写力とともに、自分も山の実体験があるからであろう。
当時の信濃教育界の教師の中には、実践主義教育と理想主義教育という教育方針の対立があったという。それは遭難の直接の原因ではないが、駒ヶ岳登山を遂行するきっかけとなっていた。しかし、極限の中で生徒の命を救おうとする時に、何々主義などという垣根はなく、我が身を投げ捨てて生徒の命を守ろうとする教師の姿があった。題名が聖職の碑とされた所以である。小説の中の教師達は、理想に燃え使命感にあふれている。教師がまずもって尊敬すべき存在であり、生徒達は教師を敬愛し、教師もまた生徒達を慈しみ育んでいる。自分にとっては懐かしく、古き良き時代のことのように思える。現代ほど「聖職」というものの存在が難しい時代は、かつて無かったのではないだろうか。友人知人に教師は多いが、彼ら自身はどう考えているのだろうか。なお、この遭難事件の後も、駒ヶ岳への学校登山は途絶えることなく続けられているという。遭難事件はあったが、そのことに真摯に向き合い反省検証し、人間形成の場としての価値を認めたがゆえのことだろう。
なお、この小説は1978年(昭和53年)には映画化された。その前年に大ヒットした映画『八甲田山』と同じく森谷司郎監督と、あの「点の記」の木村大作カメラマンのコンビである。ところが、興行的にはあまり良くなかったようで、自分は当時そんな映画があったということさえ知らなかった。しかし、DVDが出ているので、近いうちに是非見てみようと思う。そしていつか、木曽駒ヶ岳に登ってみたいものだ。
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読書 「ヤマケイ入門&ガイド 沢登り」
http://torasan819.exblog.jp/20499230/
2013-10-02T19:00:00+09:00
2014-02-21T00:19:17+09:00
2013-10-02T16:08:59+09:00
torasan-819
本
沢登り関係の出版物はそう多くないが、この本は今年4月の発刊で、その手の本の中では最新刊となる。
著者の手嶋氏は「童人トマの風」の代表だが、トマの風は言わずと知れた沢登りを主体とする山岳会だ。
自分にとっては憧れの山岳会で、記録を参考にさせてもらったりもしている(自分でも行けそうな沢だけだが)。
本書は沢登りの技術解説に加え、ルートガイドもなんと57本を収録しているので、技術解説部分にはそれほどページを当てられないだろうと思った。
しかし、コンパクトでありながら内容はギュッと核心を掴んだ解説で充実している。
さすがに沢登りの第一線で、数々の経験を積み技術を培ってきたトマの風であり手嶋氏と感じた。
そのうえ、文章から手嶋氏の沢登りに対する考えというか思想も伝わってくる。
沢登りの本ではあるが、久々に山を自然を愛する人間の、想いのこもった本を読んだという感じがした。
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読書 「死者は還らず―山岳遭難の現実」
http://torasan819.exblog.jp/19228586/
2013-04-17T01:58:00+09:00
2013-04-17T07:10:37+09:00
2013-04-17T00:53:40+09:00
torasan-819
本
本書は先日読んだ 「ドキュメント生還」とは異なり、最悪の結末を迎えた9件の遭難レポートである。
著者である丸山直樹氏は自身が山ヤであり、山ヤとしての思いが全編を貫いているように感じた。
丸山氏はこのレポートの執筆に当たって、次の3点を念頭に置いたという。
「遭難を知らない登山者に、遭難の実態を知ってもらいたい」
「実態を知ったうえで、自分が行っている山登りを真剣に、自分自身の頭で考えてもらいたい」
「実態を知らない登山者に、上っ面の対処法など説いたところで意味はない」
よくある遭難レポートは、事実を詳細に記し(各方面への配慮からかなりぼかす場合も多いが)、原因と対処法を分析している。
しかし著者は、そんな記事は何の役にも立たないとまで言い切る。
だから本書では、事故状況、背景や遠因、人間の心理状態、時間の経過など、より実態に近い、遭難の様々な側面を描いたという。
それは著者自身が山ヤとして、死ななくて済んだはずの遭難に対して、なぜなんだとの悔しい思いを抱いているからだろう。
あとがきには「本書のねらいは、登山者に警鐘を鳴らすのではなく、ましてや対処や予防を訴えるのではなく、唯一、「遭難を真剣に考えてもらいたかった」、それのみである。」とある。
「自分の頭で考える」とは至極当たり前のことのようだが、はたして我々は自分の山行に対してどのくらい考えているかというと、はなはだ疑問である。
ともすれば楽しい部分、意欲的な内容などに頭が行き、リスクの分析と評価を十分しているかというと怪しいものである。
それでもほとんどの山行は事故が起きないのだが、ちょっと何かが噛み合わないと、自分の頭で考えていない山行はまたたく間に遭難へと近づいていくのではないだろうか。
本書の9編のうちの1編が、1994年の吾妻連峰山スキー事故のことであった。
7人パーティーのうち5人が亡くなるという悲惨な遭難であったが、なじみ深い山域でのことでもあり、以前から非常に関心があり記録等を読んでいたのだ。
本書では遭難パーティーのリーダーと、そのメンバー達、そしてリーダーの娘さんのことが記されており、このパーティーがどのようにして成り立っていたのかがわかる。
これまで自分も「なぜ遭難に至ったのだ?」という思いだったのだが、歯車が狂った時のこのパーティーの脆さを理解することができた。
1998年初版と新しい本ではないが、山に向き合う者としては一読する価値があると思う。
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読書 「ドキュメント生還-山岳遭難からの救出」
http://torasan819.exblog.jp/19172623/
2013-04-07T22:22:00+09:00
2013-04-08T18:52:36+09:00
2013-04-07T22:22:25+09:00
torasan-819
本
「ドキュメント生還-山岳遭難からの救出」は、以前山と渓谷社から刊行されたもので、文庫化にともない新たに1編が加えられ、8編の遭難記録が掲載されている。
遭難の状況は様々だが、題名のとおりどのケースも最後には生還している。
著者はその生還した本人へのインタビューを基本にし、当時の状況を細かく再現している。
遭難とは極限の状況であり、平常時とは違った考えや行動、判断をしてしまうこともあるだろう。
そのような状況下で、どのような心理状態になるかなど、教訓として学ぶ点は多い。
誰しも自分だけは遭難しないと思いたいし、遭難しないだろうと漠然と思っている。
しかし、現実はある日突然やってくる、自分だけが例外ということはないのだ。
本書に掲載されている8件の人達もそうだったように。
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日本登山大系
http://torasan819.exblog.jp/18729412/
2013-03-07T21:18:00+09:00
2013-03-11T18:58:19+09:00
2013-03-07T21:18:46+09:00
torasan-819
本
日本登山大系は全10巻で初板は1980~1982年あたりに発刊されているらしい。
登山大系とはいっても、普通の登山道によるルートなどはほとんど載っていない。
沢と岩のバリエーションばかりが載っていて、好きな人間からしたら垂涎ものの書籍なのだ。
発刊からだいぶ時間が経過して、執筆当時とは様相の変わった山域もあるだろうが、未だにこの本を超えるものはないのではないだろうか。
とはいえ自分も以前に書いたが、記載されているルートやコースタイムを鵜呑みにはできない。
参考資料として活用しつつ、最新の情報をできるだけ集める努力が必要だろう。
これまでは必要な時に地元の図書館(全館揃っている)から借りてきて利用していた。
自分以外に借りる人はあまりいないようで、いつでも大体全巻書架にあった。
でもいつまでも借りてばかりではということで、最近2巻だけだが古書を手に入れることができた。
古本でも普通に4~5千円以上で売られているので、オークションで気長にタイミングを見ていたところ、運良く2000円と1200円で手に入れることができた。
まあまあ安く購入できた部類だろう。
この本は時間のある時に眺めているだけでも空想登山ができて面白い。
徐々に他の巻も揃えていきたいものだ。
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